NMN

Nicotinamide mononucleotide

2023年11月6日の朝日新聞デジタルに ,老化を抑える効果が期待される物質「NMN」のサプリメント商品で,NMNの成分が検出できない商品が大手通販サイトで売られていたという調査結果が掲載されていた.   NMNは,「ニコチンアミドモノヌクレオチド(Nicotinamide mononucleotide)」の略である.α,βの二種類があるが,生体内に存在するのはβ体である.

β-NMN(生体内化合物)

 NMNについて,Google検索するとサプリメントのスポンサーや宣伝ばかりで,NMNについて客観的に解説したサイトは見付けるのに苦労する始末である.そこで,AIチャットに質問してみた.

使用したキーワードは 「NMN,厚生労働省」である

生成 AI は試験運用中です。 

厚生労働省は2020年3月31日、食薬区分の改正を発表し、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を「非医薬品リスト」に追加しました。

NMNは、母乳や枝豆、ブロッコリー、アボカド、トマトなどに含まれる物質で、体内でも生産されます。NMNは、体内でNAD+の合成を促進し、エネルギーに関わる酵素の働きを助けたり、長寿遺伝子と呼ばれるサーチュイン遺伝子を活性化したり、インスリン感受性を改善したりする働きがあります。これらの働きにより、エイジングケア(年齢に応じたケア)作用があると考えられているのです。

NMNは、高齢者の「身体能力低下」の予防、眠気の予防や軽減、倦怠感を改善する可能性があると言われています。また、健常な高齢男性に1日あたり250mgのNMNを12週間経口摂取すると、歩行速度、握力などの運動機能が改善することも明らかになっています。

NMNは一日当たり150㎎〜300㎎の摂取が推奨されており、たくさん摂取するほど効果が高まるものではありません。

これは情報提供のみを目的としており、医療上のアドバイスや診断を行うものではありません。

厚生労働省の資料(2020.3.31)では,NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)が新たに「非医薬品リスト」に追加されている.これを機に新たなビジネスチャンスの到来と原料サプライヤーは市場形成に向けた動きを見せ始め,高齢者に向けた老化防止サプリメントキャンペーンが加速した.規制緩和後に利用が進んだ同様の前例としてはコエンザイムQ10L-カルニチン等があるという.欧米では,一足早く2015年頃には長寿遺伝子群を活性化するということで,「若返りのビタミン」として注目されてきた.

NMN(Nicotinamide mononucleotide)は,多種の脱水素酵素の補酵素として機能するニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の生合成過程における中間代謝産物である.NMNは母乳に含まれているほか,トマト,ブロッコリー,枝豆などの野菜に多く含まれている.体内ではビタミンB3(ニコチンアミド)から生成されるが,加齢に伴い量が減少する.NMNを摂取すると体内でNAD+に変換され.長寿遺伝子と言われている酵素サーチュイン(サーチュイン遺伝子は、老化した細胞に働きかけてDNAを修復を活性化することが知られている.マウスの実験では.高脂肪食負荷に伴う耐糖性異常の改善や老化に伴うミトコンドリアの機能低下の改善,虚血再灌流における梗塞巣(細胞死)の減少などが報告され,長期摂取では老化に伴う神経幹細胞の減少抑制などが認められている(引用論文).

NMNのヒトを用いた研究は,富山大学医学部および東京大学医学部附属病院が実施し,同時期に論文を発表している.

1)富山大学の研究結果(2022年4月12日 )を以下に引用(折りたたみ文書)した..

抗老化作用を発揮する栄養成分 ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の ヒトでの安全性、代謝への影響を解明

■研究の内容・成果
日本の健常成人男女 30 名を対象として、1 日 250mg の NMN またはプラセボを 12 週間にわたって連日摂取していただき、安全性、代謝への影響を検討しました。その結果、NMN 群、プラセボ群とも重篤な有害事象は認められませんでした。また、試験食品に起因する 軽度の有害事象についても NMN 群とプラセボ群でそれぞれ 1 例ずつ消化器症状がみられた のみで、両群間で有意な差はみられませんでした。質量分析計という代謝物を精密に計測 できる機器を用いて、血液中の代謝物レベルの変化を NMN またはプラセボ摂取開始前、摂 取開始後 4 週、8 週、12 週、摂取終了後 4 週(摂取開始後 16 週)に測定したところ、NNN 群では摂取開始後 4 週より NAD レベルの上昇がみられ、NMN 摂取が血液中 NAD レベルの上 昇につながることが示されました。またこの NAD レベルの上昇は摂取終了後 4 週(摂取開 始後 16 週)の時点で摂取開始前と同レベルに戻っており、NAD レベルの維持には摂取の継 続が必要であることが示されました。

【論文詳細】

論文名:Oral administration of nicotinamide mononucleotide is safe and efficiently increases blood NAD+ levels in healthy subjects

著者:Keisuke Okabe, Keisuke Yaku, Yoshiaki Uchida, Yuichiro Fukamizu, Toshiya Sato, Takanobu Sakurai, Kazuyuki Tobe, Takashi Nakagawa,

研究成果は科学誌「Frontiers in Nutrition」(オープンアクセスジャーナル)に令和4年4月11日に公開された.

