日本の動物には様々な問題点がある。例えば甲府動物園の象、テルの単独飼育についてElephants in japan(注1)は「2000年に仲間のミミと死別してから20年の間、一匹でこのコンクリート製の施設に暮らしている。」「テルは体を左右に揺らし続けるストレス行動を表している。」(訳は筆者による)と指摘している。世界標準での動物のエンリッチメントを満たした動物園は日本国内にはほとんどないが、なぜ多くの動物園が存在し続けるのか。
注1 Elephants in Japanは、はなこを追悼して、はなこの生涯をけっして忘れるべきではないという考えのもと立ち上げられたグループ。日本で悪条件下で飼育されている象を守るため、情報の拡散、署名、募金活動を行っている。
地球環境の悪化による生態系への危機意識や動物愛護の精神の高まりにより、日本では動物園施設の改善を求める声が広がりつつある 。朝日新聞で2020年に行われたデジタルアンケートではJAZAが掲げる動物園の4つの役割のうちどれが最も重要かという質問について「教育・環境教育」を選択する人(1504人)が最も多く、「レクリエーション」を選択する人(85人)の約19倍の数となっている。一方でそうした効果を意図した利用者は非常に少ないという現実もある(おびひろ動物園によるアンケート調査)。
JAZA加盟90園…公立72園、民営17園、その他1園(第3セクター方式)
公立72園…国立1園(海の中道海浜公園動物の森)、都道府県立9園、市区町村立62園
「環境エンリッチメント」…「動物のより良い暮らしのために飼育環境を豊かにする諸々の工夫」(佐渡友2022)
「JAZAコレクションプラン(JCP)」…飼育繁殖がうまくいき、十分な飼育スペースの確保が難しくなってきたことを背景に定められた。優先的に飼育すべき動物種を順序づけて、4つに分類。
管理種…優先的に繁殖していく動物
登録種…優先的に繁殖するわけではないが、血統登録をして個体群の状況や個体数の推移を意識的に把握しておく必要がある動物
維持種…今後、安定的に繁殖していける望みはないが、個体数を把握しておく必要はある
調査種…もう数頭しか国内にいなくなった動物や、まだ累代繁殖が可能だが世界的には生息数が減りつつある動物など(岐路に立つ「動物園大国」)
「域内保全」…「動物園の外、その動物本来の生息地の環境を守りながら個体数の維持、増加を目指す活動 」(岐路に立つ「動物園大国」)
「域外保全」…「動物園の中で繁殖することで動物の数を増やしていく一連の取り組み 」(岐路に立つ「動物園大国」)
「行動展示」…「動物の行動を引き出せるなら積極的に人工物を使う」
「生態的展示」…「できるだけ人工物を避け、自然な雰囲気にこだわる」
明確な区分はされていないが、「動物にとっては使えない自然物よりは、使える人工物のほうがよほど役立ちます」という言葉にある通り、必ずしも生態的展示が良いというわけではなく、両方にメリット・デメリットがある。
「ランドスケープ・イマージョン」(landscape immersion)…「動物のいる場所だけでなく、来園者のいる場所も自然っぽく造ることで、動物の生息地に行ったかのような雰囲気にする手法」
「ズーストック計画」…「希少な野生動物が絶滅寸前にあることを踏まえ,動物園内で繁殖させることで,野生から希少種を導入することなしに保全しようという計画」(動物園学入門)
「WAZA」
1935年に設立した「世界動物園長連盟」を母体として発展し,2000年に現在の「世界動物園水族館協会(WAZA)」となった。World Association of Zoos and Aquariumsの略。WAZAに加盟するには、WAZAの定める動物福祉、倫理規定に同意することと、WAZAに加盟している二園からの推薦が必要条件となっている。2018年6月5日時点でWAZAに加盟している日本国内の園は以下の11園である。
(公社)日本動物園水族館協会,東京都恩賜上野動物園,東京都多摩動物公園, 横浜市緑の協会,大阪市天王寺動物園,名古屋市東山動物園,ふくしま海洋科学館, 千葉市動物公園、京都市動物園、こども動物自然公園、豊橋総合動植物公園(愛知県豊橋市、のんほいパーク)
方針として、動物園・水族館と専門家や大学との連携を推進し、加盟機関の高い水準を支援し、種の保全管理に貢献するとしている。
参考
京都市動物園、ニュース、WAZA(世界動物園水族館協会)への加盟について | ニュース | 京都市動物園 (city.kyoto.jp)(2023/03/30時点)
世界動物園水族館協会(WAZA) 動物と来園・来館者のふれあいガイドラインJP_WAZA-Guidelines-for-AVI-Council-approved-April-2020-final.pdf(2023/03/30時点)
WAZA Members Find a Zoo or Aquarium Find a WAZA Zoo or Aquarium - WAZA(2023/03/30時点)
「JAZA」
1939年11月17日に創設された公益社団法人(創設当初は社団法人)。1965年11月22日付で文部省から社団法人として認可されている。Japanese Association of Zoos and Aquariumsの略。事務所を東京都台東区に置く。2023年1月4日時点での正会員は動物園90、水族館51、の計141園。維持会員は86団体。正会員と維持会委員は定款で明確に区別されている。前者は動物園・水族館が対象であり、後者は個人および団体が対象である。令和4年5月26日時点ではこの法人の目的を「動物園、水族館事業の発展振興を図ることにより、文化の発展と科学技術の振興並びに自然環境の保護保全に貢献し、もって人と自然が共生する社会の実現に寄与すること」としている。会員になる場合は、「入会申込書を会長に提出し、理事会の承認を受け」、会費(正会員の場合は入会金も)を納入する必要がある。団体加入に当たって他に何らかの条件があるかどうかは不明。
