合成困難高歪化合物
Tetrahedrane
Tetrahedrane
表題の化合物の性状をPubChemで調べてみたら,その三次元構造として下図(A)が掲載されていた.おかしいなと思い精査したところ,MMFF94法(力場)によって得られる最適化構造であることがわかった.分子軌道法による構造最適化ではBの構造をあたえる.
A
B
C-C PM6 1.506Å, B3LYP/6-31G* 1.480Å
無置換体は原子数から判断して固体ではないので,X線解析データは存在しないだろうと思いながら,CCDCを検索すると4個の水素原子をt-ブチル基で置換した誘導体が結晶解析されていた.C-C単結合は約1,487Åである,ちなみに,密度汎関数法(B3LYP/6-31G*)による無置換体の予測値は1.480Åである.
無置換体は原子数から判断して固体ではないので,X線解析データは存在しないだろうと思いながら,CCDCを検索すると4個の水素原子をt-ブチル基で置換した誘導体が結晶解析されていた.C-C単結合は約1,487Åである,ちなみに,密度汎関数法(B3LYP/6-31G*)による無置換体の予測値は1.480Åである.
無置換体は原子数から判断して固体ではないので,X線解析データは存在しないだろうと思いながら,CCDCを検索すると4個の水素原子をt-ブチル基で置換した誘導体が結晶解析されていた.C-C単結合は約1,487Åである,ちなみに,密度汎関数法(B3LYP/6-31G*)による無置換体の予測値は1.480Åである.
結合距離
1978年に最初に合成された際はシクロペンタジエノン経由であったが,収率が悪かったようだ.1991年の合成法(下図)で大幅に改善されたとのことである.前駆体のtetra-tert-butyl-cyclobutadieneとtetra-tert-butyl-tetrahedraneは光/加熱により相互変換すると書かれている.
無置換の場合
無置換cyclobutadieneはDiels-Alder反応により二量化するので,4個の水素原子をt-buthyl基に置換することによって分子間反応が抑えられ,X線解析ができるほど安定化していると考えられる.
HOMO -5.53eV
LUMO -6.01eV
PM3反応障壁28.049KCAL/MOL
追記 相互変換の遷移状態構造を報告した論文
TS1 は,ビシクロジラジカル遷移状態を経由するルート.もう 1 つはイオン的遷移状態TS2.どちらの反応経路も.以前に示唆された複数段階の反応とは対照的と結論している.
今回紹介したような合成困難な化合物の合成に挑戦する試みを「無駄なこと」。「遊び」と思う人もいるだろう。私は大学生の頃(昭和38年卒、1963)、薬理学の教授に「合成は化合物辞典の空白を埋めるに過ぎない」と言われたことがあった。当時は、有機化学の理論といえば有機電子論が主流であった。電子論では、反応は電子豊富な部位の電子が電子不足部位に向かって移動することにより引き起こされるという単純な原理に基づくもので、曲がった矢印で電子の動きだけに注目した時代である。有機電子論に代わって分子軌道の形や位相に注目するウッドワード・ホフマン則が発表されたのは1965年のことである。さらに、上記のようにコンピューターで反応予測ができるようになったのは、21世紀になってからである。
資料
CCDC登録ナンバー 1132313 識別子 CUCZUV : tetra-tert-butyl-tetrahedrane.Space group: P63/m ( 176 )、Cell: a 15.795(4)Å, b 15.795(4)Å, c 14.056(6)Å、α90°, β90°, γ120°.
合成論文 Comp. Theor. Chem., 969, 44-52 (2011),One is the route via bicyclodiradical transition state. The other is the ionic transition state. In both reaction paths, only one TS is there in contrast to the plural step reaction suggested previously.
(2026.1.30)
線画