日本の健常成人男女 30 名を対象として、1 日 250mg の NMN またはプラセボを 12 週間にわたって連日摂取。その結果、NMN 群、プラセボ群とも重篤な有害事象は認められなかった。また、試験食品に起因する 軽度の有害事象についても NMN 群とプラセボ群でそれぞれ 1 例ずつ消化器症状がみられたのみで、両群間で有意な差はみられなかった。質量分析計で代謝物を精密に計測 し.血液中の代謝物レベルの変化を NMN またはプラセボ摂取開始前、摂取開始後 4 週、8 週、12 週、摂取終了後 4 週(摂取開始後 16 週)に測定したところ、NNN 群では摂取開始後 4 週より NAD レベルの上昇がみられ、NMN 摂取が血液中 NAD レベルの上 昇につながることが示された。またこの NAD レベルの上昇は摂取終了後 4 週(摂取開 始後 16 週)の時点で摂取開始前と同レベルに戻り、NAD レベルの維持には摂取の継続が必要であることが示された。

2)東京大学医学部附属病院の論文(2022.5.1)を以下に引用(折りたたみ文書)した.

ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)で高齢男性の運動機能が改善 ~超高齢化社会の課題“サルコペニア”の予防効果に期待~ 

3.発表概要: 東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科の五十嵐正樹助教、中川佳子医師、三浦雅臣医 師、山内敏正教授の研究グループは、健常な高齢男性を被験者として、ニコチンアミドアデニ ンジヌクレオチド(NAD+、注 3)の前駆体であるニコチンアミドモノヌクレオチド (NMN)を経口摂取した場合に、筋力低下を始めとした老化現象に与える影響についての無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験(注 4)を行いました。健常な高齢男性に 1 日 あたり 250 mg の NMN を 12 週間経口摂取すると、NAD+および関連代謝物の血中濃度が上 昇し、歩行速度、握力などの運動機能が改善することを明らかにしました。さらに、NMN の 経口摂取により、聴力の改善傾向がみられることも分かりました。日本が直面している超高齢 化社会ではサルコペニアの予防が大きな課題とされています。今回の研究結果から、NMN の 経口摂取によるサルコペニアの予防効果が期待され、今後、健康寿命の延伸へ寄与するものと 考えられます。 本研究成果は、日本時間 5 月 1 日に英国科学誌「NPJ Aging」のオンライン版(※)に掲 載されました。本研究は、三菱商事ライフサイエンス株式会社の受託研究として実施されまし た。 

5.発表雑誌: 雑誌名:NPJ Aging(オンライン版:2022年5 月 1 日) 

論文タイトル:Chronic nicotinamide mononucleotide supplementation elevates blood nicotinamide adenine dinucleotide levels and alters muscle function in healthy older men. 著者:Masaki Igarashi†*, Yoshiko Nakagawa-Nagahama†, Masaomi Miura†, Kosuke Kashiwabara, Keisuke Yaku, Mika Sawada, Rie Sekine, Yuichiro Fukamizu, Toshiya Sato, Takanobu Sakurai, Jiro Sato, Kenji Ino, Naoto Kubota, Takashi Nakagawa, Takashi Kadowaki & Toshimasa Yamauchi* 

【用語解説】

・サルコぺニア: 高齢になるに伴い、筋肉の量が減少していく現象。 筋肉の量が減少していく老化現象のこと。 25~30歳頃から進行が始まり生涯を通して進行。 筋線維数と筋横断面積の減少が同時に進む。

・NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド): ビタミン B3 の活性型の分子であり、体内では糖代謝や脂質代謝を円滑に行うための補酵素として働いています。また、DNA 修復酵素 PAPR や長寿遺伝子サーチュインも NAD を利用 して機能することが知られており、老化との関わりが注目されています。

東大の場合,以下の結果が得られている.

