テーマ
主夫たち自身の団体活動
問題意識
近年「主婦」ではなく「主夫」という言葉が聞かれるようになった。日本ではいまだ夫が仕事をし、家族を養うという考えが強く根付いていると考える。私の兄も将来主夫になりたいと述べていたことがあるが、母はあまり良い反応ではなかった。そこで主夫とは今現在どのくらいいるのか、今後主夫の数はどう変化していくのかを検討していきたい。
基礎概念
・主夫:家事・育児などを担当する夫のこと。主婦に対置して用いられる言葉であり、家事を専業とする場合、妻が専業主婦と言うのに対し、夫の場合は専業主夫という。また、家事のほか仕事をしている夫のことを兼業主夫という。2005年時点では、専業主婦(710万人)と専業主夫(2万人)とで、350倍以上もの人数差があったが、2010年には専業主婦(690万人)と専業主夫(6万人)となり、その差は115倍まで縮まっている。(wikipediaより)
・育児休業法:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の第5条~第10条。この法律の「育児休業」をすることができるのは、原則として1歳に満たない子を養育する男女労働者。申出の回数は、特別の事情がない限り1人の子につき1回であり、申し出ることのできる休業は連続した一まとまりの期間の休業である。ただし、子の出生後8週間以内の期間内にされた最初の育児休業については、特別な事情がなくても再度の取得が可能。事業主は、要件を満たした労働者の育児休業の申出を拒むことはできない。ただし、雇用されて一年未満の労働者や、合理的な理由があるものは育児休業をすることができない。育児休業をすることができるのは、原則として子が出生した日から子が1歳に達する日(誕生日の前日)までの間で労働者が申し出た期間。ただ、(厚生労働省より)
ただ、実際男性の育児休業取得率は低く、取得者全体に占める男性の割合は1.9%、配偶者が出産した男性のうち育児休業を取得した男性の割合は0.33%にすぎない。(佐藤・武石,2004)
・イクメン:イクメンクラブが作り出した言葉。2010ユーキャン新語・流行語大賞の受賞語となる。イクメンとは「育児を楽しめるカッコいい男」のことであり、子どもたちを広く多様な世界へ誘い出し、妻への愛と心づかいを忘れないことが重要だという。
研究者
八木孝憲
慶應義塾大学大学院社会学研究科後期博士課程単位取得退学。御殿場看護学校で職員をしていたこともある。現在は、地方公共団体 教育委員会でカウンセラーをしている。論文としては 2016年「静岡県における学校と児童養護施設の連携に関する調査研究」、2014年「学校環境適応感尺度(ASSESS)を活用した教育相談体制の拡充-不登校傾向生徒の早期発見とサポート体制構築に向けて-」、2009年「家族のオルタナティブ・ライフスタイルとしての専業主夫--家事育児に専念する男性(父親)に関する質的分析」、2007年「変化する家族の形態--専業主夫家庭の実態とその生き方に関する臨床心理学的研究」などがある。
主な研究分野としては、社会学 / 家族形態、心理学 / 臨床心理学 / 児童・思春期臨床である。彼は2009年「専業主夫家庭妻のパーソナリティ--就労・育児・家族の観点から」で 「家族の多様化のなかで、(専業主婦家庭を)今日の不安定雇用や共働きの難しさに対する男女の結婚戦略や夫婦が取りうる家族戦略の1つとして位置づけていく必要があるのではないだろうか」と主張している。
量的データ
黄色は最高値,青色は最低値,上位5位の数値は赤色で示している。
総務省 国税調査 平成22年(データえっせいより)
質的データ
・NPO法人ファザーリング・ジャパン:Fathering Japanは、父親支援事業による「Fathering」の理解・浸 透こそが、「よい父親」ではなく「笑っている父親」を増やし、ひいてはそれが働き方の見直し、企業の意識改革、社会不安の解消、次世代の育成に繋がり、 10年後・20年後の日本社会に大きな変革をもたらすということを信じ、これを目的(ミッション)としてさまざまな事業を展開していく、ソーシャル・ビジ ネス・プロジェクトである。各地でセミナーや講演会を行っている。