2022年度通常総会での総裁の言葉には「現在、動物園ならびに水族館には、域外保全や域内保全の活動、そして動物の福祉を重要な課題にすることが求められております。このことは、2022年度の協会の主たる活動においても、動物福祉をその中心に位置づけ、今まで以上に動物たちの幸せや、人と動物との関係を議論していくことにもつながります。」とある。
平成26年5月には、環境省と公益社団法人日本動物園水族館協会の間で「生物多様性保全の推進に関する基本協定 」が締結された。
参考
日本動物園水族館協会 JAZA資料集 ディスクロージャー資料「公益社団法人日本動物園水族館協会定款」teikan20220601.pdf (jaza.jp)(2023/03/27時点)
日本動物園水族館協会 JAZA資料集 要綱・ガイドライン「COP10参加報告書」COP10_Booth_scene.pdf (jaza.jp)(2023/03/27時点)
京都市動物園 ニュース 「ツシマヤマネコの移動について」ツシマヤマネコの移動について | ニュース | 京都市動物園 (city.kyoto.jp) (2023/12/18時点)
「アニマルウェルフェア」
直訳すると「動物福祉」。
「アニマルウェルフェアはある状態のことを言い、それはあらゆる各動物に有効である。アニマルウェルフェアとはその動物が心地の良い感覚、とくに元気、愛情、安全と楽しみといった感覚、または痛みや空腹、恐れ、退屈、孤独、ストレスといった不快な感覚と自身の世界・生活とのつながりを経て、それらをどのように感じるかである。多くのこうした感覚は食事、環境、(怪我や病気を含む)身体的健康、(人間との交流を含む)社会的環境、また、種を全うすること、よい身体的・社会的体験をするために各動物の行動的モチベーションを満たす能力といったことによってうみ出される。」(訳は筆者による)
2016年8月から2019年月にかけて行われたWAZA加盟園の会議で、アニマルウェルフェアに関するゴールが定められた。さらに、アニマルウェルフェアを評価する7つのプロセスが提唱された。1.ウェルフェアモデル2.アニマルウェルフェア基準3.検証4.容量5.トレーニング6.規律上の過程7.異議を申し立てる手続き(訳は筆者による)
アニマルウェルフェアを評価するプロセスの詳細
詳細をクリックすると、評価するプロセスは7つではなく、8つになっている。7つの評価プロセスが提案された場はバルセロナの「第二回WAZAアニマルウェルフェア発展会議」であるが、8つの評価プロセスが提案された場はブエノスアイレス(2019年11月3日)であるためだと考えられる。8つのプロセスは
1. ウェルフェアモデル2.必要とされる基準3.WAZAの審査4.検証5.機構の容量6.トレーニング7.規律上の手続き8.意義を申し立てる手続き
となっており、違いとしては2.の名目「アニマルウェルフェア基準」が「必要とされる基準」となっていることと、3.の「審査」があるかどうかである。
1.ウェルフェアモデル
a.科学、または最善の知見に基づいたプロセスでなければならない。
b.WAZAのアニマルウェルフェア計画を遵守しなければならない。
c.アウトプットベースの評価に向かわなければならない。
2.必要とされる基準
a.アニマルウェルフェアのメンバーは基準または各機構に設置された一連の条件に対して評価される。
b.これらの基準または条件はアニマルウェルフェアの専門家らからのインプットにより、発展すべきである。
c.基準は持続的な発展のもとにあるべきで、最新の科学を利用して更新されなければならない。
一方、農林水産省のホームページでは「国際獣疫事務局(OIE)の勧告において、「アニマルウェルフェアとは、動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態」と定義されています。」という説明がある。農林水産省の立場からしてそれ以下は畜産動物におけるアニマルウェルフェアに言及している。また、他のサイトではアニマルウェルフェアの基本的な考え方として「人が動物を利用するということは許容します。」と解説している。しかしこちらでも日本の養鶏場における鶏の劣悪な生活環境に着目して解説がなされている。
市民ZOOネットワークという団体のホームページではという「環境エンリッチメント(environmental enrichment)とは、「動物福祉の立場から、飼育動物の“幸福な暮らし”を実現するための具体的な方策」のことを指します。という説明がある。また、エンリッチメントを構成する項目として以下の5つをあげている。
1.採食2.社会3.認知4.感覚。5.空間
参考
WAZA Priorities Animal Welfare Our Approach to Animal Welfare Our Approach to Animal Welfare - WAZA (2023/03/30時点)
WAZA Priorities Animal Welfare 2023 Animal Welfare Goal2023 Animal Welfare Goal - WAZA(2023/03/30時点)
NHKみんなでプラス 地球のミライアニマルウェルフェアとは 日本の現状と問題点 (nhk.or.jp)(2023/03/30時点)
農林水産省 畜産 アニマルウェルフェアについて アニマルウェルフェアについて:農林水産省 (maff.go.jp)(2023/03/30時点)
市民ZOOネットワーク 動物たちの豊かな暮らし エンリッチメント概論 動物園概論 エンリッチメントってなんだろう? (zoo-net.org) (2023/04/09時点)
JAZAに加盟していない動物園・水族館・動物関連施設の具体例