    健常な高齢男性を被験者として,ニコチンアミドアデニ ンジヌクレオチド(NAD+)の前駆体であるニコチンアミドモノヌクレオチド (NMN)を経口摂取した場合に,筋力低下を始めとした老化現象に与える影響についての無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験を実施.健常な高齢男性に 1 日 あたり 250 mg の NMN を 12 週間経口摂取すると,NAD+および関連代謝物の血中濃度が上 昇し,歩行速度,握力などの運動機能が改善することを明らかになった.さらに,NMN の 経口摂取により,聴力の改善傾向がみられた.

この他にも,ヒトの臨床試験をまとめ.論文概要の和訳を紹介しているサイトが存在する(参考資料3).

これらの臨床研究から有効性が認められたという雰囲気に乗じてネット上の宣伝も一層激化したようである.1日に服用する量は250mg程度と言われているが,その量を食物から摂るとなると,トマトの場合,600個を食べる必要がある.NMNの広告ではその点を強調して購入を勧めている傾向が目立つ.ちなみに,NMN250 mg の 価格は200円程度である(朝日新聞グループ会社 株式会社新販ヘルスケアの広告)

NMNを経口摂取するだけではなく,最近は点滴療法まで出現してきている.そのような状況下,NMNの火付け役の今井眞一郎ワシントン大学教授は,過度なブームに警鐘を鳴らしている.詳細は以下を参照してほしい.

今井眞一郎ワシントン大教授が語る「NMN、抗老化効果の真実」

「NMN、ブームへの警鐘」、今井眞一郎ワシントン大学卓越教授

東大の研究では「日本が直面している超高齢 化社会ではサルコペニアの予防が大きな課題とされているが,今回の研究結果から,NMN の 経口摂取によるサルコペニアの予防効果が期待され,今後,健康寿命の延伸へ寄与するものと 考えられる,」と述べている.

ところが,米国FDAは規制する動きを示している.その理由は「安全性根拠不足」,「新薬開発研究」と噂されている.

NMN:米国FDAにNDI認可を撤回!食品への使用可否状況 ...


NMNは体内で生成される物質で,摂取しても悪影響がある可能性は低いと考えられている.上述したように,健康な日本人の男女にNMNを経口投与した研究では,人体に害のある反応は見られていないが,発がん性の有無はまだわかっていない状態である.

     我が国では,大手の製薬会社が サプリ部門でNMNを取り扱っている.現状は自己責任で使用する段階のようだ.

NMNは加齢とともに減少することがわかっており,抗老化の観点から30代から始めるのが理想的と言われている.NMNサプリメントを飲むタイミングは,寝る前が最適とのことである.また,就寝前にNMNを摂取すると,体内でNAD+に変換された成分が眠気の軽減・下肢機能の改善をサポートするという.

    今回,原稿をまとめながら,NMNはNADの前駆体であるならば,もうひとつ遡ってニコチン酸アミドでもよいのではないかと思うに至ったが,間違いだろうか? 

以下の論文が参考になる.

抗老化作用を発揮する栄養成分 ニコチンアミドリボシド(NR)の生体内 における代謝経路を解明

        NA    ーーー→      NR      ーーー→      NMN      ーーー→      NAD+

参考資料

1)抗老化作用を発揮する栄養成分 ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の ヒトでの安全性、代謝への影響を解明

論文タイトル : Oral administration of nicotinamide mononucleotide is safe and efficiently increases blood NAD+ levels in healthy subjects

著者:Keisuke Okabe, Keisuke Yaku, Yoshiaki Uchida, Yuichiro Fukamizu, Toshiya Sato, Takanobu Sakurai, Kazuyuki Tobe, Takashi Nakagawa,

発表雑誌:「Frontiers in Nutrition」(オープンアクセスジャーナル:2022年4月11日)

2)ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)で高齢男性の運動機能が改善 ~超高齢化社会の課題“サルコペニア”の予防効果に期待~ 

論文タイトル:Chronic nicotinamide mononucleotide supplementation elevates blood nicotinamide adenine dinucleotide levels and alters muscle function in healthy older men

 著者:Masaki Igarashi†*, Yoshiko Nakagawa-Nagahama†, Masaomi Miura†, Kosuke Kashiwabara, Keisuke Yaku, Mika Sawada, Rie Sekine, Yuichiro Fukamizu, Toshiya Sato, Takanobu Sakurai, Jiro Sato, Kenji Ino, Naoto Kubota, Takashi Nakagawa, Takashi Kadowaki & Toshimasa Yamauchi* 

発表雑誌: NPJ Aging(オンライン版:2022年5 月 1 日) 

3)NMNヒト臨床試験まとめ(2020-1023)

2023.12.15