<「地図」を作る>
研究を進めていくプロセスは、しばしば先の見えない不安が付きまとう冒険のようなものだ。だから、簡単に道に迷ってしまわないように、自分の調べた先行研究やデータなどの情報を集めて、一望できる見取り図のようなものを作っておく。これを研究のための「地図」と呼ぶ。
地図は、いつも見て「いま自分はどこにいるのか(何をやっているのか、このままでいいのか)」を意識する。そして、必要が生じたら、新しいものに書き換えることが重要だ。
地図の内容は一律ではなく、個性があってよい。一般的な構成要素は、以下の通りである。
■問題意識(問題関心)
最初は、自分がなぜこのテーマを選んだのかを考えて、文章にしてみる。どこに「不思議」が感じられるのか。それを調べることに、どんな意義がありそうか。
問題意識は、【定期的にたちかえって書き換えていく】ものだ。この授業では、地図づくりを進めて、ある程度文献を読んだうえで、もう一度自分の書いた問題意識を読み返して、それをどう変えられるか考えてもらう。
そうしたプロセスを経て(また同時に調査を開始して進めるうちに)問題意識は、最終的には、「~の実態について調べたい」といった漠然とした表現ではなく、「~か」という明確な疑問文として示されるような、具体的で特化された「問い」(調査の文脈では「リサーチ・クエスチョン」とも呼ぶ)のかたちをとらなければならない。
■基本概念
その分野の研究にとって特に重要な概念を整理する。概念の定義(何を意味するのか)。その概念が使われるようになった背景、きっかけ、あるいはその概念を使うことによって得られる視点、など。どの文献の何ページにその定義が書いてあるのかを付記する。
■基礎的データの整理
その分野の研究を進めるための出発点となる基礎的なデータを整理する。(政府や自治体の統計データ、などなど)
データの出典を明示(ホームページの場合は、作成者・作成団体 URL 取得年月日⇒文献リストに入れておく。)
多くの文献で引用、紹介されているデータが望ましい。同様のデータの最新版があれば、それも集めておく。
■研究者
先行研究としてよく登場する論者、あるいは(名前を見る頻度は多くなくても)関心をもって読める論文の著者のプロフィール(所属大学・学部、主著など)をまとめておく。
■理論
これまで提出されてきた主要な知見(社会現象に関するとらえ方や主張を示す中核的な部分)
■文献リスト
地図の末尾は、文献リストにする。文献が増えてくると、内容によってグループ分けするのがよいだろう。検索記録(いつ、どのデータベースを、何という検索語で検索したか、ヒット件数は何件規模か(0件か、数十件か、100件以上か))もメモしておこう。