WEBサイト作成を行う彩人工房と、JAZAのHPの情報から判断すると、北海道だけで以下の40施設がある(北海道は、その広大で豊かな自然に暮らす動物とふれあえる公園や牧場が多数存在することから他の地域よりもとりわけ数が大きいと考えられる)。
AOAO SAPPORO(札幌大通水族館)、ノースサファリサッポロ、サンピアザ水族館、札幌市豊平川さけ科学館、アースドリーム角山農場、天狗山シマリス公園、千歳さけますの森 さけます情報館、えこりん村 みどりの牧場、第二有島だちょう牧場、のぼりべつクマ牧場、室蘭水族館、昭和新山熊牧場、ノーザンホースパーク、ハイジ牧場、いわみざわ公園 動物ふれあい広場、栗山公園 なかよし動物園、旭が丘公園小動物舎、四季彩の丘 アルパカ牧場、ファームズ千代田 ふれあい牧場、サホロリゾート ベア・マウンテン、北の大地の水族館、北きつね牧場、オホーツクとっかりセンター アザラシランド、アザラシシーパラダイス、オホーツクタワー、オホーツクエミューらんど、オホーツクシマリス公園、標津
サーモン科学館、別海町ふるさとの森動物館、くしろ水族館ぷくぷく、ノシャップ寒流水族館、稚内市動物ふれあいランド、ほろのベトナカイ観光牧場、美深町チョウザメ館、羊と雲の丘、ビバアルパカ牧場、西興部村 鹿牧場公園、函館市熱帯植物園(サルがいる)、函館公園動物施設
参考
北海道の動物園、水族館 北海道の動物園、水族館、熊牧場、観光牧場、動物公園、などを全てご案内! - 北海道の動物園・水族館 (zoo.hokkaido.jp) (2023/03/31時点)
JAZA 加盟園検索 加盟園館検索 | 動物園と水族館 (jaza.jp) (2023/03/31時点)
「適正施設ガイドライン」
JAZAの作成する動物を健全に飼育するために必要な施設の説明。2023/03/31時点で、54の動物の適正施設ガイドラインがある。象を例にとってみる。冒頭の「はじめに」では象の生態が解説されている。大きな項目としては「飼育環境」があり、その中に温度・湿度・換気、証明、音・振動、面積、構造・設備の5つの項目がある。さらに、音・振動を除く4つの項目では屋内、屋外それぞれにおいて推奨される環境が記されている。一方、ペンギンの適正施設ガイドラインを見ると、象のガイドラインで見られた「はじめに」という部分はない。一方、「飼育環境」の他に、「飼育設備」が大きな項目として分離して記されている。続けて「他のペンギン類との雑居飼育について」「飼育規模と繁殖計画」という大きな項目もあり、象よりも大きな項目が3つ多いということが分かる。項目数、項目の分類の仕方から、特にガイドラインに作成には一定の決まりなく、その動物の特色にあわせて柔軟に作成されていると考えられる。
課題
時代とともに博物館のあり方に変化が求められ、とは具体的に?動物園についてはどのように考えられているか
佐渡友さんはジェニー・グレイ氏の言葉にどのように疑問を呈しているのか
特殊な問題点はどのようなことなのか、どのように箇条書きにできるのか→「理論」
調査方法
動物園の分類→JAZAに加盟しておらず、地方公共団体に認識されていても十分な資金がない園、認識すらされていない園、または動物を利用した施設 に注目
動物の専門家とつながりを持っている園、持っていない園を比較して調査する
JAZAに対して、JAZAに加盟していない動物園・水族館への姿勢を尋ねる。
種の保全事業を担うことが必要と考えられる動物園・水族館の中で、現在JAZAに加盟していない園を対象に、その理由を尋ねる。
動物園についての規定が明確に定められた法令はない。関係すると考えられる法令は博物館法、都市公園法、動物愛護管理法、地方自治法の四つ。
・博物館法 (法令番号:昭和26年法律第285号、https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC1000000285)
第2,8~12,14、16、18,19、27~29条
第8条では、文部科学大臣が「博物館の設置及び運営上望ましい基準」(文部省告示第164号、イメージ印刷 (mext.go.jp) 、昭和48年11月30日告示)を公表することが定められている。しかし、時代とともに博物館のあり方に変化が求められ、平成10年、14年の会議では内容の見直しが検討されている(文部科学省、「公立博物館の設置及び運営上の望ましい基準」の見直しについて (mext.go.jp) 2022/07/08時点)。
11条に関しては博物館が提出する登録申請書の具体的内容が書かれており、「直接博物館の用に供する建物及び土地の面積を記載した書面及びその図面」という文言からすると、この段階で動物のエンリッチメントを十分確保するにふさわしい施設であるかどうかをチェックすることが可能であると考えた。
動物園について明確に定められていないことは確か(ただし「資料を収集し、保管(育成を含む)し、展示」のうちの「育成」という言葉は植物園、動物園、水族館を考慮したものだとわかる(佐渡友2022))だが、博物館法を読む限りそれは他の博物館該当施設である美術館、科学館等にも同様に言えることであり、そもそも博物館法はこれらすべてに言えることのみを定めていると分かる。16、18,19、27,28条に繰り返されるように、個々の博物館の運営に助言や支援をしているのは主に都道府県(または指定都市)の教育委員会である。公立博物館には博物館協議会が設置できるが私立博物館にはそのような規定はない。動物園の設置基準の具体的な内容を知りたければ各都道府県(または指定都市)の教育委員会の公表するデータを調べる必要があると分かる。
・都市公園法 (第一章総則第2条2項) 2017,「都市公園法」(https://elaws.e-gov.go.jp/docuhttps://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC1000000285ment?lawid=331AC0000000079)
