各論文の知見を【調査研究】というコーナーにして地図上に上げる。
豊田論文:調査対象に関するもう少し細かい情報をメモ(回答数など)。
テーマ「若者からみる通信媒体の変化に伴う生活スタイルの変化」
【問題意識】
現代を生きる多くの人々にとってなくてはならないものであるスマートフォンの登場によって、スマートフォンの影響を最も受けていると言われている学生の通信機器におけるトラブルはスマートフォンの登場以前と比べてどのように変化したのかをアンケートなどの調査結果や文献を読み考えていきたい。
【基本概念】
・LINEいじめ…LINEグループにおいて複数が一人に対して誹謗中傷したり既読しても無視したりする行為。
・SNS…SocialNetworkingService(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の略。
社会的な繋がりを作り出せるサービス。
【主な研究者】
・松田美佐 心理学者。中央大学教授。
おもな著作『うわさの科学 勝手に一人歩きする怪話のメカニズムを探る』河出書房新社 Kawade夢新書 1998
『うわさとは何か ネットで変容する「最も古いメディア」』中公新書、2014
・豊田充崇 和歌山大学教育学部教授。
【文献からの情報と考察】
2000年代において、スマートフォンの登場以前は折り畳み式の携帯電話やパーソナルコンピューターの使用が、情報を得たり連絡を取るための主な手段であったが、2011年~2012年のスマートフォンの普及によりスマートフォンがその役割を担うようになった。それまでの携帯電話やパーソナルコンピューターにおけるトラブルは松村真木子の「子どもをめぐるインターネット環境の変化」によると出会い系サイトを介しての児童売春や学校裏サイトなどの日常生活を送る上で関わりのない見知らぬ他者や匿名の投稿による名前が特定できない人とのトラブルが主なものであったが、2009年から2010年の間にブログや初期SNSのmixiの参加者が拡大したことによりそのようなトラブルは急増し、児童売春は出会い系サイトから一般携帯サイトで行われることが多くなった。そして2013年から2015年には子供たちの生活にスマホが入り込むようになり、SNSでのトラブルが目立つようになった。阪口祐介の『若者におけるメディアと生活の相互関係の変容』によると現代の人々の生活における価値は、未来に向かって計画を立てて努力に励むことを重視するような志向から、家族や友人といった身近な人との関係性に価値を置くような志向へと変容しつつある。そのため現実でかかわりのある人とのSNSでの交流が盛んになり「LINEいじめ」やTwitterにおける誹謗中傷やブロックなど、周りの人とのトラブルが増えたのではないか。
【文献リスト】
2016.5.27「スマートフォン」
・松田,美佐 (Matsuda,Misa),2012「大学生のスマートフォン利用」,『中央大学社会科学研究所年報』16: 99-112,中央大学. //JPN
Cinii有り.入手済み
2016.5.27 「メディア」and「多様化」
・平松,貞実 (Hiramatsu,Sadami),2000「メディアの多様化と新聞」,高野,邦彦 / 平松,茂實(編) (Takano,Kunihiko / Hiramatsu,Shigemi (ed))『現代社会変化と消費者・企業行動』: 205-225,税務経理協会. //JPN
2016.6.24 『現代若者の幸福』 藤村正之 浅野智彦 羽渕一代
7章 若者におけるメディアと生活の相互関係の変容 p169‐190 入手済み
Cinii Artcles
2016.6「スマートフォン」and「SNS」
・松村真木子,子どもをめぐるインターネット環境の変化 : 新聞記事(2007年~2015年)の分析,
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇
Cinii有り.付属図書館無し 入手済み
2016.6「社会」and「SNS」
・三上俊治 「SNSにおける自己開示とプライバシー・パラドックス.東洋大学社会学部紀要」
東洋大学社会学部紀要 53(1), 65-77, 2015-11.東洋大学社会学部
CiNii無し.付属図書館無し
2016.6 「スマートフォン」and「高校生」
・豊田充崇 「中・高校生のスマートフォン・インターネット利用実態に関する調査研究」
