商店街における持続可能なまちづくりにおいて何が重要なのか 必要とされるのか
まちづくりとして挙げられるものの中には、大きなイベントを開催してその一時的な集客を活性化としているものがあるが、それは一過性のものでないか 本当の活性化と言えるのか
勝川スタイル(コンテンツによるまちづくり)
(13年度報告)
「勝川スタイル」は,最初に構想や計画があり,それを現実にあてはめるのではなく,自然に動きながら構想が生まれ,自己組織システムとしての,自立分散型「勝川スタイル」を形成することに意義がある。
「住みたいまち」「訪れたいまち」であるというブランドを確立することが,地域活性化にとって最も重要かつ効果的なことであるという認識からである。勝川は商店街と住宅街の性格を併せ持つ地域であり,「住みたい」と「訪れたい」が両立するようなブランド戦略が必要となるわけだが,活気ある商店街の存在が住民にとってメリットになるというメッセージを発することできるかどうかがキーポイントとなる
p.125 商店街PRのためにオリジナルのキャラクターを作成し、動画も作成
作成には愛知文教大学の学生がキャラクター作成、声優などを担当した
(14年度報告)
p.167 格差を広げないで,また地域のそれぞれの個性を大事にする形で実現する「キメ細やか」な心栄えをもつ「人づくり」こそ,「勝川スタイル」の特徴になる可能性があり, この可能性を最大限伸ばしていく必要がある。 そのことを,抽象的にではなく,地域消滅の危機にあり,労働人口も再生産労働を含めて停滞している日本において,地域から「輝く女性」の役割がある。そのことについて,「まちづくり」を進めている春日井市の女性たちこそが,「持続可能」な世界をローカルにもグローバルにも手を取り,作っていく相互の学び合いと連帯ができる 「輝く女性」たちであることを強調したい
p.113 通称「二水会」は,勝川駅前通り商店街の地元リーダーと商店街の外部から支援を行う大学教員,一般市民など約10 名が,商店街内部の運営に関わる主体(勝川駅前通商店街振興組合など)に対して,商店街でのまちづくりに関する事業・将来像などの提案や,内部主体の事業の評価・協働活動を行うことを目的に設立された組織
p.133 理念なきイベントは,単にその場の集客しか効果が無く,イベントが終われば再び閑散としてしまう現状には疑問すら感じる。イベントで街が良くなったところが果たしてあるのだろうか
p133 そこで敢えて全員の合意形成を目指すのではなく,各々の立場で大きな理念に向かい「コンセンサスを得るための無駄な時間や労力を省くこと」と「責任の所在を明確にした事業を推進すること」が合理的だと考えた。自立分散型まちづくりである。特に,商業の立場で地域の活性化を目指す我々の役割は,補助金体質の商店街組織等に固執することなく民間資本を活用することで資本の再流動化を促し,持続可能なまちを構成するという試みである。
まちゼミによるまちづくり
(内藤亮,2021)
(既存研究では,対象とした商店街活性化への方策について,一過性のイベントで終了しているものが多い。また,商店街全体で取り組んでいる事業が多いことも特徴である )
まちゼミとは
・商品についての専門知識が豊富な個人店舗の特徴を活かしたイベント
・商店街における買回りの促進および入店しづらい個人店舗の魅力の認知を目的に開始されたイベントのこと
・商店街の店主や店員が講師となって,商品の専門的な知識や技術・コツを無料で,事前予約した受講者数人に対してゼミナール形式で伝えるイベント
・この企画は,店主自身の店舗で開催するため,零細店舗でも実施が可能である。費用はチラシの作成費や広告費のみで,補助金に依拠せずに実施できる。また,商店会(商店主の団体)の枠組みにとらわれずに参加できる点も特徴 →商店街活性化という課題解決の可能性
・他のイベントと比較して,実施する際の仕組みが容易で,地域住民の 商店街への継続的な来訪を目的とした,店主が主体のイベントである
長所
