メディアで表現される女性像について
日常のあらゆる局面に深く浸透し、我々のものの見方や考え方、文化の形成に至るまで大きく影響を与えるメディアは、その時々の社会と合った女性像を反映してきたのだろうか。
ジェンダーは、生物学的な性別である「セックス」に対して、「社会的・文化的に作られる性別」や「社会的、文化的に形成される男女の差異」と定義される1990年代以降、性別や性差についての認識をも意味するようになった
ジェンダー分析とはそのような社内が内包するパターンを特定し、そこに内在する差別や抑圧の問題を捉え、そういった問題のない社会を構想すること
メディア 女性像→ 75件
◎→自分の意見・感想
〈書籍〉
岩見照代、2008、『ヒロインたちの百年――文学・メディア・社会における女性像の変容――』学芸書林
女性の社会的立場の歴史的な移り変わり
新しい女の主張…雑誌、文学 ⇔ 新しい女の批判(新聞)、週刊誌に言動を糾弾される(マスメディア)
◎メディアが女性像を作り出したという内容ではなかった
〈論文〉
メディア 女性像 75件
石田万実、2014、「コント番組における女性像の変遷:妻・母の表象を事例に」『メディア学 : 文化とコミュニケーション / 同志社大学大学院メディア学研究会 編 (29) 43-60 』
黄 馨儀、2008、「テレビにおける女性イメージの考察――NHK朝の連続テレビ小説から見た日本の女性像」『メディア学 / 同志社大学大学院メディア学研究会 編 (23) 104-154 』
・研究方法
テクスト分析の機能を果せる内容分析
ベレルソンの内容分析の用途のひとつ「伝達内容と現実の照合」に当てはまる(ドラマの中の女性イメージの記録、変化をつかもうとする目的)
先行研究:いくつかのドラマを比較し、男性と女性の登場する割合を分析=量的分析が主
本研究:ドラマのテクスト分析、ジェンダー視点から登場人物を分析し、キャラクター分析に主眼をおく=質的分析を主に、量的分析を補助に使う
範囲設定
47年間(2008/10まで)の79部作品から客観的なデータを採り上げ、分析対象をピックアップする方法で研究分析対象を抑える。
1.ビデオ化(入手可能性)、2.海外放送、輸出(代表性)
3.視聴率(代表性) 4.記事検索ヒット件数(比較・参考用) 5.著者、脚本とプロデューサーの男女総計リスト(参考用) 6.年代別・物語背景別(統計参考)
ドラマの研究手法
物語論のテレビ分析応用
プロップの物語論
朝ドラは成長物語のような「男性的物語」の特徴を含んでいる
セリフ分析、登場人物の価値構造分析
ストーリー分析
話数区切りの物語概要→相関図→場所の転換→詳しい物語概要(要点)
テクスト分析
聞き取りで記録
結果
・テクスト分析からの考察
・登場人物の価値構造を図式にして比較(性、年齢
出身、社会的立場、職業、仕事の動機、仕事の見返り、女性としてのタイプ、婚姻状態、身体的差異(体型、髪、顔立ち)、服装、配慮の仕方、人間関係)と項目に分け並べることで個人の特徴を掴む
・夫婦関係の比較(年齢差、外見、夫婦仲の描き方)
まとめ
80年代制作→家父長制の下に縛られている。「頼もしい母」「耐える女」というステレオタイプが作られ、人気を集めていた。
90年代→「公空間」に進出する女性像(⇔「私空間」…自営業か家業)だが、私的空間とは並行出来ないものとして捉えられている傾向がある
・女性の自立は私的空間から公的空間に進出するようになっても、役割は変わらず、家庭を中心に仕事か家庭のどちらかを選ばざるを得ない立場として設定されている。この設定は日本社会にある男女の労働情勢を語り、育児休暇取得率の差とも関連がある。「男は外、女は内」という根本的な意識に影響されている。
