〇テーマ:シェアハウスの新たな可能性
〇問題意識
シェアハウスが登場し始めた頃からシェアハウスの需要は右肩上がりに拡大し続けている。
そこで、シェアハウスが担う社会的役割、以前のシェアハウスと比較して現在のシェアハウスは何か変化しているのか、今後の展開、などを明らかにしたい。
〇基礎概念
・シェアハウス(別名:ハウスシェアリング)
賃貸住居のうち、複数人で一戸建て住居を借り、台所や風呂・トイレなどを共同で利用する形態の借り方。シェアハウスという言葉が使われ始めたのは、ここ10年前くらいからであり、ゲストハウスがシェアハウスの住居形態の原型となった。法律上の定義はなく、主として個々の賃借人が賃貸人との間で賃 貸借契約を締結する。住居内の各部屋が住居者のプライベートな空間となり、そのほかは共同利用の空間となる。他人同士が一つの住居を借りて同居することは、ルームシェアリング(ルームシェア)と呼ばれる。ルームシェアリングが既存の賃貸物件を対象とする入居形態を指すのに対して、シェアハウスはあらかじめ同居用に改装・改築された物件を指すことが多い。(新語時事用語辞典、オークハウス、ひつじ不動産)
・ゲストハウス
旅行者などが比較的安く泊まることができる簡易型ホテルのこと。一般的なホテルとは異なり、ゲストハウスでは、各部屋に風呂やトイレが無い場合が多く、同じ風呂やトイレを宿泊者が共同で使用する。その分、宿泊価格が安くなっている。(オークハウス)
・ペアレンティングホーム
日本初のシングルマザー専用シェアハウス。日頃、仕事・子育て・家事に追われているシングルマザーを助けてくれる。一級建築士事務所秋山立花を中心に保育、不動産、シェアハウスのそれぞれのプロフェッショナルがそれぞれの専門知識をもちよって協力しながら企画、運営をおこなっている。 コンセプトは「誰もが子育ても仕事も両立できる社会に」。(Parenting Home、SHARE PARADE)
・チャイルドケア
毎日忙しいシングルマザーをサポートするペアレンティングホーム独特のサービス。例えば、毎週決まった曜日・時間に健康に良い食事を作ってくれたり、子供たちの遊び相手になったり、宿題や家庭学習をしてくれる。おかげでシングルマザーの方々にちょっとした休憩時間をもつことができ、心の負担を減らすことができる。(SHARE PARADE)
◯研究者
・本間義人
法政大学名誉教授。
専門分野は都市・住宅政策、国土・地域政策。1984年、東京市政調査会藤田賞特別賞受賞。ルームシェア/シェアハウス、コレクティブハウス、グループホームといった家族ではない他人との共同生活実践に関する調査をもとにして、家族を超える親密性/ケア/生活の共同性に関する理論的な研究を行っている。
都市・住宅政策に関する主要著作
「内務省住宅政策の教訓」(御茶の水書房)、「どこへ行く住宅政策」(東信堂)、など。
国土・地域政策に関する主要著作
「地域再生の条件」(岩波新書)、「まちづくりの思想」(有斐閣)、など。
・葛西リサ
立教大学コミュニティ福祉学部福祉学科所属。RPD研究員。専門分野は、生活経営学・住宅経営学・居住福祉・家族福祉・ジェンダー。
ひとり親世帯の居住についての論文を多く発表し、居住の共同化についての論文もいくつか発表している。
2009年5月に都市住宅学研究奨励賞受賞 2007「母子世帯の居住水準と住居費の状況ー大阪府及び大阪市の事例調査を中心としてー」都市住宅学59号 15~20
・園田眞理子
建築学者。明治大学理工学部建築学科教授。専門分野は、建築計画、住宅・住環境計画、住宅政策論。
高齢者居住についての論文を多く発表している。特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームといった「高齢者施設」に入るほどではないが、心身ともに将来の不安を抱える人向けに、「高齢者向けのシェア
ハウスがあってもいい」とメディアで語っている。
◯基礎データ(量的)
【シェアハウスの市場規模】
シェアハウスは定義そのものが曖昧であるが、シェアハウス専門のポータルサイトである「ひつ じ不動産」公開の情報によれば、2013 年 3 月時点で同社の把握戸数は全国で 19,208 戸、物件数は 1,378 件 となっている。市場への供給数は直近 8 年で約 10 倍と、急激に拡大していることがわかる(図表5)。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング コンサルティングレポート
http://www.murc.jp/thinktank/rc/report/consulting_report/cr_150130.pdf
〇基礎データ(質的)
・シングルペアレント向けシェアハウス
