カンナビノイド


HHCH,THCH,THC,立体構造

カンナビノイド(Cannabinoid)とは,大麻草に含まれる化学物質の総称である.最近話題になっているHHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)は,THCHを水素化させたカンナビノイドである.THCHと似た分子構造をしており,大麻に似た作用がある可能性が指摘されている.HHCHは現在の法律では規制されていないため,グミやリキッドなどに入れられ,ネットや店舗などで販売され,それを食べた後に,嘔吐,めまい等の症状があらわれ,救急搬送された事例が発生しているという.

HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)

THCH(規制対象)

THCHを水素化したものがHHCHであるので,前駆体であるTHCHと分子構造は酷似しているのは言うまでもない(後述).

大麻の成分について

カンナビノイドは,テトラヒドロカンナビノール(tetrahydrocannabinol; 略: THC, Δ9-THC)、CBD(カンナビジオール),カンナビノール(CBN)など,60種類を超える成分が知られている.そのうち特にTHC、CBD.CBNは三大主成分として知られている.

    THCカンナビノイドの一種で,多幸感を覚えるなどの作用がある向精神薬である大麻樹脂に数パーセント含まれ.カンナビジオール (CBD) と共に大麻(マリファナ)の主な有効成分である.カンナビノイド受容体に結合することで薬理作用を発揮する.

THCは大麻ではTHCA(THCのカルボン酸体)として存在し,収穫後に熱や光によって徐々にCO2が脱離してTHCへと変化する(脱炭酸).乾燥大麻の中では,THCとTHCAが共存しており,それらの総計(THC+THCA)で大麻のTHC含有率を表す,

カンナビノイドの化学的性質 (厚生労働省HPより転載)

カンナビノイドの生合成ルート

CBDを37℃の人工胃液中(pH1.2)において攪拌したところ,2時間後にはCBDはほぼ消失.主にΔ9 -THC,Δ8 -THC及びその他の化合物が生成したとの報告があるが,ヒトの経口投与(600mg)においてはTHCおよびその代謝物は生体試料中に確認されていない.本件に関しては再検討が必要である.

大麻の成分と異なる点(HHCHとTHCにおける構造の相違点)

人工的に手を加えているで,天然の大麻成分ではないということになり規制の対象にならないかもしれないが,立体構造は酷似している.次図はAvogadro2の力場計算構造である.

HHCH

HHCH(シクロヘキサン環上Me基異性体)

THCH

THC

THCA異性体の単結晶X線解析構造

カルボン酸がフェノール水酸基のパラ位に付いた異性体

THCAのX線解析構造(CCDC)

Database Identifier THCANB

Deposition Number(s): 1270406

Space Group: P 21 21 21 (19)

Cell: a 16.514(2)Å b 14.324(2)Å c 8.744(1)Å, α 90° β 90° γ 90°

Compound Name: Δ9-Tetrahydrocannabinolic acid B

大麻のカンナビノイドは,生体内でド受容体に結合することで薬理作用を発揮する.その際,水素結合,π‐π,静電荷,ファンデルワールス力等の分子間相互作用が働くわけであるが,カンナビノイド系の化合物間においては,大きな差異は認められない.鍵と鍵穴の観点からも立体構造に大差はなく,受容体と結合する際に誘導適合(induced fit)が存在する可能性を考慮すると,カンナビノイド受容体が認識するのは明らかであり,問題の化合物が規制対象の化合物と類似の薬理作用を示すと考えるのは妥当と考えられる.

参考資料

カンナビノイドの化学的性質 (厚生労働省HPより転載)

カンナビノイド「THCH」は指定薬物です! 国民生活センター

カンナビノイド受容体とは?種類・作用・副作用がまるわかり!

大麻 (Wikipedia)

CBDのTHCへの変換に関する研究

(2023.11.21)