京浮だけど見ようによってはイチルキだったり京一だったり浮ルキだったり一浮だったりする話<題名長いよ
「浮竹隊長、こちらのマンゴー味などいかがでしょう?」
「お!おいしそうだなあ。朽木は白玉が好きだったからこっちの苺の果汁と白玉のトッピングの奴にしたらどうだ?」
「ああ、本当ですね。宇治金時も捨てがたいのですが・・・うぅ、どれにしようか迷ってしまいます」
「折角だから朽木の好きなもの何でも頼んで良いんだぞ。遠慮しなくていいから。一護くんはもう決まったのかい?」
「はあ・・・」
「浮竹、こっちに期間限定品って書いてあるメニューがあるよ」
「へぇ、これも上手そうだ。いやあ現世には美味しそうな食べ物がいっぱいあるなあ」
空座町で一番人気の甘味処で熱心にかき氷のメニューとにらめっこしている4人組がいた。
否、正確に言えば、あれも食べたいこれも食べたいと楽しそうに話しているのはルキアと浮竹だけで、一護は周囲の視線が気になるのかそわそわと落ち着かない素振りを見せ、京楽はと言えば滅多に無い現世での食事に子供のように顔を輝かせている浮竹をにこにこと見詰めているだけだ。
肩寄せあって真剣にどのかき氷を食べるか相談しているルキアと浮竹は、泣く子も黙る護廷十三隊に所属する死神とその上司というより、普通の女子高生と・・・その父親か?とそこまで考えて一護ははたと我に返った。
この喩えでいくと隣に座る京楽が自分の父親だと周囲に思われているのかもしれないと気が付いて一護は思わずその場から逃げ出したくなった。
(このオッサンと血縁関係にあると思われるのは絶対嫌だ!しかしどうやって俺はこの人と何の関係も無いってことを示せばいいんだ・・・!)
と、フル回転で頭を巡らせながら、同時に額から嫌な汗がだらだらと流れる。
そんな一護の内面での葛藤を知っているのかいないのか、京楽は親しげに「一護君は決めなくていいのかい?」なんて聞いてくる。
「俺はかき氷は苺シロップって決めてるんで」
「おぉ、シンプルでなかなか渋い趣味だねえ」
「京楽さんは何も頼まないんですか?」
「僕はいいよ。今日はただの付き添いだから」
「付き添い、って。京楽さん、実は浮竹さんと現世で遊びたかっただけじゃないんですか?」
「いやいや何を言うんだい。僕は現世に疎い浮竹が心配で来たまでだよ」
「ほんとかよ・・・」
そもそも何故この4人が現世の甘味処でかき氷など食べることになったのか。
夏休みだから得にする事も無く部屋でごろごろしていた一護とルキア(とコン)を訪ねてきたのは何と浮竹と京楽だった。
驚く二人を余所に浮竹が説明するところによると、何でも普段無償で働いてくれている死神代行に日頃の感謝の意を込めて特別に金一封を贈与することになったらしい。まあ夏のボーナスみたいなものである。
一護はどの隊にも属してはいないが一応ルキアがお世話になっているということで十三番隊所属扱いということになり、十三番隊隊長である浮竹が(彼氏連れで)わざわざ現世まで出向いてきたのである。
別に好きでやってることだから給料なんていりませんと言う一護に、じゃあ現物支給ならいいんじゃないと提案したのは京楽だった。
若いんだし、欲しいものの一つや二つあるんじゃないの、という京楽に一護は思わずう、と言葉に詰まってしまった。
実はこの前浅野達と行った店で気に入った服が何着かあったのだが小遣いが足りなくて泣く泣く諦めたのだ。死神代行といっても所詮は高校生、月の小遣いの額などたかが知れている。
じゃあどうせだったら皆で買い物に行こうと言い出した京楽に、それはいい、4人でおいしいものでも食べてからゆっくり街を回ればいいよと浮竹が賛成した。
そして普段仕事以外で自分の隊長と過ごす機会など無いルキアが喜びに目を輝かせながら、それでは私がおいしい白玉を食べさせてくれるお店を知っています、きっと浮竹隊長も気に入りますよ、と話を進めてしまい、
結局一護に異議を挟む余地は与えられなかった。
そんな訳で何だかよく分からないうちに一護はルキアとともに二人の中年に空座町を案内する羽目になったのである。
そして取りあえず腹ごしらえをしようという浮竹にルキアが案内したのがこの甘味処だった。
「どうして腹ごしらえで甘味処なんだ??しかもいつの間にかかき氷食べることになってるし!かき氷じゃあ腹いっぱいにならねーだろ」
