・認知症は基本的に徐々に症状が進行していく。完治に希望を持つことができない中で、どうすれば認知症当事者の自己否定を防げるのか。
・医療以外からの働きかけ(家族会、認知症カフェなど)はどのようなものがあり、当事者にとってどのような意義があるのか。
「認知症」
アルツハイマー型認知症
血管性認知症
「若年性認知症」
認知症が65歳未満で発症した場合、若年性認知症とされる。全国に3.57万人、人口10万人あたりの有病率は50.9人(令和2年、若年性認知症実態調査、厚生労働省)。原因疾患で最も多いのがアルツハイマー型で53%。発症した多くの人が現役で仕事や家事をしているため、精神的な問題のほかに経済的な問題が発生することもある。
参考 厚生労働省 若年性認知症ハンドブック
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/2020_jyakubook.pdf
「認知症カフェ」
大事だと思ったこと→★
<書籍>
天田城介、2011、「老い衰えゆくことの発見」
p54
認知症高齢者は自分自身の存在を「呆け」として強く否定してしまうことが少なくない
他者から否定的な価値づけがなされてしまう状況で「自分」の在を傷つけない方法=自らの面子、プライドを守る方法
・「母親」「友人」などの役割をこなす
・自分から先に表明
p66
・取り繕い工作
・「認知症」とレッテル付けされた自分と「本当の自分」は別であると考える。
過去の私こそ本当
→「できなくなっていく私」をポジティブに解釈できない→強烈な自己差別化へ陥る可能性
p68
価値転換作戦
認知症になったことで元々出会うことのなかった人と出会えた、など。
→老いを否定的に評価する支配的な文化に抵抗するのは困難
p69
★認知症高齢者が自尊心やプライドを守るためには
「できた過去の私」に縛られることなく、「できた過去の私と、できなくなった現在の私との上手な付き合い方」をどのように構築するか
「できる私」であらんとすることからいかに自由になれるか
を考究すべき
p70、71
自己とは複数の「私」を束ねる何か=アイデンティティ
認知症高齢者は複数の私を束ねている何かを失っていく事態の中生きている
同時にそれが他者による無数のまなざしに晒されている
→認知症高齢者は強烈な不安の中生きる
木下衆、2019、「家族はなぜ介護してしまうのか――認知症の社会学」
家族介護はなぜ大変なのか、その大変さの源泉、現状の問題を明らかにする本
患者の行為を言語や人種の違いに起因するもの、あるいは正当な怒りの表明と考えるよりも、病気のせいにしてしまう方が簡単
新しい認知症ケア時代において 疾患であることも本人の思いに配慮することの重要性も共に含みこんだ認知症の概念が相互行為に何をもたらすか
井口高志、2020、「認知症社会の希望はいかにひらかれるのか――ケア実践と本人の声をめぐる社会学的探究――」
認知症に対して「予防」すべきか「共生」すべきかという対立軸
認知症の人は「支援が必要な人」というより「社会への参加から排除された人」という意識改革の現代
社会学的批判として既になされてきたことに対する反省的批判
本書の目的 今までの実践を整理し、実践の展開の先に予想される帰結を見通すこと、問題の背景や内容を解明
第一章 呆け(認知症)の理解・包摂の変遷1980年~2000年
理解の対象にされなかった→ケア・介護の対象としての働きかけ→ケア・介護以外からの働きかけ
相互に絡み合う三つの方向性
①その人らしさによりそう=本人の「思い」に配慮したケア
②疾患としての積極的対処(医療化)
③本人が「思い」を語る
第二章 方向性①による医療批判
精神科臨床からの批判
居場所づくりの実践からの批判
日常的な欲求より生理的欲求が優先される医療を批判
第三章 方向性①や③の本人の「思い」とは
認知症関連番組による「思い」をとらえる実践
本人の思いの表出が介護負担の低下を招くとは限らない
意思疎通が難しい状態になることに対して避けようとするのか、向き合うのか
第四章 ①と②の潮流の中でのデイサービスのケア実践 「オアシスクラブ」
第五章 第六章 ③のケア実践
