……ん?
ごめんね、ちょっとぽーっとしてたみたいだ。
違うよ、君のせいじゃない。
こんな美人と一緒にいるのに、駄目だねぇ、何だか今日は酒を飲む気分じゃないのかもしれないね。
……いや、たいしたことじゃあないんだ。
ほんと?じゃあちょっと聞いてくれるかなあ?
昨日さ、一ヶ月振りに僕の親友と飲みに出かけたんだ。
浮竹っていうんだけどね。
うん、死神だよ。院生の頃からの付き合いなんだ。
でも、今は所属する隊が違うからね、なかなか以前みたいに毎日会って話すってことは出来ないよ。
それに、ここの所僕も浮竹も忙しかったから顔を合わせる機会も無くってね。
時々手紙のやり取りみたいなものはしていたけど、直接顔を見たのは一ヶ月振りだったんだよ。
それでね、まあ、浮竹が護廷隊に入ってから髪を伸ばしていたのは知っていたんだけどさ。
昨日久し振りに見たらこれがまた随分と長くなっててねえ。それを高く結い上げてるもんだから、あのコが動く度にぴょんぴょん飛び跳ねてしっぽみたいだったな。
何だか小動物みたいで可愛かったよ。
浮竹はさあ、まだ子供っていうか、幼い所があるんだよね。
え?参ったねえ、確かに僕は可愛げの無い子供だったかもしれないけど…
浮竹は僕と正反対だよ。僕みたいに汚れてないからね。
でもさ、どうしてかな、浮竹と一緒にいるとほっとするんだ。浮竹の無邪気さや純真さに触れて癒されてるのかもしれない。
…それは聞いたことが無いから分からないなあ。でも浮竹は優しい子だからね、僕が浮竹の傍にいるのを許してくれるんだよ。
まあ兎に角さ、僕にとって浮竹はとっても大切な友達だったんだ。
…それがね。
昨日流魂街の居酒屋に飲みに行った帰りにさ、どういう経緯かは覚えてないんだけど、少し散歩しようってことになったんだ。ほら、昨夜は月も出ていたし涼しかったでしょ?
瀞霊廷に帰る前に夜風に当たって酔いを醒まそうって話になったんだよ。
浮竹はひどく機嫌が良くてね。
結構酔ってたんだろうね、あのコ。一緒に歩きながら他愛も無い話をしてる間もずっとにこにこ笑っていてさ。
僕はそれ程酔ってなかったと思うんだけど……いや、やっぱり自分で気付いてなかっただけで相当飲んだのかもしれない。
だってそうじゃなきゃ、あんな気持ちになった説明が付かないよ。
……うん、あのね
浮竹は僕の少し前を歩きながら、ここ一ヶ月の出来事を楽しそうに語ってた。
僕も浮竹の話に相槌を打ちながら、ゆっくり歩いてたんだけどね。
不意に浮竹が立ち止まって、くるって僕の方に振り向いたんだよ。
そうしたら、その拍子に浮竹の髪を結えていた紐が解けてしまってね。
……正直、一瞬心臓が止まるかと思うくらいどきっとしたんだ。
浮竹が髪を下ろした姿なんて今まで何度も見てきた筈なのに、今更どうしたっていうんだろうね。
…うん、綺麗だった。
友人に対してこんなこと言うのもおかしいけど、あの時の浮竹ははっとするほど美しかったよ。それに……変だよね、妖艶っていう表現しか思い浮かばないんだ。浮竹に色香を感じるなんてさ、どうかしてるよね。
だって浮竹はまだまだ子供で、僕はそんな浮竹しか知らないのに…
そこには僕の知らない浮竹がいたんだ……
え?恋?
浮竹に?
まさかあ。単なる一時の気の迷いだよ、きっと。
事故みたいなものさ。
それよりさ、喋ってばかりじゃなくてもっとイイコトしようよ。
君の瞳、綺麗だね。
翡翠みたいな澄んだ緑で、まるで…………
24.09.09
髪に関するリクエスト第三弾です。
最早髪とは全く関係ない話に…orz
この浮竹さんはポニーテールですね。
京楽さんは自分の気持ちに気付いてないですね。
無意識の内に浮竹さんに似た遊女を選んでるけど、自分の恋心は見えてないみたいです。