1.3-双極子付加反応

フロンティア軌道法の適用例(1.3-双極子付加反応)

1,3-双極子の付加反応 (1,3-Dipolar reaction)は5員環形成に利用される. オゾン, ジアゾメタン, ナイトロンのようなシントン(synthon, 合成子)を1,3-双極子 (1,3-dipole)と呼ぶ.反応する相手は親双極子 (dipolarophile) と呼ぶ.ヘテロ原子を含む奇数環状化合物(医薬品の構造中にしばしば見受けられる)を合成する有用な反応である.Rolf Huisgenによって体系化された.

1,3-双極子のフロンティア軌道

Allylアニオンで近似する.

反応の特徴

両軌道相互作用が関与する (Neutral type).高反応性

オゾン (Ozone)

ジアゾメタン (Diazomethane)

ナイトロン(Nitrone)

5員環化合物 (isoxazolidine) を与える.

ナイトロンの合成

その他の反応例

Azide

アセチレンとの反応はクリック反応(2022年ノーベル化学賞)に利用される. Cu触媒で加速される.

Nitrile N-oxide

オキシム(RCH=NOH))を酸化して合成する.

Sydnon

[4+2]の環化付加反応の後, 脱CO2反応が起こる

芳香族 N-Oxide類の連続ペリ環状反応

Aromatic N-oxide類は電子的にnitrone類と等価であり, dipolarophile類と反応して,付加体を与え る.

Cumuleneのひとつであるphenylisocyanateと3-methylpyridine N-oxideとの反応において,2種の付加体が単離された.

それぞれ加水分解すると2-anilinopyridine誘導体が単離できることから下記 の反応機構が提案された.

しかし,実際の付加体は1,2-dihydro体ではなく,2,3-dihydro体であることが単結晶X線解析で確認された.

連続ペリ環状反応の存在

FMO論の観点から,付加反応後, 1,5-sigmatropy転位が起こっていることが示唆された(分子分割法で解析する). 反応機構の詳細は別稿を参照.

N-phenylmaleimideとの反応においても同様の連続反応が起こる.

最終生成物(N-ブチル)のX線解析構造とHOMO-LUMO相互作用

Endo付加の場合,二次軌道効果(淡青色矢印↑↓の相互作用)は片方で位相が合わないので,exo付加するものと考えられる.その後,1,5-転位してendo体へ変化する.

二次軌道効果は環化付加のemdo/exo選択性を, 転位反応に関しては1,5ーシグマトロピーを見てほしい.

2022.10.18 追加修正