①必要な設備や物品および費用が少なく,実施が容易な点 (まちゼミの講座は,事前に受講者が参加の予約をする仕組みであるため,必要な材料等も実施前までに適切な数量で発注が可能である。 そのため,余剰品による在庫への圧迫が発生せず,赤字が発生しにくいと考えられる(松井,2012;内藤,2017))
②まちゼミは日常の買い物として商店街を利用する地域住民を対象とする点 →地域住民を対象とすることで,商店街への来店頻度の増加に寄与できる
③ 単発的なイベントではなく,1 回につき 1 か月程度の期間にわたって実施される点→受講者と店主とのつながりが形成され,受講者が固定客となり得る可能性をもつ
・まちゼミも,「まちゼミ」としてイベント開催期間は定まっているが,店舗ごとに講座の実施日が異なるため,受講者が商店街を訪れる機会が増加する可能性がある。これにより,他のイベントとは異なり,まちゼミは商店街における継続的な回遊性の維持につながる可能性がある。まちゼミは商品の販売ではなく商品の紹介や体験を重視しているため、受講者に商品の販売を勧める行動は禁止
④商店街の全店舗が参加する必要はなく,参加意志のある店主のみで実施できる点→参加意志のある店主が行うため,イベントの質が向上し,長期継続に寄与していると考えられる
短所
①地域外からの来客の購買が見込めない点。商店街周辺の地域住民を対象とするため,広報は新聞の折り込みチラシが主流。商店街の周辺地域以外から受講者を呼び込まないため,新規客の増加に限界がある
②まちゼミ当日に気軽に受講しにくい点。地域住民がまちゼミを受講するにあたり,事前に店舗に電話等の予約が必要であるため,当日に講座の実施を認知しても,飛び入りで受講することは困難
③まちゼミが個人店舗の強みを活かした店主有志による活動という点は,言い換えれば,活動の成功および失敗は店主の意欲に委ねられていると指摘することもできる
・まちゼミの効果が顕著な地域では,まちゼミの特徴を十分に理解し,リーダーが存在する。その一方で,まちゼミを継続できていない地域では,金銭面では問題点がなくても,店主の意欲が乏しく,また,リーダーが存在しない地域が多い
(依藤,2014)
p.789 活性化しているとされる商店街では取り組みが長期にわたり継続して行われている
継続的な活動のためには、途切れさせることなく活動を展開していく必要があり、そのためには担い手がスムーズに交代することが重要
個店のリピーター獲得に結び付くことに加え、講師として各店から参加するものが顔を合わせるとともに企画や準備、振り返りなどを行う中で、悩みや発見への共感などを通して、他店や地域全体のことを考えるようになると言われている。
大阪府東大阪市の小坂商店街(一定の商業集積があり、商店街の枠を超えた活動が見られる、まちゼミの成功例である)
p.792 予約ゼロの講義が発生しないように、予約状況が芳しくない講座を、他の参加者が顧客に対して優先的に紹介する取り組みが行われた
若手の中心群3人はそれぞれ商店街を引っ張っていく役割をいつか果たすことを意識しつつ、一方で商店街の活動をより効果的にするための意見があっても言い出せない商店街組織内部の閉鎖的な雰囲気や、役員に特別な負担のかかるこれまでの活動の方法に限界を感じていた
実際の会合→中心群や関与群からの発言が比較的多かったが、無関与群や新規群からの積極的な発言もあり、その場に居合わせた誰もが了解することにより物事が決定され進められていったため、一方的に説明を受ける進め方とは異なり、参加者全体が主体的に参加する形になった
p.794 まちゼミはこれまで参加していなかった者を巻き込みながら、若手の中心群が次なる商店街の担い手として、活動に取り組んでいくための土台となるネットワークを新たに形成する機会ともなることが明らかになったそのためには、より多くの参加者を募る必要があり、取り組みの中核となる中心群は、普段の活動や回覧などの営みにおいて、より多くの店とネットワークを有しておくことが重要である
まちゼミに取り組むための場において重要なこと
①参加者が顔を合わせる継続的な場を持つこと
②参加者の主体的な参加をうながす自由な発言の場とすること
③重要なことはその場で協議し合意の上決定すること