という一護のもっともな突込みに耳を貸すものはいなかった。なんだかんだ言って死神の感覚は人間とはずれているのである。
(といってもこの場合、天然な浮竹と死神の中でも微妙にズレてるルキア、そして浮竹の突拍子も無い言動行動に慣れている京楽、という組み合わせが一護にとって災いしているだけ、とも言える)
(しっかしなあ・・・さっきから周りの視線が痛いぜ・・・)
そう一護が顔を引きつらせるのも無理は無い。
オレンジなんて珍しい色の髪をしているから、自分は随分と目立つ方だと一護は自覚していた。しかし、その一護も京楽と浮竹には負ける。当たり前だが今二人は死覇装ではなく現世の服を着ている。
が、それでもかなり周囲から浮いている。
と言うのも、いつもの笠と女物の着物の派手さに隠れて気が付かなかったが、京楽は日本人離れした彫りの深い顔立ちに均整の取れた肉体を持つ非常にいい男なのだ(と思う)。
先程からちらちらとこちらを盗み見る女性の数は数知れない。そして京楽とは正反対のタイプだが浮竹も非常に端整な顔の美形である。
しかも、今は肩で結ばれている純白の長い髪は翡翠の瞳と相まってこの世のものとは思えない(実際人間ではないが)不思議な美しさを醸し出している。
つまり、この二人は目立って目立って仕方が無いのである。
(あー居心地が悪い・・・しかもどうして俺京楽さんの隣に座ってんだよ。俺この人と接点無いんだけどなぁ・・・なーんかこのヒト胡散臭いから苦手なんだよ)
そんなことを一護が考えている間に注文したかき氷が運ばれて来る。
「「いっただきまーす!」」
「・・・いただきます」
にこにこと満面の笑みでルキアと浮竹は次々と氷を口に運ぶ。やれやれ、と心の中で溜息を付きながら一護もスプーンを動かした。
「おお!これは上手い!!!外にかかっている苺の果汁と中に入っている苺の果肉のゼリー寄せが、白玉とマッチして・・・!」
スプーン片手にウルウルと大きな瞳を輝かせて力説するルキアに、たかがかき氷に何をおおげさなことを一護は馬鹿にしたように笑った。
「何を言う!ならば食べてみればいいだろう?ほら」
「お前なあ、苺のかき氷なんてどれも同じ・・・」
ひょい、とルキアが差し出したスプーンを半信半疑の一護はぱっくと口に入れる。
「・・・!!!」
「どーだ!上手いだろう?」
あまりのおいしさに絶句している一護にルキアは得意げだ。
「も、もう一口食べさせてくれ!」
「ダメだ、食べたければ自分で注文するんだな」
「な・・・男子高校生がそんな凝ったもん注文できるかよ!」
「それでは諦めるのだな」
「お・ま・え・な~~~~」
ぴくぴくと額に青筋を立てながら一護はルキアを睨み付けるが、ルキアは全く動じない。
が、ふと隣の浮竹の様子がおかしいことに気が付いて不思議そうに首を傾げた。
「浮竹隊長?」
「浮竹さん?」
大丈夫かと目で問う二人の声が聞こえていないのか、浮竹は目をキラキラさせながら頬を染めてじーっと一護とルキアを見詰めている。
しかも手の中のスプーンをくわえたままだ。
「どうしかしたの、浮竹?」
「い、いや・・・何でもないんだ」
京楽の問いにも首を振るだけである。
しかしもじもじしながらルキアと一護、そして京楽とかき氷を交互に見遣る浮竹は明らかにおかしい。
「ははあ。成る程ねぇ」
「え?」
小さな声で京楽がそう呟いたのを一護は聞き逃さなかった。
「ほら、あーん」
そう言いながらテーブルに少しだけ身を乗り出すと、京楽は小さく口を開いた。目じりがだらしなく垂れている。
一体このオッサンは何してるんだと、一護が口を開きかけたその時。
ぱぁぁぁという音が聞こえそうな勢いで浮竹は笑顔を浮かべると、次の瞬間「あーん」と言いながら京楽の口にかき氷を乗せたスプーンを運んだのである。
「「!!!!!!!!!」」
驚きに言葉を失っているルキアと一護に構わず京楽はぱく、と氷を口に入れる。
「上手いか?」
「うん、とってもおいしいよ」
「そうか、よかった」
そうして顔を見合わせると、二人は幸せそうに微笑みあった。
漫画だったら背景にピンク色のハートが飛び交いそうなほどラブラブな光景である。
突然目の前で見せ付けられたいい年したオッサン二人のいちゃいちゃぶりにくらくらしながらも、きゃぁぁぁ!という黄色い歓声を一護は遠くに聞いた気がした。
(な、なんなんだ~~~~!!!!この二人は!?!?!?)