シングルペアレント世帯の増加により、幾つかの民間不動産会社が運営するシングルペアレント向けシェアハウスが最近注目を集めて話題となっている。国や自治体もシングルマザー・シングルファザーを支援する施策を拡充してはいるものの、中々抜本的な解決には至っていない最中、シングルペアレント同士が寄り合って一つ屋根の下に生活し、住居とともに「子育て」もシェアしようというのだ。シングルペアレント向けシェアハウスでは、子守をしてくれるシッターをシェアし、子育ての悩みを親同士が互いに相談し合い、子供たちは子供たち同士で遊ぶ。
入居者の声としては、「共同生活を経験し、娘はほかの子を思いやるようになってきた」、「みんながいる安心感や、話しや相談できる相手がいることが心強い」、「子供たち同士が遊んでいてくれるので、手が空いて助かる」など、好意的なものが多く寄せられている。
しかし現状では、大阪や東京とその周辺の都心部にしかなく、また、ほとんどが母子家庭専用のシェアハウスであり、シングルファーザーが入居できるシェアハウスが少ないこと等が、今後の解決が期待される課題点に挙がる。
例:シェアハウスぽたり http://sharehouse-potari.com/?page_id=80
・沖縄 シングルマザー×シェアハウス GROW
管理者ブログ:入居状況、懇談会の様子レポート、などが記載されている。
http://smilingshare.ti-da.net/
・TBS NEWS 住まい・仕事・子育ても、シングルマザーを、支える「家」:シェアハウスへ入居する、あるシングルマザーの密着動画。
http://news.tbs.co.jp/sp/newseye/tbs_newseye3102380.html
◯リサーチクエスチョン
これまではシェアハウスを利用しているのは主に若者であったが、近年、シングルペアレントや高齢者をターゲットにした新しいシェアハウスが増え始め、多様化している。そこで、今回はシングルペアレント向けのシェアハウスに焦点を絞り、不動産のHPやサイト・実際に入居している人々へのインタビューやブログなどで、どのような取り組みが行われているのか・実際の生活の様子・利点・問題点などを調べ、新たなシェアハウスの現状や今後の可能性を明らかにしたい。
◯論文
・秋山怜史 2016「インタビュー 仕事と子育ての両立を助けるペアレンティングホーム シングルマザー向けシェアハウスで社会と人生に新しい選択肢を」ハウジング・トリビューン 30-32
・菅谷圭祐 2016「シェアハウスの時代の総括と今後の展望(学生運動特集、20〜40代からの提案)」 情況、第四期:変革のための総合誌 5(2) 137~146
・猪熊純 2015「住まいにおける多様性と共存:シェアハウスの現場から(特集 共存をデザインする:多様性を認めあう社会のマーケティング)」マーケティング・リサーチャー 128 30-33
・梨元勇俊 2014「入居者増加のシェアハウスはなぜ人気なのか」経済界 49(22) 50-51
・田中康雅 後藤春彦 山村崇 2014「民間事業者によるひとり親家庭を対象としたシェアハウスの運営実態と社会的役割」Journal of Planning Institute of Japan 49(3)、975₋980
・大友景裕 2013「住まいと暮らし(31)高齢者と若者のシェアハウス実現に向けて」コミュニティ(150)74‐76
・中川みな 斎尾直子 2013「シェアハウスの居住実態とシェア居住の多様性に関する研究」日本建築学会関東支部研究報告集 83(11)313₋316
・葛西リサ 室﨑千重 澤井浩臣 近藤民代 「ひとり親世帯と単身高齢者のシェア居住の可能性」http://www.edu.kobe-u.ac.jp/eng-arch-sled/dat/research/kondo-kasai-sawai-murosaki/1.pdf
◯書籍
・日本住宅総合センター、吉田修平 2015『定期借家を活用した新たな居住形態に関する調査:定期借家制度及び活用事例としてのシェアハウスの分析』日本住宅総合センター
・中川寛子 2015『解決!空き家問題』筑摩書房
・阿部珠恵、茂原奈央美 2012『シェアハウス:わたしたちが他人と住む理由』辰巳出版
〇URL
・オークハウス https://www.oakhouse.jp/?utm_source=yahoo&utm_medium=cpc&utm_campaign=brand_pc
・ひつじ不動産 https://www.hituji.jp/
・ParentingHome http://parentinghome.net/
・SHARE PARADE http://sharepare.jp/