出身大学から同窓会名簿作成のための調査葉書がきた.今回は住所,電話番号,メールアドレスを記載するようになっていた.葉書には,Webからも登録可能と付記されURLとQRコードが記載されていたので,HP経由で登録した.
同窓会名簿が情報源になった迷惑電話,迷惑メールが横行するなか,これまでになく個人情報の管理が問題視され,同窓会名簿の発行を取りやめるところも増えてきている.
さっそく,同窓会の名簿作成を担当している印刷業者に,「個人情報の取り扱い」についてメールで問い合わせてみた.以下はその返信内容である.
大変お世話になっております。
同窓会名簿へのメールアドレス記載につきまして、ご心配をおかけして申し訳ございません。
名簿作成にあたっては、最新のセキュリティ対策を施し、不正アクセスや情報漏洩の防止に努めております。
また、名簿は会員様限定の予約申し込みとして不特定多数の方は購入できないようになっております。
皆様の大切な個人情報であることを強く認識し、安全に配慮して取り扱ってまいりますのでどうぞ宜しくお願い致します。
収集されたメールアドレス等の管理システムがハッキングされることを心配しているわけではない.不要になった名簿は責任を持って回収するというのなら納得できるが,巷に出回ったすべての名簿の行方を知る術はない.一部でも名簿収集業者の手に渡り,OCR処理されデジタル化されたら一巻の終わりである.ファイルが売買されてしまう危険がある.
現に, 宮崎公立大学同窓会HPではそのような事例が確認されたことが報告されている.
いろいろ調べて見ると,「個人情報保護法」の施行に伴い,平成17年度以降, 配布及び販売を目的とした同窓会名簿の作成を中止した同窓会も増えてきた.
一方,電子化に踏み切った同窓会も増えつつあるようだ.
熊本大学理学部同窓会は.2022年から名簿の電子化を行っているとのことである.
理学部同窓会名簿電子化のお知らせ 熊本大学理学部同窓会 2022/04/01
以下はHPからの引用である.
熊大理学部同窓会では,これまでの同窓会名簿の冊子体配布をやめ,2022年4月1日より同窓会名簿をweb-system管理とすることになった.
これにより,同窓生会員は登録状況の更新や掲載可否を自身で設定することが可能となった.
「Web同窓会システム」へのアクセス方法は,
1)理学部同窓会ホームページからログインし,予め通知済みのIDと初期PWを入力する.
2)登録携帯番号にSMSで認証番号が送られてくるので,その認証番号を入力して「登録」.
3)登録後,トップページの「マイページ」をクリックし,会員基本情報と勤務先情報並びに「公開・非公開」の更新を行なう.
4)「名簿閲覧」と「会費入金」情報も確認できる.
5)「ログアウト」する.
名簿閲覧には制限があり,マイページより閲覧できる名簿は,原則として会員の卒業年に限定しているとのことである.
追記 その後,卒業年の前後3年程度の名簿閲覧も条件付きで許可されているとのことである.
熊大理学部の例は,ひとつのモデルになると予感できるが,名簿出版を印刷会社に依頼している同窓会の考え方とは,基本的に考えが異なる.印刷会社は,同窓会メンバーの個人情報を既にデータベース化している.同窓会自体が自前のデータベースを構築しないかぎり,名簿の電子化は不可能である.名簿の電子化に舵を切れないのには別の要因も考えられる.名簿の電子化がきっかけで,高齢者の同窓会離れが起こる可能性がある.高齢の同窓生から会費以外に寄付金を集め,研究助成を行ってきた同窓会はデジタル化には踏み切れないだろう.
2010年前後,「◯✕新報社」と名乗る会社が葉書やダイレクトメールを使って,勝手に同窓会名簿を作り,悪徳商法として業務停止(関東5都県)になったことがあった.その頃から,全国の大学において,『大学としては、「同窓会名簿をつくる」等の名目で、卒業生の住所・電話番号等の問い合わせは行っておりませんので、問い合わせがあった場合はご注意ください』,『同窓会の名をかたる名簿業者などの照会等には、 特にご注意ください』などの記述が目立つようになった.
デジタル化すれば,問題は解決するかと問われればそうではない.それに対応した偽サイトが作られ,そちらへ誘導される恐れがある.その対策として,二段階認証等が求められ,パソコンとスマホを操りながら閲覧する必要があるとなると,ますます年寄りには縁遠い存在になる可能性がある.最近は,同学年ではLINEやメールグループで情報交換するのが当たり前になってきている.そのような状況下.紙媒体の名簿が必要だろうか.疑問である.
(2024.11.20)