場所もわきまえずいちゃいちゃする京楽と浮竹に、一護はこの二人と出かけるなんて馬鹿な真似をした自分を思いっきり呪うが後の祭りである。
ちなみにルキアは普段からこの二人には慣れているので免疫が出来ている。
「あの人たち、子連れのゲイのカップルなのね~」
「二人ともカッコいいー!」
「でも、子供はちょっと」
「「「可哀想よね~~~~~」」」
という女性たちの言葉を遠くに聞きながら、真っ白に燃え尽きた頭でもう絶対にこの二人とは街を歩かないと一護は誓ったのだった。
誰が誰だかわかるかな?
「万象一切灰燼と成せ、流刃若火!」
「ありがとうございます、山本総隊長!」
「総隊長、こちらにも火をお願いします!」
「こちらも下火になってきました」
「わぁい!や・きにく、や・きにくvvvvじいじの焼肉だー!」
「正確には焼肉ではなくバーベキューです。肉以外の食材も調理されています」
「ええ~!野菜キラーイ」
「駄目ですよ、草鹿副隊長。ちゃんと野菜も食べないと大きくなれませんよ」
「え!・・・私、お肉だけ食べてよう・・・」
「ああ夜一様・・・!肉を焼く姿もお美しい・・・!!!」
「それにしても・・・総隊長も大変ですね」
「なぁに言ってんのよ、総隊長はああ見えて結構楽しんでるのよ?」
「そうでしょうか?最強の攻撃力を誇る斬魄刀が、バーベキューの火種に使われるなんて嘆かわしいとは思わないんですか?」
「七緒はちょっと真面目すぎるのよ。うちの隊長の氷輪丸だって夏には氷を出すのに便利なのよ」
「そういえばシロちゃんの姿が見えないですね」
「隊長なら暑いからって言って木陰で休んでるわ」
「そういえばうちの隊長も・・・」
「京楽隊長なら浮竹隊長と一緒にあそこに座ってますよ。ほら」
「あ、本当ですね。何であんな所にいるのかしら」
「浮竹隊長が煙を吸い込むといけないからって、風上の涼しいところに場所を取ってくれたんです」
「成る程。全く、浮竹隊長のことになら一生懸命になるんだから、うちの隊長は」
「あら、いいじゃない。優しいのよ、京楽隊長は。それにしても、京楽隊長ってほーんと夏が似合わないわよねー夏生まれなのに。これほどまでに川原でバーベキューするのが似合わない人も見たこと無いわ」
「失礼ですよ、乱菊さん^^;」
「本当のことでしょー?あーあ、甲斐甲斐しく浮竹隊長の世話焼いちゃって。オアツイわねぇ」
「あ゛あ゛い゛い゛な゛あ゛~!私も浮竹隊長にあーんってしたい~~~~!!!」
「そんなことしたら京楽隊長に半殺しにされますよ・・・」
「うぅ・・・そうだった(;;)・・・ってあああああ!!!!!」
「何よ清音、うるさいわね」
「浮竹隊長がマシュマロ焼き食べてるぅ!はふはふ息を吹きかけてる~!か・わ・い・い~~~~~!!!!」
「あらほんと。見てよあの京楽隊長の顔。浮竹隊長が可愛くて可愛くて仕方が無いって顔ねえ」
「だらしない顔の間違いじゃないんですか?全く隊士達の前であんな情け無いするなんて、隊の指揮が下がります」
「くすっ、口いっぱいに頬張ってあんなに一生懸命になって。浮竹隊長もまだまだ子供ですね」
(((卯ノ花隊長!!!いつの間に!?っていうか浮竹隊長が子供って・・・貴女ほんとに一体何歳なんですか!?!?)))