問題点→回数を重ねることで会合に出席しない者が増える恐れがある そうなるとネットワークが形成されにくくなり、顔を合わせる中で共有される取り組みの目標も共有されにくくなり、取り組みが継続されにくくなる可能性が高い そのため、中心群から新たな参加店に対し取り組みの趣旨を十分説明し、会合への参加を促すなどの工夫が、取り組みの継続において重要になってくると考えられる ネットワークの強さが減退する場合も考えられる
バルイベントによるまちづくり
バルとは→スペイン語で、喫茶店・立ち飲み居酒屋・食堂など町の社交場をあらわす言葉である。
そして、スペイン人のバルの楽しみ方は、友達数人でこのバルに出かけるのだが、各自の「ひいき」のお店をハシゴする楽しみ方をしている。
日本では、北海道の函館でこのバルをもじったイベントが開催されたことをきっかけに、現在、各地でバルが「まちおこしのイベントや商店の活性化」といった形でおこなわれるようになった。
関西でも、伊丹市の「まちなかバル」を代表とし、ここ数年で様々な地域で行われるようになり、バルを目当てに地域をはしごするバルマニアも増えてきている。バルってどんなイベントですか? - 芦屋バル (jimdofree.com)
(石原,2018)
p.2 伊丹市が主催する「近畿バルサミット」(第11回)への参加16団体のうち,会議資料とし て配布されたガイドマップ等10点(滋賀県 2 点,大阪府 3 点,伊丹市を含む兵庫県 5 点) を比較し,多様性が確認される一方で,類似している場合が多いことを確認している。
これらから、バルイベントは継続的に実施されることが重要であるとの認識
p.13 奈良県内のバルイベントは、地域によって多様化している
大和郡山市の郡山筒井バルは,他の 5 か所のバルイベントと比較して実施範囲と運営組織の点で大きく異なっている。実施箇所については,他の 5 か所が複数の鉄道路線の結節点となる駅が実施範囲に含まれるが,郡山筒井バルは 1 路線の各駅停車しか停まらない駅の周辺である。運営組織は,実行委員会方式であるが,その主体は商店街振興会 となっている。他の 5 か所と比べて,乗降客数が比較的少ないにも関わらず,参加店舗や チケット販売数は増加傾向にあることから,運営方法によって継続した実施が可能である
橿原市の古代大和飛鳥バルは,運営方法の点でみると,実施範囲が広域で,かつ,まちゼミと連動する形で,同時期に長期に開催していることが他の 5 か所と比較して大きく異なっている。バルイベントは 1 ~ 3 日程度の開催がほとんどである中,極めて長い開催である。また,まちゼミと連動する形で市域全域を対象とする実施範囲という点でも極めて特徴的である。従来のバルイベントの実施方法を超えた運営方法による地域活性 化策として注視すべきである。→まちゼミとの関連性
[勝川スタイル]
オリジナルのアニメキャラクターを利用した3分ほどの動画によるファン獲得→一過性のイベントと変わらないのでは?飽きられたら終わりでは?
動画は何本も定期的に出るのか、それによる持続可能効果の期待は?どこで動画が作られているのか
[まちゼミ]
まちゼミに見い出す持続可能性→店主とまちゼミ受講生が直接コミュニケーションをとることによって継続的な訪問が期待できるかもしれない
一回一か月ほどの期間実施される→この点が一過性のイベントとの違い
Q.なぜまちゼミ参加店舗に業種の偏りがあるのか それによるデメリットとは
リーダーが存在している地域ではまちゼミが効果を発揮しているという結果がある→Q.リーダーはどのように決められるのか
Q.意欲のある店主とそうでない店主の違いはどのようなところにあるのか
☆Q.まちゼミの事業が継続できていなくてもまちゼミに高い効果を感じている地域とそうではない地域との違いは何か
他の地域ではどのように展開されているのか 例えば北陸ではどうか
Q.新規参加の店舗や受講者が少ない店舗へのケアとは具体的に何か→A.依藤2014 p.792
入善まちゼミ→今後の開催は未定
まちゼミという名称で行ったものは令和元年(2019年)7月が最後
ワークショップという形でやっているものはある(?)