*第三章において、意思疎通が難しい状態になることと向き合う方法についての番組が紹介された。症状が軽くなることが稀である認知症の人にとって、物忘れに対する恐れをなくす試みは大事だと思った。認知症高齢者の自己否定を防ぐことができる方法の一つだと考える。
井口高志、2008、「支援の社会学」第八章 医療の論理とどう対するかp185~
近年の新しい認知症ケアとしての先駆的実践をふりかえり、社会学がどういうスタンスをとればいいのかについて考える
・尊厳の保持をケアの基本とする
・医療によるケアと生活・関係によるケアの対立構造
・医療への期待が強まる潮流
・現在医療のケアと関係を重視したケアの接合が見られるため、従来のような医療化批判は妥当なのか
先駆的実践の背景
・1990「寝たきり」を中心とした要介護高齢者への注目
・一方で痴呆、呆けは制度の対象にならず配慮もなされなかった→居場所のなさ、症状が問題行動とみなされ対処に困る
・ここで先駆的実践↓
実践①医学的に「問題行動」を理解する
実践②病院とは違う場「居場所」を設ける
実践①
・小澤勲は精神病理という方法をとる
・これは、さまざまな表出を「痴呆の症状」としてラベルするだけで終わらせない、彼らの心的世界を読み解こうとするということ
・脳障害の原因や治療可能性は扱わない、周辺症状の理解に努める
・周辺症状とは問題行動として介護を困難にさせる行動などを指す
・たとえば小澤はデイケアなどで「なじみの関係」を作ることの重要性を主張
→相手のあり方を見切らずに関わり続けていくことの重要性
実践②
居場所づくりの実践
・下村(2001)による福岡の宅老所「よりあい」の事例
便のにおいがする老人に鈴を鳴らす音楽療法をやらせる
個々人の基礎的な生理欲求への対応(排便やおむつ替え)よりも、「症状」に対する「療法」が優先されていた
日常的な欲求よりも特別な対処が優先される
下村は痴呆という現象は老いていく過程で自然なことと考え、医療は痴呆の老人を特別な病気の患者と位置付ける
通常の病気→生活の領域と病気で治療する領域がある
痴呆→生活の部分にまで医療が介入している
医療が認知症とされる人の生活のほとんどを覆ってしまうことへの批判→その医療が支配する場とは異なる場を施設や病院の外へ作る
・「小山のおうち」の事例
医療の枠でありながら「普通に暮らす」空間を作る
「認知症とされる本人が語る」試みを1990年代前半から先駆的に行う
日本では「治療」という名目で業務が保障されないと仕事内容があいまいにされてしまうという事情がある
医療批判の意味を含む先駆的な実践①②から学ぶこと
・いずれの実践も、関係やコミュニケーションを操作して相手を変えるといったことを意図したものでは無い
・脳障害の不可逆性(治らない)を根拠に非常識な論理の下で認知症の人が扱われていることに違和感を持つ→相手の心を見切らず変化に付き合う、よりましな場所を作る
・認知症とされる人などを「よくする」働きかけ=療法と、穏やかな生活が送れることを目指した実践は別
・これらの先駆的実践は医療の完全な否定では無い。
→医療ではなく治療主義、適応主義への批判
→「治療」という意味付けが居場所作りにおいて重要
新しい医療の論理
・近年は何らかの脳の疾患に起因する症候群として認知症を明確にして認知症とされる人を理解する志向
先駆的実践の本人視点を尊重したケアと共振
初期段階での診断を目指し、十分な疾患の知識に基づいた対応の治療を目指す
↑↓
・かつての生物学的な精神医学
痴呆は原因不明で不治であると理解→薬物などで抑える以外に対処不可能→周辺症状を示す相手へのケアの意義を認めない
課題
・認知症の進行を遅らせることが小規模な場でのケア実践の目標として位置づけられがちになっていくことが、認知症本人や彼女へのケアに対して何をもたらしていくのか?
具体的に↓
進行を遅らせることを目的としているデイサービスは、利用者がその場の秩序を維持できることが前提になされている(能力の維持が出来るなど利用者が軽度であることが前提)
進行が避けられない重度の認知症とされる人がその場(進行を遅らせることを目的とする場)にとどまることは本人にとっても望ましくない、次の場を探すことが必要になってしまう
このような事から進行を遅らせるような実践は豊かな居場所作りの延長に位置づけられるのか?