しかし、70年代に対し、2002年の世論調査によると、「男は外、妻は家庭」を賛成しない人は47%に達し、70年代の20.4%の2倍以上となっている。このような意識が顕著になってきた21世紀の女性の姿は、朝ドラの主人公のイメージと反し、共感を得ずらくなっている可能性がある。
◎研究対象の絞り方が参考になった。
登場人物の価値構造分析という言葉が多用されていた。性別出身だけでなく、性格や人間関係を言語化してほかの登場人物と比べた差異によって、価値観やその人の像を決めるやり方は面白いと思った。しかし、タイプを書き出すのは調査者の主観になってしまう上に比較する項目も調査者の勝手になってしまうので、結果の信頼度を挙げるための工夫は何等か必要だろうと思った。
杉本章吾、2016、『1980年代から2000年代の少女マンガにおける若年女性表象の表象文化論的研究』科研
目的:1980年代以降の少女マンガが、新たな若年女性表象を受容/排除していく中で、「少女」という概念を再構築/変容していく過程を明らかにする。
少女マンガ=「少女」概念を構築・規格化する文化装置
方法:①一次資料に掲載されたマンガ・記事・読者投稿などを網羅的にリストアップする
②析出した若年女性表象を、主に、1.ファッションと、2.性愛への態度を基準に分類。
1.ファッション=作中人物の趣味や文化的集団を可視化する視覚的記号としての意味合いを強く持っている→分類することで、どのようなタイプの若年女性として想定されているかがわかる
2.性愛への態度=「少女」概念から排除された「性愛」という要素がこの時代どのように表現されたのか/されなかったのか、価値づけられていったのか
合わせることで、いかなる若年女性表象が生成され、価値づけられていったかを明らかに
③目的のこと
分析…マンガの表現分析、マンガ史研究を基盤とした歴史分析、新資料の発掘や同時代状況の再検証などの同時代分析、雑誌の読者投稿欄に着目した受容分析
をくみあわせて、概念・表象が、生産・受容されていく諸相を明らかにする。
杉本章吾、2016、「『りぼん』における「コギャル」の受容と変容:藤井みほな「GALS!」を中心に」
『文藝言語研究. 文藝篇 = Studies in language and literature. Literature (66) 33-60 』
目的:90 年代を代表する新たな若年女性文化の潮流であると同時にモラルパニックの主体でもあった「コギャル」に着目し,この新たな若年女性像が「小学生」向け「少女マンガ誌」というメディアの条件のもと, いかなる屈曲を孕みながら表象されていったのか,藤井みほな「GALS ! 」 を中心に考察する。
コギャル:当時のメディアは、女子高生=コギャル=援助交際、という短絡的な等式のもとに、その過剰なセクシュアリティや粗暴な振る舞いを問題化していった。その一方で、コギャルは都市文化や消費文化のトレンドセッターとみなされ,その独自のコミュニケーション技法やファッションは――懐疑的なまなざしを孕みながらも――ときに長期低迷化する日本経済回復の手がかりとして,またときに混迷する社会状況を反映する鏡像として,幅広い社会層から注目を集めていった。
りぼんにおけるコギャル:
1995-99『ベイビイ★LOVE』
コギャルと世間のイメージ同じで否定的
「悪印象 →誤解の解消→恋愛感情の芽生え」という少女マンガに顕著な筋立てを物語に導入する契機として,「知性を欠いた享楽的な若年女性」という典型的な「コギャル」像が利用されている
1999‐2002『GALS ! 』
コギャルが主人公に据えられるとともに,その軽薄で享楽的なイメージや嗜好が前景化されている
将来への夢や未来への企図を持たず,刹那的な欲望の充足を第一に置く,典型的なコギャルとして造形
GALS!で描かれるコギャル:
・セクシュアリティ
