イネコムギ

2021年10月,イネとコムギの交雑植物の作出に成功したというニユースが話題になった.当時のプレスリリースには以下の記載がある.


「東京都立大学大学院理学研究科のTety Maryenti(大学院生)、岡本龍史教授、および鳥取大学乾燥地研究センターの石井孝佳講師は、コムギ-イネ間の交雑不全を乗り越え、世界で初めてコムギとイネの交雑植物の作出に成功しました。 」

それから3年が経ち,そろそろその後の評価を含めた結果が出たのではないかと科学ニュースサイト(Science Portalを検索すると,最近投稿された動画ニュースがアップされていた.

動画の概要

コムギとイネは世界の主要作物ですあるが,異なる亜科に属していることから交雑することができず,そ れらが持つ優良遺伝資源を相互に利用することは出来なかった. 

東京都立大学の岡本龍史らは,主に 動物細胞に用いられる顕微授精技術を用いて世界で初めて稲と小麦の雑種植物を作出することに成功した.

    稲はアジア地域で,一方,小麦はより寒い地域で盛んに栽培されている.同じイネ科とは言え,違いは大きく掛け合わせが成功した例はこれまで存在しない.この不可能を可能にするため岡本氏は稲と小麦の顕微授精を試みた 

 稲や小麦から卵細胞,精細胞を取り出し,顕微鏡で観察しながら融合させ受精卵を作った この方法では核が小麦その周りの組織が稲という細胞を作ることができる.しかしそれでは細胞内の器官がうまく機能できないため育たない.

   そこで岡本氏らが試したのがさらにもう1つの小麦卵細胞との融合である.この3つの細胞が融合した新たな細胞は小麦の核と細胞質に加えて稲のミトコンドリアを持っている その結果,発生が止まることなく分裂,成長する.

世界で初めてのイネコムギの誕生である.本法がトウモロコシ等の植物にも適用できるか検討中.

鳥取砂丘の間近にある鳥取大学乾燥地研究センターで,石井孝佳講師らによって,イネコムギの栽培実験が行われている.

    上記の動画は,研究室のプロパガンダ的な要素が強いが,育ったイネコムギの画像が掲載されているので,引用させてもらった.

   姿形は小麦にそっくりとのことである.稲に由来するミトコンドリアは植物の環境に対するセンサーとして働くため,温度や湿度,乾燥に対する強さなどに小麦との違いがあるかもしれないとのことである.イネコムギの成分分析や味覚などの評価はもっと先になるようだ.