地球の人工日傘

2024年4月28日の朝日新聞朝刊に,「微粒子を空に、温暖化防ぐ?」のメインタイトルで以下の記事が掲載されていた.

    地球を人工的に冷却する地球工学的手法について15年位まえに話題になったことがあったその取り組みでは海塩粒子を用いて人工雲を発生させ(クラウドシーディング)によってより多くの太陽光を反射させ太陽光の吸収量を人工的に削減して地球の気温を下げようとするものであった.しかし.実行されたという話聞くことはなかった.

    そのような状況下,いきなり米国でビジネスとして話題になっているというから,驚きである.

微粒子を空に、温暖化防ぐ? 

人工の「日傘」ビジネス、米企業に批判 生態系へのリスク、未知数


 米スタートアップ企業が進める地球温暖化対策の事業が、波紋を広げている。実験段階レベルの技術だが、すでに成果をあてこんだ「冷却クレジット」も販売。企業側は意義を強調するものの、国内外で批判を呼んでいる。

 この企業は、「メイクサンセッツ」社。同社が進める事業では、気球を使って上空に微粒子をまき、太陽子を跳ね返すことで,気温上昇を緩和できるとしている.「太陽ホウ砂改変(SRM)」などと呼ばれている.

 自然界では,火山が大規模噴火を起こした後噴火で生じた硫酸などのエアロゾルが成層圏に達し地球の気温を下げた事例がある.日傘効果として知られるエスアールエムはこれを人工的に再現することを念頭に基礎的な研究が欧米で進む.温室効果ガスが減らない中.対症療法としての期待の一方生態系への影響やオゾン層破壊等のリスクは未知数の部分が多い.

 4月,取材に応じた最高経営責任者(CEO)のルーク・アイ氏は「地球の気温を下げ毎年何千人もの命を救い,多くの種の絶滅を防ぐことができる.本当のリスクは何もしないことだ.被害を未然に防ぐべきだ!」と自身の考えを強調した.

 同社はすでに大気中に二酸化硫黄(SO2)を散布する事業を実施.温暖化の抑制に貢献できるとして「冷却クレジット」の販売も始めていると言う.

 同社のサイトの説明によると,1クレジットは10ドルで同社は1グラム以上の人工の雲を成層圏に放出するために使う.1トンの二酸化炭素(CO2)の温暖化効果を1年間相殺するとう.アイゼンマン氏によると2万5000クレジット以上が売れたと言う.

2024年4月28日の朝日新聞朝刊の記事と図

この提案自体は,技術的に可能で,効果がありそうだと思われていたが,イギリス気象庁(MET)は地球の生態系にダメージを与える連鎖反応を起こすおそれのあることを明らかにしていた.

     具体的には,最新のコンピューターモデルを用いた考察から,クラウドシーディングは地球温暖化の速度を25年分遅らせる可能性があり,特に南米では,最も効率的に気温の上昇が抑えられる可能性があることが分かった.一方,アフリカ南部沖でのシーディングによっては,アマゾン熱帯雨林地域の降水量が30%減少して森林が枯死し,大量のCO2が大気中に放出されるおそれがあることも明らかになった.

    今回の地球温暖化防止をビジネスチャンスと捉えるやり方に.各国の学者が懸念を示し,科学的な原理や効果が十分に明らかになっていない段階で実行に移すのは無責任だとして規制強化を訴ええているという.

AI による「クラウドシーディング」の概要

雲は、太陽の熱によって海などの水が蒸発した水蒸気が、上空で冷えて小さい水滴となって集まったものです。雲の芯となるのは、地面から巻き上がった砂の粒やスス、蒸発した海水の塩などです。この芯が核となり、水滴が集まり雲になっていきます。

凝結核とは、水蒸気が凝結するときに芯になる液体または固体粒子で、エートケン核(直径が0.2μm以下)、大核(0,2~1.0μm)、巨大核(1μm以上)に分けられます。雲核には大核以上の吸湿性粒子がなります。凝結核には、細かな土埃(鉱物の粒子)、火山灰、森林火災や工場からの煤煙、海塩粒子などがあります。

海塩粒子(海水のしぶきが乾燥してできた塩粒)を用いて人工雲を発生させる手法をクラウドシーディングといいます。クラウドシーディングでは、ヘリコプターなどで雨雲の下に塩の微粒子を散布し、上昇気流に乗せて雨雲に吸い込ませます。塩を核として水の粒(雲粒)を成長させ、雲の反射を増加させることで、地球温暖化の速度を25年分遅らせる可能性があると言われています。