「あら。マシュマロが溶けて落ちてしまったようですね」
「あ!ほんとだ!私、ちょっと浮竹隊長にハンカチ渡してきます」
「止めときなさい、清音」
「乱菊さ~ん!どうして止めるんですか!?」
「あんたね~、よく見てみなさいよ」
「ええ?」
溶けて首筋に落ちてしまったマシュマロを人差し指で掬い上げると、浮竹はそのままひょいっと口に含んでしまったのである。
一部始終を見ていた京楽の喉がごくりと動いた。
次の瞬間、京楽と浮竹の姿は消えていた。
「・・・・・・」
「あらあら、京楽隊長もまだまだお若いですこと」
「これは・・・」
「しばらく帰ってきませんね・・・」
「う、うきたけたいちょぉぉぉ(;;)」
管理人はホラー漫画を読むのは好きですがホラー映画は駄目な人です
「今年もこの季節がやって来たのか・・・!」
ぷるぷるとルキアの肩が小刻みに震えている。その手には一枚の紙が握られていた。
「何だあ?何難しい顔してんだよ?」
「これを見てくれ、一護」
「ああ?」
そう言って渡された紙を見ると、「毎夏恒例護廷十三隊肝試し大会のお知らせ」と派手な字で書かれていた。
「・・・肝試しって、お前らぶっちゃけ幽霊じゃねーか。幽霊なのに肝試しってどう考えても間違ってるだろ」
何やってんだよ、死神は、と一護は呆れて脱力した気分だったが、それでも至極まともな突っ込みは忘れない。トンデモ系のキャラが多いブリーチの中では一護は意外とまともな感覚の持ち主だったりするのである。
まあそれが災いして最近は存在感が薄くなり本誌でもアニメでもなかなか出番が無いのが可哀想なのだが、まあぶっちゃけ少年誌の主人公の癖に二重人格だったり虚化して敵味方見境無く攻撃しちゃったりしているので最早存在感云々の問題ではないのかもしれない。
「なんか嫌なナレーションだな・・・当たってるのが余計むかつくけど」
「まあまあ、あまり気にするな。話を戻すとだな、これは男性女性両死神協会合同主催による、護廷十三隊全隊参加の大規模な大会なのだ。開催期間は一週間。参加資格があるのは副隊長以下の死神全てだ。
優勝すれば賞金そして豪華副賞が手に入るというすごいものだ。しかし優勝するには知力、体力、技術など死神としての能力を結集して非常に難関な試練をクリアしなければならない。
下手すれば命の危険もある、恐ろしい大会なのだ。毎年参加者の半数以上が大会開始の前に棄権すると聞く」
「・・・なんで肝試しなのにそんな物騒なことになるんだよ。普通肝試しって言ったら、神社の境内とか夜の学校とかでやる遊びだろう?俺はよく知らねーけど」
霊が見える一護が肝試しに関して無知なのは、当然と言えば当然である。本物の霊が見える人間に今更肝試しもお化け屋敷もあるまい。っていうか普通の幽霊より虚の方がよっぽど怖い気がする。
「何を言っている?それのどこが肝試しだというのだ。良いか一護、この肝試しに優勝するにはある一定の条件を期間内に誰よりも早くクリアしなければならない。
もし誰一人全部の条件をクリアできなかったら、一番多く条件をクリアしたものが優勝者だ。ちなみにこれが今年のリストだ」
そう言うと、ルキアはぴら、と紙を裏返した。
「開催期間内に以下の条件を全てクリアしてください。
1.山本総隊長の髭を結っているリボンを、総隊長に気付かれないように取ってくる。
2.砕蜂隊長に聞こえる場所で「正直夜一様ってブサイクだ」と言ってから、隊長の猫グッズをひとつ取ってくる(その結果砕蜂隊長に攻撃されても主催者側は一切責任を負いません)。
3.卯ノ花隊長に実際の年齢を尋ねてから、卯ノ花隊長に気付かれないように四番隊にある薬を取ってくる(その結果卯ノ花隊長に攻撃されても主催者側は一切責任を負いません)。
4.朽木隊長の目の前で朽木家の池の鯉を取ってくる(その結果朽木隊長に(以下略))。
5.香水か整髪スプレーをたっぷりつけてから狛村隊長に稽古をつけてもらう(その結果狛村隊長が本気で攻撃してきても主催者側は一切責任を負いません)。