コギャル的な意匠が顕揚されるのは,あくまで 「カワイイ」や「オシャレ」といった『りぼん』が読者に推奨する美学的文脈においてであり,過度なセクシュアリティに関しては,抑圧的な姿勢が貫かれている。
絵柄に関しても、男性からの性的なまなざしを排除するかのように,肉体性を欠いたフラットな身体表象がされている。
・りぼんに載っていることに関して
りぼんのテーマ=主人公の異性愛ロマンス=少女読者の作中人物への熱狂的な同一化を可能にするとともに,既存の支配的なジェンダー規範を反復/ 強化するものでもあった。
GALS!では恋愛が主軸に置かれていない 異性愛ロマンス<女性同士(コギャルたち)の連帯
全体を通して:
GALS!は低年層に対するコギャル文化のマニュアルになった
自己の欲動に忠実な行為主体としてを主人公を措定する一方,その恋人に内発的な動機を与えず,彼女の援助者に据え置くことで,男性=行為主体/女性=援助者という,支配的なジェンダー・ロールを反転させていった。それに加え,テクストは,「主人公の異性愛ロマンス」という形式を 採用しつつ,その内実を空無化することで,男性からの庇護や承認を通じて少女が居場所を発見/回復するという,『りぼん』を枠づける家父長的な物語論理を後景へと退けていった
◎メディアでつくられた既存のイメージを否定・払拭するような形
これまでのりぼんの路線(かわいい、異性愛ロマンス)を覆すものでもあった→読者の需要の変化→読者投票で女の子が上位5人を占める(女の子の生き様がテーマ)
徹底的なセクシュアリティを排除=コギャルのなかの優劣を生む
パッケージングされたコギャル像
田中洋美、高馬京子、2020、「現代日本のメディアにおけるジェンダー表象:女性誌「an・an」における女性像の変遷」『明治大学人文科学研究紀要 87 2-45, 2020-03』
女性雑誌を選ぶ理由→ジェンダー表象の研究において一定の研究蓄積があること、紙媒体で所蔵している図書館等が国内に複数あり、データ収集が十分に可能であること
なぜanan?→1.1970年に創刊され、現代日本の女性誌の原型として位置づけられている(社会的影響力あり) 2.様々な女性像を作り、提案し続け、その時代のモードを作ってきた(理想とされる女性像の提示)
3.一定の社会的影響があると考えられる 4.創刊から定期的に刊行されている 40-50年の変遷を捉えられる
古いものは図書館で、最近のものはインターネット上で収集
・ジェンダー表象とその研究についてのまとめ・見解
表象…意味生産の実践
文化が流通するとき、しばしば広告というメディアが使われる、キャッチコピーや写真などの言語テクストや視覚イメージが重要な役割を担う、それを見る個人のアイデンティティ形成に作用する
ジェンダー表象の特徴…1.性別や性に関する差異化(性別二元論)、権力関係が男女間、+異性愛者、トランスジェンダーの間、男性内あるいは女性内でも生じうる 2.規範的な文化コードが埋め込まれている 男性像、女性像の構成において、女らしさ男らしさの理想や価値観が強化され、社会におけるジェンダーの抑圧が再生産されてきた (3.制作側、消費側の想定が、男性優位。)
「自由な」女性像が自由さを提示すると同時に社会/雑誌による強制をも表すという両義性。女性が自由になって自らの意思で性的に身体を露出するなど解放するに至ると言った現実を映しているor肌をみせ、性的であることを女性に強いる男性中心の社会による要請なのか
対等に映されない(例:女性アスリート「かわいくてきれい」)
近年は男性の自己セクシュアル化が強まっている(異性愛的な「女の視線」による男性身体の性化)
メディア表象におけるセクシュアル化のジェンダー分析にとって重要な知見…セクシュアル化の私から公へのひろがり、ポルノ的なメディア表象におけるジェンダーの違い