第1章第2、第2章第2,3,4,5
第2条第2項6の中で、「公園施設」の一つとして動物園が掲げられている。
第4条では、都市公園に設ける公園施設の総面積は百分の二を超えてはならないと定められているが、動物園を設ける場合と政令で定める特別の場合は地方公共団体の条例で定める範囲内でこれを超えることができるとされる。これについて第5条第9項では、「認定公募設置等計画」(詳しくは第5条第7項1)に基づいて「公募対象公園施設」(詳しくは第5条第2項1)を設ける場合としている。さらに見ると「公募対象公園施設」に関係する第5条第1項では公園を管理する者以外が「都市公園に公園施設を設け、又は公園施設を管理しようとするとき」に許可が必要とある。
この文節がどこで切れるか定かではないが、「都市公園に」という内容が両者に適用するのであれば、この法律の第1章第2条に定められているとおり、「都市公園」は都市計画施設または都市計画区域内にあるものまたは国が設置するものであるため、多くの小規模な動物園は該当しないことになると思う。
第10条から
・動物愛護管理法 (第10条、第26条 「展示動物の飼養および保管に関する基準」)
松木さんの論文の抄録に共感。「1990年代のイヌやネコのペットの保護に関わる市民運動によって改正が繰り返され,1999年の改正では法律の名称が「動物の愛護と管理に関する法律」と改名された。愛護という名称のように哺乳類,鳥類,爬虫類など人が占有するすべての飼育動物を愛護動物として規定しており,主としてペットを対象とする概念からの改正である。しかしながら,飼育動物にはペットだけではなく,畜産動物,実験動物,動物園動物などが存在しているのであり,本格的な法的整備が求められている。」(松木洋一,2014,「世界の家畜福祉政策と福祉品質(WQ)商品の開発動向(3)」『畜産の研究 = Animal-husbandry』68 (4): 466-468 ISSN: 00093874)
・地方自治法
・並木美砂子
・佐渡友陽一
日本の動物園の大半は戦後から高度経済成長期までの間に設立され,「単純なるレジャー施設として一般的な公共施設と同じような評価基準」すなわち「入場者数と経営にかかる費用だけで施設を評価する土壌に埋没してしまうことになった.とりわけ中小の動物園は,「施設の老朽化や動物の高齢化」や「入園者数の減少」などに苦しむことになった.
(「動物園の社会心理学――動物園が果たす役割と地方動物園が抱える課題――」)
動物園が公園の財源だった例
大阪市天王寺動物園、甲府市遊亀公園付属動物園、小諸市動物園、鶴舞公園付属動物園→1956年に博物館法ができるまで続いた
民間の電鉄系動物園は大都市周辺を開発して、鉄道の開通と宅地の分譲を同時に進める。宅地の売り上げをあげるために都市の反対側に動物園を造った。
宅地は売り切れ、少子化が進み電鉄系動物園は相次いで閉園。
(「日本の動物政策 」)
〈論文〉
CiNii Research検索語「動物園 福祉 展示」 20件
・福井 大祐,2010,「展示動物の福祉 : 人を魅了するため野生動物医学を取り入れた健康管理」『日本野生動物医学会誌 』15(1): 15-24 pdf
著者は動物福祉を客観的に測定可能な知見に基づいて向上させることを重視している。旭山動物園における飼育環境の工夫、予防医学と獣医学的健康管理、安楽殺の技術、動物とのふれあい体験等の事例が紹介されている。日本野生動物医学会が持つ姿勢や世界の様々な基準にも触れている。
・2022,「シンポジウム 動物園の生息環境展示と動物福祉」『ヒトと動物の関係学会』(61): 13-17 ISSN: 13418874 自分の知りたい内容かどうか分からない
CiNii Research検索語「動物園 市民」58件
・五十嵐聡美,「動物園に関する制度と現状について」,第一章 (biglobe.ne.jp)
いろいろとまとめてある
・上野 吉一,2015,「特集にあたって 動物園/水族館における種保全事業の理解に向けて : 一般市民の意識が変わることも園/館を"本当"の姿に変える力になる」 (特集 動物園・水族館の"種"保存機能 : 遺伝子保存から野生復帰へ)」『 遺伝 : 生物の科学 』69 (6),: 462-465 ISSN: 03870022 自分の知りたい内容かどうか分からない
・後藤 千晴,2013,「社会教育施設としての動物園と市民的運営」『和歌山大学地域連携・生涯学習センター紀要・年報』 12: 73-77 ISSN: 21868395 pdf
社会教育施設としての動物園の改善がメインではあるが、市民の協力により動物園の4つの役割を果たすための力を持ち合わせていない小規模な動物園でも、飼育員の意識に変化をもたらしたり、動物園を生まれ変わらせる可能性があることが示唆されている。
・佐渡友 陽一,2017,「特定非営利活動法人市民ZOOネットワーク代表理事 佐渡友陽一氏に聞く(上)動物園を通して人と動物の関係を考える」『週刊教育資料 = Educational public opinion』 (1433): 4-6 ISSN: なし
・野村友美, 柚原和敏, 柳川 久, 2016,「おびひろ動物園における教育的取り組みに関するアンケート調査 : 郷土の動物であるエゾモモンガを題材として」『帯広畜産大学学術研究報告 = Research bulletin of Obihiro University』37: 33-47 pdf ISSN: 13485261
主にエゾモモンガについてのアンケートであるが、「自然保護活動に対する興味が強い人ほどこのような経験や認識が豊富であることが明らかになった.」「帯広畜産大学とおびひろ動物園の連携について, 95.4%の来園者が重要であると解答していた.」という部分が参考になりそう。