6.男性死神なら京楽隊長に聞こえる場所で「浮竹隊長と一緒に風呂に入った」と言ってから、京楽隊長に稽古をつけてもらう(その結果京楽隊長が(以下略))。
女性死神なら「バラ色の小径」を最低5時間音読する(その結果貴女の精神に異常をきたしても(以下略)。
7.日番谷隊長に稽古をつけてもらう。
8.更木隊長の髪についている鈴を一つ、更木隊長に気付かれないように取ってくる(その結果更木隊長に攻撃されても(以下略)。
9.十二番隊に行って何か食べてくる(その結果貴方の身に何が起ころうとも主催者側は一切責任を負いません)。
10.浮竹隊長手作りのカレーライスを5皿おかわりする(その結果(以下略))。」
「・・・うわぁ・・・」
「どうやら今回は狛村隊長、京楽隊長、日番谷隊長、浮竹隊長が大会に協力してくださったようだ。このリストを見る限り、日番谷隊長から始めるのが一番安全だな。
稽古ぐらいなら仮擦り傷で済むだろう。やはり一つは楽なオプションがないと参加者のやる気が削がれるからな」
「おいおいおいおい、これのどこが肝試しなんだよ!肝試しっていうか度胸試しじゃねえか!!しかも命かかってんじゃねーか!!!
京楽さんとか協力してくれてるんだったら普通に稽古つけてもらえよ、何でわざわざ本気出させるようなことすんだよ!」
「だから言ってるであろう、これは非常に危険度の高い大会なのだと。下手をすると本気の隊長たちに殺される可能性があるからな」
「(一護頭を抱える)うぅ・・・わからん、俺にはこの感覚は理解できない!・・・ってあれ?何で7が一番安全なんだ?10なんかメチャクチャ簡単そうだぜ。浮竹さんのカレー5杯食べるくらい、危険でもなんでもないんじゃねーのか?」
「・・・・・・いや、10が一番死ぬ可能性が高い・・・」
何でだー、と頭の上で?マークを飛ばす一護に、ルキアはただどうしてもだと繰り返すだけだった。
一護は知らないのだ。
毎年怖いもの知らずな新人隊士が浮竹の作ったカレーを一口食べて約一月病院送りになることを。
そのあまりの恐ろしさゆえに、最早死神たちの中では「浮竹のカレー」という言葉を口に出すことさえ憚られているということを。
(やはり今年も全てクリアするものは出ないだろうな・・・)
院生時代の京楽さんはやっぱり青いってお話
夏休み、一緒に僕のうちの別荘に行かない?
さりげなさを装ってそう浮竹を誘ったけれど、本当は緊張に心臓がはちきれそうだった。
浮竹と付き合い始めて初めての夏。
実家に帰っても出来るだけ会おうと約束はしたけれど、やっぱり寮にいる時ほど頻繁には会えないだろうって経験から分かってた。
僕はもともとふらふらしていたから、実家に戻ったからと言って今更家族付き合いとかに縛られることは無いけれど、浮竹は違う。
大家族の長男で責任感の強い浮竹は、小さな弟や妹たちの相手をしたり両親の手伝いをしたりで夏休み中忙しい。
それでもたまに僕が浮竹の家に遊びに行くことはあった。でも、それだって二人きりの時間を過ごすというよりは浮竹と一緒になって子供達の遊びに付き合っていただけだ。
勿論それはそれで新鮮な体験だったけど、やっぱり僕は誰にも邪魔されないで浮竹と二人だけで過ごしたかった。
だから、浮竹を誘ったんだ。
二人っきりで旅行なんて(といっても流魂街にある京楽の別荘に行くだけだけど)浮竹は嫌がるかなあなんて思ったけど、そんな僕の予想に反して浮竹は至極あっさりと「うん」と言ってくれた。
それも、心の底から嬉しそうに。
浮竹の都合でたった一泊しか出来ないけれど、それでも浮竹との初めての旅行に僕の胸は期待に高鳴った。
だってさ、よく考えてもごらんよ。
恋人と二人っきりで一晩を過ごすなんてさ。
夏の思い出と称して浮竹と関係を持つ絶好のチャンスじゃないか!!! <下心丸出しだよ京楽さん^^;
浮竹と付き合い始めてから約4ヶ月、正直よく我慢したと思う。自分で自分を褒めてあげたいよ。
浮竹はとにかく無防備な上に、僕と付き合い始めてから僕に対してひどく甘えるようになったんだ。ことあるごとにキスやスキンシップをねだってくる浮竹に何度僕の理性が飛びそうになったことか!!