和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要
Cinii有り.付属図書館無し 入手済み
2016.6.23「スマートフォン」and「社会」
・伊藤 賢一 「スマートフォン時代における青少年のリスク構造-群馬県前橋市調査より」
群馬大学社会情報学部研究論集 23, 1-14, 2016-03-01
Cinii有り 入手済み
2016.7.14 「現代」and「若者」
・中山 秀紀 「若者のインターネット依存<特集>現代の若者のメンタルヘルス」心身医学 55(12), 1343-1352, 2015-12-01
Cinii有り 入手済み
【調査研究】
・松田美佐 「大学生のスマートフォン利用」
→大学生を対象とした質問紙調査(2011)。調査対象は、2011年11月に中央大学文学部社会情報学専攻の139人、法政大学社会学部メディア社会学科の学生45人、計184人。学年が上がるごとにスマホ利用者増。スマホ利用者と非利用者(ガラパゴス
等)を比較したところ、ケータイ依存に関連する意識に差は見られず。スマホ利用者は非利用者と比べ動画サイトの観覧時間が長い。
・藤村正之 浅野智彦 羽渕一代 『現代若者の幸福』7章 若者におけるメディアと生活の相互関係の変容 p169‐190
→2002年と2012年の青少年調査を用いた時点間比較分析。人々の生活における価値がインストルメンタルな志向からコンサマトリーな志向へと変容しつつある。(計画を立てて努力に励むこと重視→身近な人との関係性に価値を置く)。
2000年代ネット上の利点に注意が払われることはほとんどなかった。携帯メールの活発利用者は<広く>より<深い>友人関係を求める傾向にある。携帯メールは「メディア・コミュニティー」と「フルタイム・インティメート・コミュニティー」
の二つの次元から人間関係を促進、深化、維持する機能を持つ。SNSでの行動が多元的な自己よりも、自分らしさを探求するような志向性と親和的である。
・松村真木子 「子どもをめぐるインターネット環境の変化」
→2004年~2007年 子供のネット利用萌芽期
…ブログを開設する人が、2004年から2007年にかけて急増した。それに伴い、HP を作成したりSNSを利用する子どもが現れた。
2009年~2010年 子どもが巻き込まれるトラブル急増期
…2006年末に開始した「ニコニコ動画」の有料会員が100万人に急増。13歳以上が利用できる投稿サイトTwitterが日本語サービスを2008年に開始したが、2009年に携帯サイトで利用できるようになると半年後に利用者は3倍
の752万人に増加。これらの背景により、出会い系サイトを利用して被害にあった少女は減少したが、一般携帯サイトへの書き込みが要因となる事例が急増した。また、SNSで子供が犯罪被害に遭うケースが多発しており、
被害に遭った子どものほとんどにフィルタリングが設定されていなかった。文部科学省の調査によると、学校裏サイトや出会い系サイトに代わり、SNSが不適切な投稿の温床になりつつあることが明らかになった。
2011年~2012年 スマホとLINEの登場 SNS参加時期
…子どもが加害者、被害者になる事件が増加した。スマホの普及によりフィルタリングをかけていてもネットができるようになったため、事件を防げなくなった。
2013年~2015 子どもの生活に入り込むスマホとLINE時期
…2013年から中高生は一気にスマホ時代に突入した。2011年に無料通信アプリLINEが登場し、スマホと相乗効果が起きた。
実名で登録するFacebookのタグ付け機能LINEの友達自動追加データ、写真のGPS機能など、スマホとSNSを組み合わせると個人情報が漏れてしまう危険性が指摘された。
実際になりすましなども起きるようになった。また、「LINEいじめ」や「スマホ依存」が社会的に問題視されるようになった。
・豊田充崇 「中・高校生のスマートフォン・インターネット利用実態に関する調査研究」
→2014年和歌山県立高校3校(1814名)、県内中学校6校(1508名)合計9校3322名にアンケート。
中学二年生で約半数がスマートフォンを所持。
国内の高校生のスマートフォンの利用状況ほぼ変わらず。
写真共有系SNSは女子の利用率が高い。中・高生にFacebookの日常的な利用は
ほとんど見られず。