CiNii Research検索語「動物園 来園者」
・平 侑子,2020,「日本の動物園来園者の動物観に関する研究 : 来園者の娯楽の種類と変容に着目して」北海道大学 博士(観光学) 甲第13983号 ISSN: なし 人々の生活にも着目し、動物の娯楽性を主題に書かれている
・並木 美砂子,2018,「来園者の求めるものvs動物園が目指すもの」『東京都市大学横浜キャンパス情報メディアジャーナル 』 19: 36-44 ISSN: なし
CiNii Research検索語「(動物園 研究 連携)NOT 学校」74件
・安西 航,2022,「「研究」は動物園の「役割」なのか?」,『日本野生動物医学会誌』,27(2):77-82,ISSN:2185744X 13426133,pdf
日々の飼育業務での小さな工夫や発見も「科学的な言語化」に取り組めば立派な論文になると主張。論文とは何かを書いている。
・2022,「望星インタビュー この人の「”実感”を聞きたい 佐渡友陽一さん(帝京科学大学アニマルサイエンス学科講師)日本の動物園が一流になれないワケとは?」,『望星』, 53 (9):65-72, ISSN:02889862
「動物園を考えるー日本と世界の違いを超えてー」と内容が一部重複。打越(2022)と同様の提案(動物園が情報発信をし、応援者を増やす)がある。寄付の重要性を述べている。
・竹鼻一也,2021,「動物園で直面する課題を解決する研究活動とその成果:市原ぞうの国における実践例」,『日本野生動物医学会誌』,26(3):75-79,ISSN:2185744X 13426133,pdf
・畑瀬 淳,小林 秀司,群司 芽久,喜安 薫,村井 仁志,2018,「「動物園」と研究する―2.理想的な連携を考える―」『哺乳類科学』,58(1):111-112,ISSN:1881526X 0385437X,pdf
・冨川創平,2017,「大学と連携した動物園の研究事例~おびひろ動物園と帯広畜産大学の連携事例から~」,『日本野生動物医学会誌』,22(1):1-4,ISSN:2185744X 13426133,pdf
具体的事例が半分だが、地方の公立動物園ならではの研究における課題と、それに対する具体的な解決方法が述べられている。協定を結んだ帯広畜産大学とはそれ以前から立地の関係により交流があったことが述べられている。
・高見一利,2016,「動物園・水族館による研究の推進~検疫の収集,保存の事例より」,『日本野生動物医学会誌』,21(1):1-7,ISSN:2185744X 13426133,pdf
動物園・水族館の研究活動の必要性が検体(p2)の利用を中心に書かれている。また、死体の活用については、自然史系博物館との連携が有効だと指摘されている。こうした活動は、「資金や設備、労力」によって行える動物園は限られているという。環境エンリッチメント、動物福祉には触れられていない。
・安田直人,2014,「動物園との連携、そして期待すること」,『日本博物館協会 』 ,49 (11): 10-12 ISSN:09119892
環境省の立場からしての動物園に期待することが述べられているので、当然希少生物の保護のみが内容となっている(ただし著者は動物園が人々にとって居心地の良い場であることも重視している)。「レッドリスト」「国内希少野生動植物種」「保護増殖事業計画」とは何なのか、「動植物園等公的機能推進制度検討会」に対する環境省の姿勢が伺える資料ではある。
・大沼 学,水野 恵理子,中島 友紀,田島 淳史,2013,「絶滅危惧種の培養細胞および遺伝子資源凍結保存とそれらを利用した基礎研究について(動物園との連携事例紹介)」,『日本野生動物医学会誌』,18(1):7-10,ISSN:2185744X 13426133,pdf
国立環境研究所の実施する遺伝子資源を利用した研究の事例紹介
・畑瀬 淳,早川 大輔,2013,「「動物園」と研究する〈動物園で研究資料を手に入れる方法〉」,『霊長類研究所 Supplement』,29(0):45-,ISSN:なし,pdf
・動物園と大学の共同研究における両者の考え方の相違と研究上の問題点~動物園動物の繁殖生理学研究の経験から~
・動物園での行動研究の可能性と必要性
・成島 悦雄 「動物園水族館連携による野生動物の保全活動」,『博物館研究=Museum studies』,47(11):14-17,ISSN:09119892 自分の知りたい内容かどうかわからない,学校にありそう
・竹内 有理,一ノ瀬勇士,2012,「館種を超えた博物館連携の試み:夏休み企画「れきぶん動物園に行こう」の事例を通して」『日本ミュージアム・マネージメント学会研究紀要ーBulletin of Japan Museum Management Academy』,(16):55-62,ISSN:13434659
・幸島 司郎,2010,「動物園・水族館とフィールド研究者の連携--多様性研究の視点から」,『科学』, 80(10):1010-1014, ISSN:00227625 自分の知りたい内容かわからない、学校にありそう
・足立 幾磨,廣 澤 麻里,鈴木 直美,2009,「東山動物園における新たな活動の紹介:研究とアウトリーチングの融合」,『霊長類研究 Supplement』,25(0):95-95,ISSN:なし ポスター発表のため、内容は抄録に書かれていることのみの可能性がある
・伊谷 原一,2008,「大学と動物園~保全粋を超えた学術連携へ向けて」,『霊長類研究 Supplement』,24(0):2-2,ISSN:なし
・田沢 裕賀,2007-08,「東京国立博物館と上野動物園による連携の試み--いっしょに見よう!博物館と動物園」,『博物館研究=Museum studies』,42(8):7-9,ISSN:09119892 自分の知りたい内容かどうかわからない、学校にありそう