だから僕はこの旅行で絶対に浮竹と結ばれよう、って決めてるんだ。
「京楽、どうしたんだそんな真剣な顔して?」
「え?あ、うぅん、何でもないよ。麦茶、もっと飲むかい?」
「ああ、ありがとう。それにしても本当に良い所だな、ここは。静かで空気も綺麗だし。こんな別荘を持ってるなんて、やっぱり京楽はすごいな」
「僕じゃなくて京楽の家が凄いだけだよ。でも浮竹が気に入ってくれたなら、僕は嬉しいよ」
「誘ってくれてありがとう、京楽」
そう言って、少しだけ頬を染めながらにこっと笑う浮竹はとっても可愛い。
今日一日、弟妹達の世話から解放されて思いっきり遊んだから、浮竹も楽しかったんだろう。一緒に散歩に行って近くの川で釣りをして、その間にもたくさん色んなことをお喋りして。
おなかが空けば一緒に料理して、出来上がった料理の不味さに二人で大笑いして。そして今、こうして縁側に座りながら二人で空を見上げている。
こんな風に二人だけで過ごすことなんてなかったから、何もかもが新鮮で、何もかもが喜びだった。そして普段とは違う浮竹の新しい一面を発見して、僕はますます深く恋に落ちた。
浮竹のことが好きで好きでたまらない。
浮竹と一つになりたい。
「ねえ、浮竹・・・そろそろ寝室に行こうか・・・」
「ああ、そうだな。お前の家の布団は柔らかくて気持ちよさそうだなぁ」
僕の気持ちを知ってか知らずか、浮竹は至極当たり前のように二人の布団をくっつけて敷いた。
・・・もしかして、これは浮竹も僕と同じことを期待しているって思っていいの?
「なあ、京楽・・・そっちに行ってもいいか?」
「え!?!?も、勿論だよ」
「へへ、良かった」
いそいそと僕の布団まで入ってきた浮竹を、僕はぎゅっと抱きしめた。
心臓がドキドキと早鐘を打つのが浮竹に聞こえてしまうんじゃないかって思ったけど、今更そんなこと言ってられない。ごくりと唾を飲む音が、真っ暗な部屋にやけに大きく響いた気がした。
「う、うきた」
「京楽」
「え?な、何?」
「こんな話を知ってるか?」
「・・・へ?」
折角勢い込んで口を開いたのに、思いもかけない浮竹の言葉に間抜けな答えを返してしまった。
いやだってあんまりいきなりだから・・・っていうか何かすごくいやな展開なんだけど・・・
「ある所にところてんの嫌いな少年がいたんだ。」
「ちょちょちょちょちょっと待ってよ、浮竹!!!!何の話してるの???」
「何って・・・夏の真夜中にすることといったら百物語だろう?」
「ひゃ・・・」
百物語って!!!!!!!!!!
僕たち二人しかいないのに100話も怪談を話すの!?!?
そもそも百物語には蝋燭が必要なんじゃないの!?!?
っていうか「ところてん」から始まる怪談って!?!?!? <混乱している
「いやあ弟たちが夏になるといつも怪談を話してくれってせがむんだよ。ほらやっぱり夏は暑いからなあ・・・って京楽?聞いてるのか、京楽?おい、京楽!」
真っ白に燃え尽きてしまった僕には、浮竹の声がひどく遠くに聞こえた。
・・・うん、分かってはいたけどね。浮竹が天然だってことは。
でも。
でもやっぱり。
このオチは無いよ~~~~~(号泣)!!!!
15.10.09