古い写真のカラー化


最近,NHKテレビで関東大震災の記録フィルムをカラー映像化したものを放映していた.白黒テレビ時代ならともかく,高精細のカラーテレビに慣れてしまったためか,白黒画像の情報の少なさに改めて気付かされた.静止画なら人間が一々着色してもそんなに時間を要することはないが,動画となると膨大な量になり人手で解決するのは無理である.調べてみると,最近は機械学習を利用したAIによる自動着色とのことである.NHKに関しては「NHKアートによる白黒映像カラー化AI技術」について説明した記述があり,「株式会社Ridge-iがNHKアートと共同で開発した白黒映像カラー化AI技術は,1カット内の数枚のフレームのみ人間が彩色を行い,その情報を元にして,残りのフレームはAIが自動で彩色を行うという」と書かれている.

ウエブ上には,カラー化のためのアプリや変換サイトが沢山存在していて,それらの使用記やフリーサイトの比較記事が多々見受けられる.さっそく,試してみた.

    最初の写真は,ウエブ上に掲載されている夏目漱石の写真である.第3旧居(大江町)に住んでいた頃の写真とのことである.この写真については,漱石は犬派?,猫派?,犬猫の消息?,人物?についてもサイト上で色々取り沙汰されている.第3旧居は現在は水前寺公園に移築されているが,元々は現在の新屋敷1丁目白川小学校裏の井手を超えた所(マンションの敷地内)に建っていた.カラー化した写真と現存する旧居とを重ね合わせて当時を想起してみてほしい.移設後はお手伝いさんの足元の石はないようだ.

昭和32年(1957),済々黌高校2年の修学旅行の写真である.カラー化して改めてバスガイド嬢の存在に気付いた.

母方の祖父,祖母,叔父叔母の写真.祖父は日露戦争の武勲の金鵄勲章を着けている. 右の写真は,昭和30年代西区島崎の我家から石神山,三賢堂を撮影した写真である.現在は石神山公園になっていて,電柱のある位置に孟宗竹が蔓延り.三賢堂を見ることは出来ない.

上で示したように,カラー化することにより情報が豊富になり, 想像が豊かになることは確実である. 変換サービスサイトにアップロードして数秒待てばカラー化された写真がダウンロードできる. 変換に際し, 色などを指定する必要はない. 何となく違和感を感じた場合は, 別のサービスを選び, 結果を比較すればよい. 肌色が濃すぎる場合は, 画像処理ソフトで彩度を下るとうまくいくようである. Macの場合はプレビュー,GIMP等を利用すればよい.

    AIが写真の構図を読み取り, 細かい部分に分割し,人,物, 風景などに帰属させ,学習により 記憶している膨大なデータをもとに, 「それぞれが何であるか」を認識して色を推定し着色するということらしい.  10年位前までは人間がグラフィックソフト等を使い細かく手で彩色していた作業を,瞬時に実行する.


次図はRosalind Elsie Franklin(DNA二重らせん構造の証明,実質的発見者)の画像である.以前ブログで紹介し.X線解析の大先輩として何となく気になっていたのでカラー化してみた.カラー化サイトにより微妙に異なる.赤色の服は濃色を指定できるサイトで試したものである.

フランクリンの別の写真である.「写真は、1950 年の春にトスカーナの邸宅で友人のヴィットリオ・ルッツァーティが撮影したものです」と記載されている.五つのカラー化サイトで変換してみた.地中海の色を再現しているのは下段中央と思われる.

夏目漱石やRosalind Elsie Franklinの写真は,ウエブ上に掲載されている画像を使用させてもらった.その他の写真は自分が所有している写真である.このほかにも友人の結婚披露宴等のモノクロ写真を変換した感じでは,手持ちの写真を300dpi程度の解像度でスキャナーで取り込み,それをそのままカラー化すると良好な結果が得られるようである.ウエブ上の画像は,例外もあるが掲載する過程で解像度が低下しているためか,カラー化には向いていないようだ.

追記

藤崎宮秋季大祭の馬追い.自裁の色調を再現している例の一つ.

(2023.10.15)