SNSと流行の関係
問題意識
近年TwitterやInstagram、YouTubeなど様々なSNSの利用率が増加しており、ほとんど人が毎日何かしらのSNSを利用している。そんな中でSNSがきっかけで流行ったものもたくさんある。そこでSNSきっかけで流行したものにはどのような傾向があるのか、どのようなプロセスで人々に知られていくのか明らかにしていきたい。
基礎概念
「インフルエンサー」
<背景>
・ウェブが登場したことにより、ホームページ、オンライン・コミュニティ、ブログ、SNSといった新たなコミュニケーションツールが生まれると、消費者から企業、消費者から別の消費者へと情報を発信することが容易になった。つまり、多対多の双方向コミュニケーションが可能になった(Hoffman and Novak 1996)
・こうしたなか、消費者のなかで他者より多くのカテゴリー知識やブランド知識を持ち、情報を頻繁に発信し、他者に影響を与えるキーパーソンを発見することに注目が集まっている(山本晶 2008)
<定義>
・影響の規模に着目
他者に影響を与えるは”influenctial"あるいは"infulencer"と呼ばれ、これまで研究が蓄積されてきた。古典的な研究では4人以上の友人に直接的に影響を及ぼした消費者を”influential"とみなしている(Merton 1957)。また並外れた数の知人に影響を与える少数の個人を”influential"と定義する見方もある(Watts and Dodds 2007)。
・影響を及ぼすクチコミ発信者の属性に着目
”influencer”という語をオピニオン・リーダーとして同義語として用い、「ある分野において専門知識を持っていると見なされている人」と定義(Eliashberg and Shugan 1997)。このインフルエンサーの定義では、影響規模では無く影響の源泉であるクチコミ発信者の資質とクチコミ内容の質に注目している(山本晶 2014)
基礎データ(量的)
・SNSでの情報発信経験(年代別)
総務省:平成27年度 情報通信白書 第2部ICTが拓く未来社会 第2節ソーシャルメディアの普及がもたらす変化 (4)SNSの発達での情報発信経験
出典:総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc242240.html
・SNSでの情報拡散経験(年代別)
総務省:平成27年度 情報通信白書 第2部ICTが拓く未来社会 第2節ソーシャルメディアの普及がもたらす変化 (5)SNSの拡散状況 ア SNSでの情報拡散経験
出典:総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
・情報拡散の基準
総務省:平成27年度 情報通信白書 第2部ICTが拓く未来社会 第2節ソーシャルメディアの普及がもたらす変化 (5)SNSの拡散状況 イ 情報拡散の基準
出典:総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc242250.html
基礎データ(質的)
・PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)
小坂大魔王扮する謎の千葉県出身シンガーソングライターピコ太郎が2016年8月25日に自身のyoutubeチャンネルに投稿した楽曲。この作品はジャスティンビーバーが自信のTwitterで「お気に入りの動画」とツイートしたことをきっかけに世界的に流行した。アメリカのニュース雑誌『TIME』https://time.com/4508190/pen-pineapple-apple-pen-song/やニュース専門放送『CNN』https://edition.cnn.com/2016/09/27/asia/pineapple-pen-man-dances/、イギリスの公共放送局『BBC』How a 'Pen-Pineapple-Apple-Pen' earworm took over the internet - BBC Newsも「PPAP」の流行や中毒性について報じている。
またタレントの木下優樹菜さんやyoutuberのはじめしゃちょーといった多くの著名人が自信のSNS上でこのPPAPの踊ってみた動画を投稿し、より注目を集めた。現在この「PPAP」の元動画は再生回数1.4億回を超えている。
・三代目 J Soul Brothersが出演したポッキーのシェアハピのCM
2015、2016年にグリコの大人気お菓子ポッキーのCMに出演したのが「三代目 J Soul Brothers 」。彼らの「Share The Love」という楽曲が起用され、特徴的なダンスを披露したことで話題となった。女子高生などがコピーダンス動画をSNSに投稿したことから爆発的人気を生み出し、その年の流行となった。
年表
各SNSごとの歴史
<Facebook>
2004年 Facebook設立
ハーバード大学の学生だったザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)が、同大学の学生同士のインターネットコミュニティとしてFacebookを設立したのが起源。その後、他の大学間に広がる。有限会社としてFacebook社登録