性的コンテンツのために作られていないもの
戦後〜1960..女性像 性的<かわいさ
高度成長期以降…「セックス」が重要なテーマとなる。性的な意味合いを含む視覚イメージも構成されて言った。(背景:雑誌サイズの大判化
広告の写真化・カラー化、広告の肥大化→視覚イメージのあり方を変えた)
・ananにおける「かわいい」がどのような意味合いを持って各時代女性の欲望を反映・構築する理想的女性像形成に使われてきたか
①anan創刊前後のフランスの第二波フェミニズムに影響を受けたかっこいい女性像
女性の感性である「理屈が皆無」のカワイイ/カワイクナイ基準が、anan創刊号からファッションのin/outといった判断基準のひとつになっている
⇔理想像:いい女、かっこいい女、子供っぽさや未熟さとは無縁のカッコ良さ
②1980年代以降の『ELLE JAPON』から分離して独立したananにおける無理のない自然体の可愛らしさ
フランス的な感覚とは違う「かわいい」を使うように 自然体=日本的に、かわいい
1982年から女性の魅力を表す価値基準として肯定的、かつ否定的に「かわいい」が特集記事のタイトルに使われるようになる
かっこいいいい女、無理にいい女風にすることの批判という意味、自然体という意味での可愛さを提案している。また、一時的な通過儀礼であり、目指すべきモデルとしてはいい女が提示されている(可愛い=卒業すべきもの)
③「かわいい」と「セクシー」などの対概念の提示
④2000年代の大人かわいい
かわいいが、老けないイメージ、いつまでも若さを保つへと変化
2006、かわいいが成熟・大人と強く結び付けられる
⑤かわいいからの卒業し、色気へ(2013)
幼さを前提としたかわいらしさをベースにしたセクシーさの混在
まとめ
反意語…かっこいい、未熟 卒業するという意味で色気、素敵、美しい
自然→無理のなさ→成熟→若々しさ
元来の可愛いという言葉が持つ意味「未熟さ」「幼さ」「従順さ」といった特徴こそが読者の欲望を反映しつつも、それを具現化し、読者に追従させようと、社会的・文化的・経済的に要請された規範的女性像の特徴
・表紙における男女のセクシュアル化
量的分析で全体の傾向を把握→質的分析
(アメリカの社会学者ハットンとトラウトナーが作りあげたセクシュアル化尺度で強度を測り分類)
女性のセクシュアル化はずっと増加(2000年代に入り大幅に増加)
男性のセクシュアル化は一貫して非セクシュアルが8割を占める
《女性》
成熟・自立した女性像から幼児的・依存的な女性像へ
非ポルノ的セクシュアル化からポルノ的セクシュアル化への移行
1990年代、非ポルノ的な身体像であり、強さを秘めた女性像
2010年代、ポルノ的な表象が増える、未熟さ
《男性》
2000年代以降、痩身化、若年化、女性的
→セクシュアル化における男女差が部分的に縮まっている
◎研究方法が詳しく明確にかかれていてわかりやすかった
「かわいい」が意味を変えながらも一貫して使われてきたところが興味深い
モノ化⇔パーソナリティーについての言及 雑誌は視覚の情報しかないから、個人が出てきにくく、性を押し出したりモノとして扱ってしまいやすい構造にある
野村和、2020、「昭和初期ラジオによる都市上層・新中間層の母親像形成に関する研究」『武蔵野短期大学研究紀要第34輯 1 1-7 』
ラジオが当時の女性向けメディアとして一定の割合を担っていた ターゲット:都市上層及び新中間層の若い母親
方法:量的分析(タイトル)を土台としながら、「育児」関連の番組に着目し、資料に基づいて放送内容を質的に分析
番組内容:教育 乳幼児の子育て~中等教育 母親が教育者としての役割
◎社会の認識・状況があり、視聴者層の需要が生まれ、母親=よき教育者という内容となる 個々でのラジオの役割:教育・イメージの促進・押しつけの一面も?