黒部まちゼミ→今年度の開催予定はあるが、時期は未定
2022/8/26に参加店募集案内
南砺まちゼミ→7/20~9/10に開催予定
朝日まちゼミ→今後の開催は未定
2020/10/20~11/30の開催が最後(?)(朝日町商工会のホームページより)
高岡まちゼミ→今年度の開催予定はあるが、時期は未定
<論文>
[勝川スタイル]
羽後静子,2010,「「神話の創造」による商店街の活性化と持続可能なまちづくり - 春日井市勝川駅前通商店街の取り組みをモデルとして - 」『経済産業研究所20』中部大学産業研究所,66-77
羽後静子,2012,「「神話の創造」「新しい担い手」と商店街の活性化に向けた持続可能なまちづくり - 春日井市勝川駅前通り商店街の取り組みを事例として2011 - 」岡本肇『産業経済研究所紀要22』中部大学産業経済研究所,139-185
◎羽後静子,2014,「継続研究 『大学と商店街の連携による持続可能なまちづくり,自立分散型「勝川スタイル」の提案に向けた研究 : 春日井市勝川駅前通り商店街を事例として』2013年度報告 」岡本肇・川田隆『産業経済研究所紀要24』中部大学産業経済研究所,123-172
◎羽後静子,2015,「継続研究『大学と商店街の連携による持続可能なまちづくり,自立分散型「勝川スタイル」の提案に向けた研究 - 春日井市勝川駅前通り商店街を事例として -』2014年度報告 」岡本肇・水野隆・川田健『産業経済研究所紀要25』中部大学産業経済研究所,111-168
[その他]
北原啓司,1999,「持続可能な地域計画のためのまちづくり教育の可能性 」『都市計画論文集』公益社団法人 日本都市計画学会,547-552
古川康造,2007,「地域内の経済循環は可能か : 商店街からの発信(地域発信の企業経営,地域発信の企業経営と経営教育) 」『日本経営教育学会全国研究大会研究報告書』日本マネジメント学会,15-18
金澤誠一,2009,「都市中心部の自営業層の営業とくらしの実態--コミュニティを支えてきた自営業層の現状と課題 」『佛教大学総合研究所紀要』佛教大学総合研究所,193-209
●(依頼済)馬場義竜,2021「商店街の新たな価値創造と共創によるまちづくりの実践 (特集 今、注目される協同労働。持続可能な地域・職場づくりへ(1)) 」関谷修平『所報協同の発見』協同総合研究所,45-52
◎石原肇,2018「奈良県におけるバルイベントの地域的特性」『大阪産業大学論集 人文・社会科学篇 = JOURNAL OF OSAKA SANGYO UNIVERSITY Humanities & Social Sciences』 大阪産業大学学会,35-48→ 大阪産業大学リポジトリ (nii.ac.jp)
[まちゼミ]
◎内藤亮,2021「商店街活性化事業としてのまちゼミの全国的特徴とその課題・可能性 」『新地理』日本地理教育学会,17-35
内藤亮,2017「岡崎市まちゼミにみる地方都市中心商店街の再生の取り組み」『新地理』日本地理教育学会,51-68
◎依藤光代,2014「「得するまちのゼミナール」が商店街の社会的ネットワークに及ぼす影響に関する研究 」松村 暢彦『都市計画論文集』公益社団法人 日本都市計画学会,789-794
…山本朋文,2019「まちゼミに学ぶ 「地域と店の深いつながり」のつくり方 : 中小店が自分の手で演出できる立地エリア内の結び付き 」『商業界』商業界,50‐55
●新谷敬,2014「地域活性化に挑む 一過性では終わらせない 「まちゼミ」で商店街を学校に 消費者を取り戻す愛知県岡崎市」『ニューリーダー』はあと出版,64‐66