・秘密結社 主夫の友社(ファザーリング・ジャパン非公認団体):2014年10月10日に主夫5人が集まり、結成された非公認団体。彼らは主夫というものをを世の中に打ち出すにはどういたらいいか考え、「政府が女性管理職を2020年までに30%高める目標を打ち出したなら、主夫も30%増やさなければいけないのでは?」という考え
に至った。本当の目的は「主夫を増やすこと」ではなく「選択肢を増やすこと」。夫婦どちらかが負担を抱え込むのではなく、その時その時の状況に応じて、柔軟に生きられる社会を目指している。彼らの主な活動として、メディアに出演したり、各地で講演会を開いたりしている。
・子育て主夫ネットワーク「レノンパパ」:2011年4月に2人の“子育て主夫”によって設立された任意団体。東京都内で、子育て主夫の交流会やイベントを開き、子育て主夫のつながりをつくる活動をしている。対象とする子育て主夫の定義を「母親以上に子育てを中心に行っている父親」とし、仕事をしている・していないは問わず、子育てを主体としているか・どうかで考えている。活動の目的は、子育て主夫のつながりの場を提供すること、ポジティブに子育てに取り組めるように、子育て主夫の不安や悩み、喜びややりがいを共有すること、子育て主夫の存在や子育てに取り組む姿勢・経験を積極的にアピールし、「子育て主夫」さらには「子育て」や「家族のあり方」に対する社会の認識の変化を促すこと。
・イクメンクラブ:イクメンクラブは、父親を中心とした有志が集まって立ち上げた任意団体として、2006年末より活動を始め、2011年4月に特定非営利活動法人(NPO法人)として認められた。「イクメン」という言葉を生み出し、世の中に普及させることで、父親の育児参加を促し、少子化の歯止めにもしていこう、そんな社会変革を達成するために、このプロジェクトは立ち上がっている。 現在は、イクメンランチ、イクメンキャンプなどのイベントを実施し、男ならではの子育てで、子どもたちを多様な世界へ導きたいと考えている。男が子育てに積極的に関わることで、パートナーである女性の社会参加をうながすだけでなく、男性自身の人生もより深みのあるものになっていくと考えている。
リサーチクエスチョン
八木の主張から、不安定雇用や共働きによる子育ての大変さから主夫になる人がいるのだと推測した。そこで、本当にそのような理由で主夫になった人がどれほどいるのか、その他にどのようなきっかけで主夫になったのかを知りたいと思ったため、それぞれの主夫団体とコンタクトをとり、インタビューをして明らかにしたい。
書籍
・白河桃子、2016、『「専業主夫」になりたい男たち』、ポプラ社
・佐藤博樹・落石恵美子、2004、『男性の育児休業-社員のニーズ,会社のメリット』、中央公論新社
論文
・八木孝憲、2009、「専業主夫家庭妻のパーソナリティ--就労・育児・家族の観点から」慶応義塾大学大学院社会学研究科紀要、68巻、p.180-183
・八木孝憲、2009、「家族のオルタナティブ・ライフスタイルとしての専業主夫:家事育児に専念する男性(父親)に関する質的分析」、家族研究年報、34号、p.91-108
・島田直子,友野清文、2015、「「男性(主夫)が気持ちよく家事や育児ができる環境」について:主夫の状況と意識から」、日本ジェンダー研究、18巻、pp.77-89
・水落正明、2007、「夫婦間で仕事と家事の交換は可能か」.永井暁子・松田茂樹編、2007、『対等な夫婦は幸せか』、勁草書房、47-61
URL一覧
・wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%BB%E5%A4%AB
・厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/32_06.pdf
・イクメンクラブ http://www.ikumenclub.com/3kajyou/
・データえっせい http://tmaita77.blogspot.jp/2015/05/blog-post_23.html
・ファザーリング・ジャパン http://fathering.jp/
・秘密結社 主夫の友社 http://主夫.com/page/3
・レノンパパ http://www.aiikunet.jp/practice/father_support/17361.html
・八木孝憲の経歴について researchmap http://researchmap.jp/taka1028/