深澤純子、1997、「メディア社会の女性イメージ(メディアと女性の人権)—―(メディアが描く女性層)」『かながわ女性ジャーナル(15) 41-52 』
目的:現在のマスメディアにおいて女性のビジュアル・イメージがどう表現されているか、そこにはどのようなジェンダー・イデオロギーが織り込まれているのか
ワークショップ
コラージュ(雑誌のビジュアル・イメージを一枚の模造紙に表現する)
→ビジュアル化によってジェンダー関係を明確にし、参加者の討論を経て認識の共有化を図る
材料:女性誌、男性誌、一般誌、(対象も独身女性、主婦、サラリーマン、スポーツ、エンターテイメント、トレンド誌、コミック誌)…登場人物はテレビや新聞などほかのメディアでも日常的に接するものが多く、結果として現在の日本のメディア社会におけるビジュアル・イメージの特徴が現れる
作業:
1.タイトル、発行周期(月刊、週刊等)、想定されている読者の性別、年代、属性、ライフスタイル、趣味や専門を明らかにする(送り手の存在と意図を意識化するため)
2.全ページをばらばらにし、切り抜く雑誌の偏りがないように作業グループ全員の分を中央で混ぜる
3.手に取ったページで目に付いた「人間」のイメージ、写真、イラスト、漫画を手で切り抜く。(切り抜く時のは個人的な好き嫌いによる選別意識に関係なく手当り次第行う…意図的な偏りをなくし、ポルノ的なものを無意識に排除することを防ぐため)
5.男女に分け、年代ごとのグループにわける
6.右側から若い順に女性のイメージを、左側から若い順に男性のイメージを隙間なく貼りこみ、両者が出会ったところでかんせい
7.イメージの特徴の違いを協議しながら調べる
結果:
男女→1:2 女性のコマが多い、一コマの図像が大きい
男性は白黒が多い 女性はカラフルだが、肌を出したものが多いため肌色が目につく
例外)政治・経済社会面の大きな事件を中心に報道する週刊誌には、男性のイメージ数が上回っている
80-90%が10-20代の若い女性(年代もターゲットの性別も関係がない)
ビジュアルイメージでは働く女性の姿は驚くほど少ない、家事・育児をしている女性の姿も多く見られない
男性は年齢層幅広い、職業や立場も幅広い(芸能人、タレントは比較的少ない) 個性やその人らしさが失われておらず、状況や表情が自然(カメラ側がその人の場所まで訪れている?)
⇔
女性 顔の造形やスタイル、露出、性的な場面を連想させるように強調されている
アイデンティティー、個性<外見、肉体、性
無背景=「モノ化」(商品化)
見られる女性、のイメージに伴い、内容も女性の外見をどう作り上げるかに結びつくものが圧倒的に優位
女性は見られる存在であることが繰り返し強調
イメージ群から、女性は外見のことしか念頭になく、どういう職業・生き方をしたいか、社会情勢はほかの世界に関心を持っていないかのよう。また他の場(政治など)で現在女性が果たしている貢献や、影響力もビジュアルイメージに反映されてこない。
女性のビジュアルイメージ=「性のイメージとしての商品化」、「ジェンダー・イメージの商品化」(容姿・外見)
現実の女性は、外見を強調し、中身の空洞化したビジュアル・イメージの作り出す女性のジェンダーによって疎外され、さらにそれらを作り出し、送り出すシステムから疎外されるという二重の疎外を受けている
◎調査の仕方が正確といえない。雑誌の選び方に関しての情報が少なく信用に値しない。
楊雪、2013、「日本のテレビドラマにおける女性像とジェンダー観:現代の働く女性主人公を中心に」『メディア学:文化とコミュニケーション / 同志社大学大学院メディア学研究会 編 (28) 87-100 』
問題意識:社会の鑑と思われているテレビドラマでは、女性がどのように描かれているのか、そこからどのような日本社会のジェンダー観がみえてくるのか