CiNii Research検索語「動物園 研究」
・山田耕嗣 ,2022,「業界団体の制度への適応活動と制度多元性の影響:日本動物園水族館協会の事例」,『専修マネジメント・ジャーナル』,12(2):13-24 ISSN:21869251 pdf
・玉井 邦治,安河内 泰男,福岡 薫,2022,「福岡市動植物園 日本最大級のペンギン展示」,『PREC Study Report』,21:70-73 ISSN:13438913
CiNii Research検索語「天王寺動物園」
・宮下実,2010,「天王寺動物園再生の活動戦略--展示・広報・連携」,『博物館研究 = Museum studies』,45(8):15-18, ISSN:09119892
ZOO21計画誕生の経緯と、この計画に基づき建設された施設が1つずつ説明されている論文。最後の章では、様々な主体(一般企業、大学、市民、NPO)との連携が紹介されているが、全て環境教育、動物園と市民とのつながりの形成、ボランティア参加者や寄付者の獲得などではなく、収入を確保し、以下に安定した経営をするかという意識に基づいている。
・宮下実,2007,「天王寺動物園の新しい動物園づくり」,『動物臨床医学 = Journal of Animal Clinical Research Foundation』, 16 (3): 93-97, ISSN:13446991
内容としては、同著者の別の論文(宮下2010,宮下2005)と類似しており、ところどころ一言一句同じところもある。新施設の紹介文から、動物の行動を引き出す工夫というよりは、動物を見せ方を工夫することにより来園者の動物や環境に対する理解を深めてもらうこと、動物が本来生息している環境の再現に力を入れているように感じた。
・宮下実,2005,「大阪市天王寺動物園--展示の変遷とZOO 21計画の目指すもの」,『遺伝 : 生物の科学』, 59 (4): 78-82 , ISSN:03870022
1980年にIUCN(国際自然保護連合)が勧告した野生動物の取り扱い方に基づいた世界の動物園の潮流や、1985年に策定された天王寺動物園の計画が紹介されており、昔の先進的な考えが読み取れる。動物ごとに施設のリニューアルした点、工夫した点が記載されているが、現代においては当たり前になっている事例もある。最後の段落を読むと1995年に策定した「天王寺動物園ZOO21計画」をもとに、10年以上を経てもなお、計画的に施設の改築が進められていると分かる。指定管理者制度を導入していると、長期的な計画を実施することはむずかいしいと思った(1995年時点での天王寺動物園は、自治体の直営であった(たぶん))。
・中川哲男,2005,知られざる上方再発見シリーズ(8)大都市どまんなかの動物園--天王寺動物園の歩みと展望,『Estrela / Estrela編集委員会 編』, 140: 39-43, ISSN:13435647
筆者の中川哲夫さんは天王寺動物園の園長だった。この論文を書いたときは大阪市天王寺動物園協会理事長。序盤、動物園というものの歴史、中盤、天王寺動物園の歩み、終盤、国内外の動物園の新しい取り組み。天王寺動物園でも、戦前から動物にショーをさせていたことが書かれている。
「大阪では1884年、東区内本町橋詰町(現在の中央区)の府立博物場に付属動物檻として開設された。大阪も上野と同じく、博物施設の付属施設として発足したが、その博物施設の性格は全くと言っていいほど異なっていた。」「1909年に大阪では「北の大火」と呼ばれる大火災が発生したこと等から移設問題が生じ、大阪府から大阪市に委譲され、1915年4月、現在の場所で大阪市立動物園の開設となった。」「天王寺動物園は当初は26,000m2の小さい動物園だったが、1935年には2倍強の60,500m2(現在は110,000m2)となり、年間入園者数は約200万人に達した。」
・中川哲男,2003,「インタビュー 動物の生態展示を積極採用し、わが国動物園の構造改革の先導役として果敢に挑戦する天王寺動物園--中川哲男(大阪市天王寺動物園長),『産業新潮 』,52 (12):46-51, ISSN:なし
CiNii Research検索語「京都市動物園」
・岡部光太,松永雅之,2021,「高齢個体安楽死に対する動物園ファンの意識 : 京都市動物園のライオン展示を例に」『ヒトと動物の関係学会誌 = Japanese journal of human animal relations』,59:51-57 , ISSN:13418874
・京都市文化市民局動物園,2020,「いのちかがやく京都市動物園構想2020 : いのちをつなぎ, いのちが輝く動物園となるために」,ISSN:なし いのちかがやく京都市動物園構想2020 | 動物園のご紹介 | 京都市動物園 (city.kyoto.jp)
京都市動物園のビジョンが分かる。来園者数の推移、サポーターの数、コレクションプラン。JAZAの掲げる4つの役割のうち、「調査・研究」を特に重要な役割として捉えている。その効果を「種の保存」「教育・環境教育」に反映させ、「「学び」の中にこそ「楽しみ」があるという考えに立ち」、「レクリエーション」を提供するという立場であり、4つの役割にも流れというか、順序みたいなのが決まっている印象を受けた。更なる発展のための課題、それにもとづいた京都市動物園理念(6つの行動指針、5つの柱、27の施策から成る)が記載されている。各機関との連携はp17。市民(京都市動物園ボランティア-ズなど)、同じ地域の他の博物館(京都府立植物園、京都水族館、京都青少年科学センターとの4者による「包括交流連携協定」など)、大学(学芸員実習等のための国内外からの実習生の受け入れ)、海外(平成26年度(2014)からラオスと協力して行われているゾウの繁殖プロジェクトなど)、公的機関(WAZA、JAZA、環境省)など、様々な外部とのつながりがある。京都市動物園の定めるコレクションプランによると、「本園のこれまでの取り組みや実績,飼育状況に加え,動物福祉の観点,種の保存への貢献度,教育的価値,展示効果を指標にして選定し」ている。そしてコレクションプランの調整種にあたる5種は、「個体群の維持管理が困難なことや動物福祉の面から改善が困難で飼育展示の見直しが必要な種。」とされており、種によって飼育を断念する理由が異なる。・ライオン・オナガゴーラル・アカゲザル・シロエリオオヅル・ヒヨドリ
