雪のように白い手に、一回り大きな褐色の手が重ねられる。
白磁の長く繊細な指を、太く骨ばった指が絡めとる。
純白の絹糸のような髪が、漆黒の地面の上で波を描く。
背景の暗黒と対照的に、その美しい髪は、まるで世界の光全てがその中に閉じ込められたかのように、淡い銀色の光を静かに放っている。
月の光を紡ぐことが出来たとしても、きっとこれ程美しい糸を作ることは出来ないだろう、と京楽はぼんやりと思う。
うっすらと涙を浮かべた二つの翠玉の瞳が、乞うように見上げてくる。
緑の海の底で煌くのは欲望の光だろうか。
薄い桜色に濡れそぼった唇がゆっくりと開く。
(京楽)
愛しげに京楽の名を呼び、花が綻ぶように浮竹は微笑んだ。
がばっ。
勢いよく布団を撥ね退けて京楽は眼を覚ました。
まだ夜明け前なのか、辺りは薄暗い。それでも、自分の顔がおそらく真っ赤に染まっているであろうことは、頬に集まる熱と激しく脈打つ心臓から京楽には容易に想像がついた。
物欲しげに己の名を呼ぶ浮竹の声が京楽の耳の中で鳴り響く。
ただの夢だ、と京楽は呟く。
それだけだ、何の深い意味もないと、己に言い聞かせる。
それでも。
眼を閉じれば、夢で見た浮竹の淫らな肢体が瞼の裏にはっきりと浮かぶ。理性とは裏腹に身体は確かな熱を持って浮竹を欲する。
最低だな、僕は、とひとりごちた京楽の声は朝日とともに訪れた鳥に囀りにかき消された。
05.02.09
短いですねえ。
京楽さんがこんな青臭い夢を見るのかどうか・・・