同好会に入門する子供たちや、武道スポーツセンターの教室に参加する子供たちに居合道の稽古を教える際、一番困るのが「刀」です。
居合道は模擬刀や真剣、あるいは鞘付き木剣を使いますが、子供たちの身長を考えると市販品は殆どありません。
模擬刀に関しては1尺5寸程度から準備されているものの、子供はすぐに成長するので購入しても数年で短くなってしまいます。子供用の模擬刀でも一般の入門用と大差なく、何度も買い替えることは経済的にも問題です。
そのため、小学三年生~五年生くらいの男の子の身長を考えて、複数本の木剣を作ることにしました。
木剣製作については、以前も「シン・居合道日記」に書き留めているので製作の仕方はほとんど同じです。ホームセンターで白木を買ってきて、刀のように切先を加工して刃と棟を区別できるようにカンナ掛けして紙やすりで磨き、その後にニスで表面の粗さを無くす方法です。
今回も同じ方法で製作しましたが、前回の柄巻きに使った真田紐に適当なものが無く、やむを得ず一色の平打ち紐を使うことにしました。前回の真田紐は厚さが薄く、捻り巻きも割と上手く行きましたが、今回は厚いので捻ってもなかなか上手く裏返しになってくれないのです。裏返しする部分も布が厚いため凹凸が大きく、見た目は前回の方がずいぶんよかったです。ということで、木剣作りは何とかできましたが問題は「鞘」です。
手作りなので「反り」は無い直刀なので鞘も真っすぐで良いので簡単にできると思いきや、素材がなかなか見つかりません。塩ビパイプを熱して作ろうと思いましたが、木剣の身幅と重ね厚さに該当する塩ビパイプはVP管では肉厚が大きすぎます。仮にできてもズングリした感じになって、子供が巻いた帯に納めることが出来ないです。
対策として、細かな波板のような厚紙を見つけ、それを貼り合わせて作りましたが、やはり木剣に比べて二回り~三回りくらい大きく、やはり帯に入りません。
困ったなぁ~です。
最初は厚紙で鞘を作ってみました
外側に黒い波板状の厚紙を巻いた様子
その後、良い案がなかったのですが、日鉄居合道同好会の小坂先生がステンレスパイプを万力で潰し、反りのある木剣が収まる鞘を自作したことを知りました。
それを見せてもらうことで製造課程やイメージも概ね判ったので、あとは材料探しでホームセンターやネットを調べた結果、物干し竿のパイプが厚さも薄く、直径も丁度良いことが判り、早速購入することにしました。ただ、小坂先生の手作りパイプ鞘は万力を使って少しずつ楕円形にしたため、鞘に圧縮時の細かな凹みがあるので、できるだけ一度に長い範囲を潰せるような、専用の圧縮道具を作る方がいいな・・・と思い、ホームセンターに通って考えることにしました。その結果、2✕4材を二段重ねにしてボルトで締めるタイプの工具を先行して作って、パイプの圧縮作業に取り掛かりました。
6本のボルトを少しずつ締めてパイプを圧縮します
上から見るとこんな感じです
潰れ方を見ながら圧縮力を調節します
圧縮は思ったように上手くいき、身幅30mmの木剣が通る幅に30mmの物干しステンレスパイプを潰して鞘の形にすることに成功しました!
ただ、圧縮する木材の長さが鞘の3分の1ほどで、圧縮継部分で若干の凹みが出てしまいました。
それを袴の側になる裏側にして栗方を配置すれば判りません。そういうような問題は多少ありましたが、木剣三振りに対する鞘が出来上がりました。
鯉口部分はステンレスの端部になるので、幾らやすり掛けしても鍔と鯉口の間に指や手を挟むと痛そうです。その対策は上の写真のように鯉口回りにタコ糸を巻いて、すべり止め兼用で挟まれ怪我の防止措置を図りました。見た目もまあまあでしょう!(^^)!
ここまで出来ればあとは色塗り。無難に黒色のカラースプレーを使って一気に塗装します。今年は気温が高く日射も強いのですぐに乾いて綺麗に塗れました。ただ、ステンレスパイプの表面を紙やすりで少し傷つけて塗料が載りやすくしたとは言え、金属にアクリル塗装だと持ち運びで鞘がぶつかると、だんだん剥がれてきます。もっと、弾力ある塗料を選択すればいいと思いますが、そのうち剥がれが酷くなってから再塗装を考えましょう。
ほぼ出来上がったら・・・残るは下緒の装着です。
塗装前の鞘(ピンク色部分はパテ埋め)
こじり部分は楕円の木片を接着
鯉口と栗方のイメージ
全体(子供の身長で長さを変えてます)