・伊藤英之,2019,「京都市動物園における研究・教育体制」,『日本野生動物医学会誌』,24(3):109-113 ISSN:2185744X 13426133,pdf・田中正之,2016, 「生まれ変わった動物園-京都市動物園での研究と教育-」,『NU7 』,7:3-8,ISSN:なし https://www.gakushikai.or.jp/wp/wp-content/uploads/2023/08/NU7-06.pdf
「2009 年から全面改修を始め、2015 年秋、グランドオープン」
霊長類研究者の筆者の立場から、動物園の役割、京都市動物園がリニューアルした経緯とその効果、ラオスからゾウを導入できたこと、研究について簡潔に述べられている。
・田中正之,2016,「動物園のどうぶつのこころを探る」,『動物心理学研究』,66 (1):53-57, ISSN:18809022 09168419 https://www.jstage.jst.go.jp/article/janip/66/1/66_66.1.8/_pdf
京都市動物園と京都大学霊長類研究所の連携による霊長類の知性の展示について、京都市動物園と京都大学野生動物研究センター、ラオス国立大学林間学部、ラオス天然資源・環境省森林資源管理局の連携によるゾウの繁殖プロジェクトについてなどが記載されている。京都市動物園の具体的な取り組みについて述べられているが、論文を通して、動物園の役割を人びとに伝えるために動物園が変わらなければならないということも主張されている。
・中道正之,2014,「生まれ変わる動物園 : その新しい役割と楽しみ方」『霊長類研究』,30 (1):187-189 ,ISSN:18802117 09124047
CiNii Research検索語「円山動物園」
・2023,「本日開園中 FUN! FUN! 動物園(file 1)札幌市円山動物園 : 札幌市 北海道で最も長い歴史をもつ動物園 自然と人が共生できる未来をめざして進化中」,『ガバナンス / ぎょうせい 編』,265:126-127,ISSN:13464248
雑誌の最後の方に載っている見開き1ページの連載特集記事。動物園の創意工夫、見所、歴史が簡潔に紹介されている。
・2019,「札幌市円山動物園 ホッキョクグマ館・ゾウ舎 : 設計 大建設計」,『新建築』, 94 (1), ISSN:13425447
・高江洲 昇,2017,「札幌市円山動物園の事例を中心とした動物園の研究実施体制についての考察」,『日本野生動物医学会誌』,22(1):15-19,ISSN:2185744X 13426133,pdf
日米の動物園の違いの理由を動物園が誕生した土台に見いだしている。
アメリカでは自然保護の媒体としての機能を着実なものとするために環境育成型→ソーシャル・マーケティング型のアプローチへと変化したという新しい事例。
アメリカにおける寄付の精神の根強さが、この文献を通して述べられている。
独立行政法人化も、解決策の1つとしているが、今の日本の動物園の理解のままでは意味はなさないと筆者は考えている。
・片山めぐみ,伊藤真樹,吉野聖,伊藤哲夫,木戸環希,足利真宏,朝倉卓也,川西賢治,2011,「ヒグマ飼育展示施設における環境エンリッチメントのデザイン」,『日本建築学会技術報告集』 (35):289- ISSN:13419463
ヒグマの施設デザインを、環境エンリッチメント、行動展示の観点をふまえてどのように工夫したかが書かれている。専門的な知識はなくても理解できる内容。それにより、「エゾヒグマ館」のオープン後、ヒグマの実際の反応はどうだったか、観覧車の反応はどうだったかが書かれている。
・片山めぐみ,木戸環希,2010,「090 札幌円山動物園「エゾヒグマ館」の新築基本計画(計画1,講演研究論文、計画・技術報告)」,『日本建築学会北海道支部研究報告集』,83:353-356,ISSN:13440705
・鳥居佳子,中田銀太,井本あゆみ,清水道晃,2022,「札幌市円山動物園ホッキョクグマ館におけるホッキョクグマとアザラシのエンリッチメントの取組み」,『勇魚』,75:9-12,ISSN:13476378
2018年に新設したホッキョクグマ館についてどのようなところを改善したかが書かれている。JAZAではなく、AZA,マニトバ基準という海外の基準に基づいて設計した点、捕食者と被捕食者を同時に観察できる日本では先進的な展示をしている点が注目すべきところだと思った。
CiNii Research検索語「王子動物園」
・和田隼人,矢嶋巌,2015,「動物園の地域貢献 : 王子動物園の取り組みを事例に 」,『兵庫地理』, (60): 75-87 ISSN:13414054
動物園がどれほど地域に貢献しているかを明らかにしている。地域貢献の中でも「レクリエーション(憩い)」「教育」に着目するとされている。題名に「地域貢献」とあるが調査対象者は、王子動物園周辺に位置する保育園2カ所という限定したものである。さらに、内容として保育園での調査に咲かれているのは、全12ページ中4ページのみである。逆に言えばそれ以外の情報に富む。保育園側と動物園側の考えている魅力、課題の相違と王子動物園の改善すべき点(専門的な視点ではない)が最後に述べられている。
JAZAについての新しい情報