2006年 一般開放され、世界中の誰もが利用できるようになった。
2008年 日本語化の推進
ボランティア利用者によって日本語化が進められていたが、2008年にマーク・ザッカーバーグが来日したのを機に一般公開された。
2008年 FacebookのAPIをオープンソース化
2009年 世界最大のSNSに(MySpaceが先行していた)
2010年 日本支社設立
2011年 文字数制限解除
2009年までは最大文字数が160文字までであったが、その後逐次拡大し、2011年には6万字となり事実上制限がなくなった。
世界最大の利用者をもつSNSである。日本ではLINEが最大で2位になっている。
<Twitter>
2006年 Twitterを発表
2006年にOdeo社がTwitterを発表した。Odeo社はBloggerの創業者であるEvan Williamsの起こしたベンチャー企業。Twitterの発表後Twitter社と改称、Odeoは事業名となる。
2008年 Twitter日本上陸
Twitter社は、株式会社デジタルガレージ(日本)と資本・業務提携をして、日本にTwitter.jpを開設。日本語版が利用可能
2010年 スマートフォンアプリ無料配布
Twitter for BlackBerry、Twitter for Android、Twitter for Androidなど。現在では携帯電話(フィーチャーフォン)では利用できなくなった。
2010年頃 日本版TwitterでRT(リツイート)可能になった
2010年頃 日本での急成長
パリのアナリスト・グループSemiocastによれば、2010年6月の投稿数は、米国が1位で25%、日本が2位で18%だったという。
米国のネットレイティングス社によれば、2010年6月での実利用者数は日本が米国を抜いたという。
2011年の東日本大震災以降、急速に増加し、2011年10月ニールセン調査では1,400万人に達したといわれている。
単に利用度が高いだけでなく、日本の多機能志向がグループ機能を強化したともいわれている。
2015年 ダイレクトメッセージの文字制限解除
ツイートはフォローの閲覧を目的とした投稿、ダイレクトメッセージとは相手を特定した電子メール。ダイレクトメッセージには140字制限などや多様な制限をを解除・緩和した。
2017年 一部言語を除き、Twitterの文字数制限を、140文字→280文字へ
<Instagram>
2010年 AppStoreにてリリース
Instagramは、ケヴィン・シストロムとマイク・クリーガーにより開発された写真共有に特化したSNS。
同年末(2が月後)に日本語対応
2011年 ハッシュタグ機能導入。写真探しが容易に
2012年 Android版リリース
2012年 Facebook社により買収される。Instagram事業は独立して運営される。
2012年 PC版リリース。閲覧やコメントのやりとりが容易に
2013年 ビデオ機能搭載
2013年 ダイレクト機能追加。特定の個人やグループと共有
2015年 画像編集アプリ「Layout」iOS版リリース
2016年 日本でもInstagramが浸透
2016年 インスタストーリー機能追加
2017年 複数投稿機能。複数の写真・動画を1投稿で同時にシェアできる
2017年 Instagramショッピングが日本にも導入
2017年 「インスタ映え」が流行語大賞に
2018年 Instagramの月刊アクティブユーザー数が10億人を突破
2018年 アクションボタン追加
2018年 ストーリーズ機能にもショッピング機能が追加
2020年 新機能「リール」をリリース
<LINE>
1999年 李海珍らが韓国法人NAVER設立
2001年 NAVERの日本法人子会社ハンゲームジャパン設立
2003年 NAVER、ハンゲームジャパンを吸収してNHNに。日本支社NHN Japanを設立
2010年 ポータルサイト運営会社ライブドアを完全子会社化
2011年 李海珍がLINEを発案。NHN Japanで開発し、同年LINEをリリース
2012年 キュレーションサービス「NEVERまとめ」サービス開始
2013年 NAVER子会社として日本法人LINE株式会社設立、LINE事業を行う。
2016年 LINE、東京・ニューヨークで同時上場
2017年、国内最大の利用者をもつSNSである。日本の利用者ニーズに合致しており、サービス開始後、急速に利用者が増大した。
<YouTube>
2005年 チャド・ハーリー、スティーブ・チェン、ジョード・カリム、YouTube社設立、サービス開始
2006年 Google社による買収。YouTubeブランドは名称維持。日本ではGoogle Japan社が運営
2006年 日本の著作権団体が違法動画の削除要請
2007年 日本語対応
2011年 YouTube Live(動画のライブストリーミングサービス)開始
2013年 スマートフォンでのオフライン再生
<参考>「経営と情報に関する教材と意見」
http://www.kogures.com/hitoshi/history/blog/index.html
<SNS関連で流行ったモノ>
2009年 ・~なう
2010年
2011年
2012年
2013年 ・マカンコウサッポウ
2014年 ・実況ツイート(番組)
2015年 ・このドレス何色に見える?
