心の赴くままに筆を滑らせていたら、支離滅裂な内容ばかりになってしまった。すまない。どうも今の俺では、上手く考えを纏めることが出来ないようだ。
こんな手紙を読むお前も、きっと退屈しているだろう。
そうだ、まだ現世任務について詳しいことを書いていなかったな。
今回俺が派遣されるのはエルサレムという場所だ。そこでは最近立て続けに戦争が起こったらしく、何千人もの人間が死んだらしい。戦争の理由はエルサレムを巡る二つの宗教の対立らしいが、現世の事情に詳しくない俺には、人間がエルサレムに拘る理由も、異なる宗教を信仰するとはいえ何故彼等がエルサレムを共有することを拒否するのかも分からない。宗教自体、俺にはよく分からない概念だ。
ただ俺に分かるのは、戦争は兵士だけでなく、毎日を一生懸命生きている一般人をも犠牲にするということだけだ。何故何の罪もない人間達が戦闘の犠牲にならなければならないのだろうな。力のある者は力の無い者を守るべきではないのか。強者が弱者を虐げるなんて、そんなことが許されていいのだろうか。彼等の神は、果たしてそんなことを望んでいるのだろうか。俺はずっと、人間の信じる神とは人間を守ってくれる存在だと思っていた。だから、神を信じるということは、それだけで人間を争いから遠ざけることだと思っていた。でも、現実は違う。信じる神が違うというだけで、人間にとって殺し合うには十分な理由になってしまうのだ。
人間は、何故戦うことを止めないのだろう――
何故、力の無い者が犠牲になるのだろう――
お前なら、力の無い者が力を持つ物に支配される、それは尸魂界でも現世でも同じだと言うだろうか。確かに俺達死神の中には、瀞霊廷の権力を笠に着て流魂街の住人を抑圧する者もいる。でもそれは、一部の死神だけだと俺は信じている。多くの死神は、戦う術を持たない魂魄を守るために必死で剣を振るのだと信じている。
いや、そう信じたい。
信じたい――――そう願うのは、俺の弱さだろうか。そんな願いを持つこと自体が、愚かなことなのだろうか。
お前は昔から、尸魂界の構造自体が霊力を持たない魂魄にとって不利に出来ているのだと言っていたな。悲しいことだが、それが事実なのだろうか。だとしたら、尸魂界も現世も理不尽な世界だな。そんな世界のどこに正義があるというのだろう。俺は死神の力を持っているのに、そんな世界を変えることも出来ず、ただ虚と戦い現世を彷徨う魂魄を尸魂界へ送ることしか出来ないのだろうか。
なあ、春水。
俺は、俺達は、何のために戦っているのだろうか――――