メディアの描く女性像には、その時代のその社会が期待する、女性の姿や生き方や、あるいは「女らしさ」といった、女性についての規範が表現されている。サンクションつきで表現される逸脱ケースも含めて、メディアは、「あるべき」「あるはずの」女性像を提示する(井上理恵、2009、「ドラマ解読――映画・テレビ・演劇批評」)
先行研究を読み込み、1953年のテレビ本放送開始から2000年代に入るまでのテレビドラマにおける女性の描かれ方(生き方)、意識を簡潔にまとめている
研究対象:
放送期間…2003/1/1から、2012/12/31
放送局…フジテレビジョン、日本テレビ放送網、テレビ朝日、TBSテレビ(4大民放ネットワーク)
放送枠…21時と、22時に放送が始まる固定されたテレビドラマ枠で放送されたテレビドラマ
他…5回以上である連続ドラマ、時代背景を現代とするもの
研究方法:
傾向分析…対象となるテレビドラマの情報を整理し、主人公の性別を確認。女性主人公の職業、家庭状況などのデータを統計し、分析対象となるテレビドラマの女性像やジェンダー観に関する全体的な傾向を見る
比較分析…以上の傾向や結果を、70-90年代までのテレビドラマに描かれた女性像やジェンダー観と比較し時代の変遷を見る。社会調査のデータを用いて、テレビドラマが描く女性の生き方、働き方を、日本社会の女性労働、意識の実態と比較し、関係性を見る
1.主人公の男女比
1977-1994…男女 7:3(主要人物に限った場合も同様)
やや男性が多いが年によって50%を超えた 全体で55.1%と44.9%→均等になってきている
一貫して増加× 年によって増減
枠によって違い 平均視聴率が20%を超える18作のうち、女性主人公は4作品…男性中心のものが人気
2.女性主人公
70-90年代は20代が多い。現実とかけはなれた「ドラマ」の世界の年齢構成となっている
20代が1番多く、50歳以上の女性主人公は見られない。年齢構成に差がある 若さ、は女性の魅力点
2009年以降のテレビドラマには30代後半から40代の女性主人公が増えてきた→90年代に活躍していた20代の女優が、30.40代になったにも関わらず、テレビドラマの主役として活躍している
2-2 婚姻、子供
独身者が圧倒的。恋愛は重要なテーマであり、主軸でなくてもプロットの展開やキャラクター造りを引きたて、視聴者の興味を引きつける効果が考えられる
既婚女性が主人公…ホームドラマ(家族関係・家庭問題)より、比較的非日常的なものや家族の崩壊など激しい問題や危機を描くものが多い。また、離婚女性が主人公とするドラマは、シングルマザーと子供の親子関係を描く作品が多く見られる。
タイトルに「母」関連ワード…9作 (「父」は7作)
仕事に励む母親の姿や、「母らしさ」とギャップを描いた作品があり、「頼もしい母」と「耐える女」的な人物が少ない。
70-90年代のテレビドラマ分析で見られた「家事へ参加し始めた男たち」と「男の仕事に進出する女たち」という傾向がみられる
3-1.就業状況
殆どは有職者 労働力率75%(生産年齢女性の労働力率の63%を上回っている)
現実は、働く女性の半数は非正規雇用だが、テレビドラマの非正規雇用の割合は7%未満…より理想的な女性就業状況を提示+独身=仕事と恋愛のジレンマが多く描かれる
3-2.職業
1位…刑事(警察官) 2位…マスコミ関係 3位…教師
比較的社会地位、収入の高い職業+現実では女性の割合が低い
◎数え上げるタイプの分析も面白いなと思った
先に年齢のギャップが無くなったのに、職業について現実と大きく差が開いているのが興味深かったが、ドラマである以上なにかのストーリー(視聴者をたくさん獲得できるような内容)にしなければいけないため、必然であるようにも感じた。視聴率と比較して分析したら見ている人たちの価値観(需要)についてしれて、新たな発見が出てきたのではないかと思った。