2016年 ・PPAP ・聖地巡礼
2017年 ・インスタ映え ・熱盛 ・#○○に使っていいよ
・#頭のいい人と悪い人の違い
2018年 ・チーズハットグ ・タピオカ ・TikTok
・(大迫)半端ないって ・#Metoo ・VTuber
・「カメラを止めるな」
2019年 ・闇営業(○○動きます)・あなたの番です
・じゃがアリゴ ・タピオカ ・#KuToo
2020年 ・フルーツサンド ・バナナジュース ・トゥンカロン
・ダルゴナコーヒー ・台湾スイーツ ・ふわちゃん
・BLM ・香水 ・「100日後に死ぬワニ」
・#うちで過ごそう
調査計画
<調査1>
調査対象:各年代(10代、20代、30代、40代、50代、60代以上)の男女
調査方法:アンケート調査
質問内容:・最近の流行現象、流行語を複数用意しそれぞれの言葉を知っているか、またどこでその言葉を知ったのかを答えてもらう。
この調査から分かること:年代別に流行していることがどのような場所で知られているのかがわかり、傾向をつかむことが出来る。
<調査2>
調査対象:株式会社トリドリ(インフルエンサーマーケティング事業)
調査方法:インタビュー調査
質問内容:・主な取り組みの内容
・インフルエンサーマーケティングにおける大切なこと
・SNSごとの特性
・最近流行傾向
この調査から分かること:実際にインフルエンサーをサポートしている側からの情報の効果的な発進方法やSNSの特性。
また最近の流行傾向について。
研究者
・Duncan J Watts
アメリカ合衆国の社会学者、ペンシルベニア大学教授(2020年)
ニューサウスウェールズ大学の物理学科卒業後、コーネル大学で物理学博士号取得。物理学から社会学に転じ、コロンビア大学教授、ヤフー・リサーチ主任研究員を経て、2012年マイクロソフトリサーチに就職、主任研究員へ。
専門は「スモールワールド現象」などのソーシャルネットワーク研究。
主な著書:・『Small World : The Dynamics of Networks between Order and randomness』1999年
翻訳『スモールワールド・ネットワークの構造とダイナミクス』 2006年
・『Every thing Is Obvious : Once you know the Answer』2004年
翻訳『偶然の科学』2012年
文献リスト
<論文>
(インターネット上で閲覧可能)
・山下玲子 三浦麻子 2018年 『おもしろツイートはいかにして広まったか:事例研究による「じわる」プロセスの解明』
「メディア·情報·コミュニケーション研究」4巻3号 P1~18
検索ワード:Twitter
・山本晶 2014年 『インターネット上の行動履歴データとインフルエンサー』「マーケティングジャーナル」 34巻2号P34~46
検索ワード: インフルエンサー
・遠藤薫 2009年 『インターネットと流行現象 : <熱狂>はどのように生まれるか』 「日本情報経営学会誌」 30巻1号P3~12
(インターネット上で閲覧不可)
井上俊 2019年『Twitterにおける情報拡散の要因分析 ;インフルエンサーか?投稿内容か』「財政経済理論論文集」 P411~424
検索ワード:インフルエンサー、Twitter
・山本晶 2012年 『ソーシャルメディア時代におけるクチコミ行動とインフルエンサー』「マーケティング・リサーチャー」117巻 P32~37
検索ワード:インフルエンサー
・
<書籍>
・中島純一 2013年『メディアと流行の心』 金子書房