・この問いに答えるには、個々の活動そのもののミクロな分析が必要
<考えたこと>
「痴呆」がある程度自然なことであるのに対し「特別」な対応が行われていることに対しての違和感について納得した。特別ではない対応とはどのような対応であるのか気になった。
進行を遅らせる、認知症予防を強調したケアでは、進行のスピードが速い重度認知症とされる人にとっては「認知症になっても生きられる」という意味のケアにはなっていないかもしれないと感じた。
徳田雄人、2018、「認知症フレンドリー社会」
著者は元NHKディレクター。家族に関する部分は55pから。
出口泰靖、2001、「臨床社会学の実践」第六章「呆けゆく」体験の臨床社会学
筆者のフィールドワーク、特別養護老人ホームの痴呆性老人専用の居室での体験からの発見
呆けに出くわした時、見当識障害「自体」に目を向けがち
障害による問題行動に対して対症療法的に対応することはあってもその基底にある感情に向かい合うことは少ない
→その感情は本人の内的世界のものであり私たちの現実世界で起こっているものではないから
★問い=呆けゆく人々の基底感情に対してどうかかわればよいのか
問いへの足がかり 「呆けゆく」体験を汲み取る作業 その一つに「病い体験アプローチ」
「病い体験アプローチ」=病い障害をもつ人の観点から病いや障害を理解しようとすること
ケアの関係性の中でみずからの病いをどう解釈するのかに関心をおく
小澤勲、2003、「痴呆を生きるということ」
下村恵美子、2001、「九十八歳の妊娠 宅老所よりあい物語」
他の文献中に登場し気になった
<論文>
鈴木みずえ、繁田雅弘、2022、「自己効力感の視点から見た認知症の人と家族のQOL」『Monthly book medical rehabilitation 』(273), 38-48, 2022-04
山口舞、平田弘美、2018、「家族と同居する高齢者の思いに関する質的研究」『人間看護学研究』16 1-8, 2018-03-01
田中正子、2011「認知症者における家族介護高齢者の生活満足度とストレス及び自己効力感との関連性 : 一般高齢者との比較」
手島洋、2019、「認知症の人を包摂する地域づくりをめぐる施策と当事者組織の役割」、『立命館産業社会論集』
日本における認知症の人に対する理解の変遷を認知症施策との関わりの中で検討
「自己効力感」
自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できると、自分の可能性を認知していること (wikiより)
医療用語であるため社会学的研究からは逸れてしまう可能性あり
「非対称コミュニケーション」
「認知症カフェ」
「若年性認知症」
・天田城介
中央大学文学部人文社会学科社会学専攻教授
本人ウェブサイト→http://www.josukeamada.com/
・井口高志
東京大学人文社会系研究科 准教授
研究キーワード「認知症ケア」「医療社会学」
research map→https://researchmap.jp/kakomu
・春日キスヨ
・出口泰靖
丸腰フィールドワーカー
・齋藤 暁子
「ケアのリアリティ」第四章
・認知症カフェ
認知症カフェとは、認知症の人やご家族、地域の方々、医療・介護の専門職など誰もが気軽に参加でき、交流や情報交換をする場
認知症カフェの運営者は、市町村のほか、地域包括支援センター、医療機関、NPO法人、住民主体の会など様々
→複数のカフェの比較はできるのか
・2015 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)
認知症高齢者等にやさしい地域づくりの推進
・https://www.mhlw.go.jp/content/000521784.pdf
・厚生労働省 今までの認知症の歩みhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000079269.html
認知症の当事者に関しての取り組み、組織について調査したい
特に「若年性認知症」の人が当事者である場合に絞る
→当事者の就労支援やどうやって「認知症」と共に生きるのかという部分に注目したいため
石川県と富山県の取り組みを比較する、またはどちらか一方をメインで調査する
①石川県(金沢)での取り組み
金沢市若年性認知症応援団
応援団URL
若年性認知症の人と家族と寄り添いつむぐ会、金沢市福祉政策課が関わっている(詳しくは分からなかった)
地域で暮らしている若年性認知症当事者の「~したい」という想いや希望を実現するため、各自ができることを応援する「~したいプロジェクト」を実施
様々な企業・団体が「応援団」として当事者の希望の応援のために協力している
企業・団体一覧↓
香林寺→本堂で認知症カフェの活動提供、「みんなで歌いたい」「芋煮会をしたい」を実現
金沢21世紀美術館→「バスに乗って出かけたい」を実現
V-cube→web会議システムの活動提供、「遠くの当事者と繋がりたい」を実現
otokoto→音楽教室を開催、「みんなで歌いたい」「音楽を習いたい」を実現
そらまめ将棋クラブ→将棋教室を開催
メープルハウス Fusion21→「安心して外食したい」を実現
小松市認知症ケアコミュニティマイスターの会→月一回マイスター養成講座とともに認知症カフェを開催
問い合わせフォーム、電話番号が存在
更新が2019年で止まっているためコロナ渦で活動が止まっている可能性あり
若年性認知症の人と家族と寄り添いつむぐ会
つむぐ会URL
2015年度、石川県金沢市、野々市市、白山市を対象に、精神科の医師、看護師、専門職、当事者家族のメンバーが立ち上げた
所属団体や職域を越えて若年性認知症の問題に取り組む
地域の現状を把握し本人、家族が【発症からいま】にどのような思いがあるかを聞きとり、生活や医療・福祉の課題を明らかにする
認知症カフェみんなのHaunt(たまり場)を開催
②富山県での取り組み
富山県若年性認知症相談支援センター
センターURL
富山県社会福祉協議会が富山県(厚生部高齢福祉課?)からの委託を受けて開設
認知症の人と家族の会と連携している?(センターのHPに載っている)
「土曜サロン」
認知症当事者や家族の交流会、「本人交流会」は作品作りなどを行い「家族交流会」では情報交換を行う