2000年に全国の動物園の教育事業について実態調査を行っている。(p77)
2001年に13の教育プログラムを開発・提案している。(p77)
日本初かつ6ヶ月以上生存した繁殖事例に対し「繁殖賞」を与えている。(p88)
・木下こづえ,2008,「神戸市立王子動物園動物ミニレクチャー-共同研究者による園内広報活動の意義- 」,『動物園水族館教育研究会誌』, 48-51,ISSN:なし
その他
・本田公夫,2006,「日本の動物園の現状と課題」,『畜産の研究』,60(1):183-198,ISSN:00093874
日米の違いの理由を動物園が誕生する土台に見いだしている。
アメリカでは自然保護の媒体としての機能を着実な者とするために環境脅威木型→ソーシャル・マーケティング型のアプローチへと変化したという新しい事例。
アメリカにおける寄付の精神の根強さはこの文献を通して述べられている・
独立行政法人化も、解決策の1つとしているが、今の日本の動物園の理解のままでは意味はなさないと筆者は考えている。
・野村 卓, 落合 かほる, 大沼 龍之介, 杉本 優 ESD・環境教育研究 24 (1), 21-32, 2022 自分の知りたい内容かどうか分からない
・佐渡友陽一,2019,「日本における動物園学の展開とガバナンスの問題」『博物館学雑誌』45(1): 1-32
佐渡友による先行研究の分析
川端裕人の著書「動物園にできること」(1999)では日本の動物園の問題の一端を自治体運営というガバナンスの点に見いだすとともに、「動物園をただ楽しむだけの場所としてとらえてきた社会全体の問題でもある」としている。また、本田公夫との共著「動物園から未来を考える」でもやはり、市民側の意識に問題を掲げており、これへの対応として「若手職員とそれをとりまく動物園ファンが一緒になって世論を引っ張っていく」ことを挙げている。石田(2010)は日本の動物園問題を解決するために、社会体制のレベルで「新しい動物園像を形成する必要」があるとして、具体的に「マスメディアや地域社会、学校、研究機関に対して開かれなければならない」としている。さらに、ガバナンスのレベルである「経営基盤の確立」も必要であるとして、具体的には動物園が理念から方針、財政、人事にわたって自主的に決定する仕組みを確立することを挙げている。
〈書籍〉
・打越綾子 他,2018,『人と動物の関係を考える』ナカニシヤ出版
・川端裕人,本田公夫,2019,『動物園から未来を変える――ニューヨーク・ブロンクス動物園の展示デザイン』亜紀書房
・佐渡友陽一,2022,『動物園を考える――日本と世界の違いを超えて』東京大学出版会
立場
「十分に繁殖させられない動物や、捕獲に苦痛を伴う動物は飼育すべきでない」、「最善の方法は、実践し、議論すること」というメルボルン動物園の最高責任者であるジェニー・グレイの言葉に疑問を呈している。特に後者については言語化することに対する欧米のこだわりに着眼して、科学観と宗教観から日本との違いを見いだし、哲学的な考えを用いながらその限界を記している。しかし、こうした考えを基本構造にもつ欧米の主導により今の先進動物園があることを認め、日本の動物園の仕組みは「市民・役所・動物園の3者とも不満足な状態」にあると本論を通して主張していることから、中立的、やや動物園継続側の立場だと思われる。
・京都市動物園 生き物・学び・研究センター編,2020,『いのちをつなぐ動物園、京都市動物園飼育係ものがたり』小さ子社
・編集発行 京都市動物園,編集 京都市動物園編集委員会,2013,『みんなの京都市動物園 : 京都市動物園110周年記念誌』株式会社キッズプロモーション
京都市動物園誕生の歴史から現在の京都市動物園の再整備計画に至るまでが写真とともに記載されている。これまで飼育してきた動物や、時代ごとの飼育舎の様子、人工保育の取り組みなども記載されている。
・企画・編集・発行 神戸市王子動物園,2001,『諏訪子と歩んだ50年 : 王子動物園開園50周年記念誌 』株式会社森山印刷
王子動物園誕生の歴史、その年々に起こったニュースが記載されている。
・企画・編集・発行 神戸市王子動物園,2001,『諏訪子と歩んだ50年〔資料編〕 : 王子動物園開園50周年記念誌 』印刷 株式会社文尚堂
管理部門(p3~P24)には、管理区域、面積、園内施設の変遷や、入園者数の推移が、飼育部門(p26~p64)には飼育動物数の推移や外国との動物交流実績が記載されている。園内施設の変遷を見ると、開園当初は野外劇場、遊園地がある。前者は1981(昭和56)年~1988(昭和63)年の記録では「放養式獣舎」に変化しているが、後者は2001年まで継続してある。また、1981(昭和56)年~1988(昭和63)年の記録ではじめて、「動物科学資料館」なる学びのための施設が設置されている。
・溝井祐一,2014,『動物園の文化史 ひとと動物の5000年』勤誠出版
・DeGrazia,David,2002,ANIMAL RIGHT: A Very Short Introduction,(=デヴィッド・ドゥグラツィア,2003,『動物の権利』岩波書店 )
畜産、ペット・動物園、研究材料といった様々な分野における動物の権利について述べられている。日本でしばしば議論があまりされていないように感じる動物の感覚の境界線や、動物園の果たす役割が現実に寄与している程度などが鋭く指摘されている。
動物園には反対の立場
・諸井克英,古性摩里子,2018,『動物園の社会心理学――動物園が果たす役割と地方動物園が抱える問題――』晃洋書房
生活科学研究科の古性さんの修士論文を心理学の博士である諸井教授が加筆・改稿したもの。全体を通して「地域との連携方略や動物園の特化方略などによる再生努力の有効性と可能性を確認」している。
・ロブ・レイドロー,2014,『とらわれの野生――動物園のあり方を考える』リベルタ出版