令和3年度昇段審査・段別選手権大会

投稿日: 2021/04/30 14:25:32

 4月29日、未明から雨降りの一日となりました。これまで30年近くこの日に審査や段別大会を経験しましたが、雨になったのは初めて・・・そんな感じです。雨で少し肌寒い会場も、昇段審査に臨む居合道愛好家で熱気があります!

 大分居合道同好会も初段に3名、2段に3名・・・合計6人が挑戦です。内訳は若い女性が4名、60代の男性が2名、皆さん、日頃から熱心に稽古をしていらっしゃるので合格は間違い無いと思っていますが・・・でも万一・・・こんな時は本人さんより、観ているこちらの方がドキドキです。会場には審査を受ける人しか入られません・・・二階席から見守るしかありません。

 9時半から審査が開始され、結果的に皆さん注意点をしっかり守ってケアレスミスもほぼ無く、落ち着いて演武を行っていました。心配は取り越し苦労でした・・・大丈夫です。

 全員の演武が終了後、審判会議の後に実技は「全員合格!」今回は他の受審者も問題はみられず、皆さんそれぞれの段位に応じた演武ができていました。良かったですね~ちょっとしたことで不合格者が出ると、例えほかの倶楽部の方でも残念な気持ちが場内に広がります。今回はそうしたこともなく、筆記試験も無事に終了し、最終的に全員合格でした!!・・・お疲れ様でした。令和3年度は初段~四段までに25名が挑戦しました!

 そうこうするうちに時間が過ぎ、午後からの段別選手権大会が始まりました。昨年は新型コロナウイルスの影響で中止となりましたが、今年はマスクをしたり、ソーシャルディスタンスをとるなり、安全を配慮して演武の競技が開催できるようになりました。私は審判なので試合には参加できませんが、参加者が緊張しているのはよく分かっています。初めて試合に臨む会員もいましたので、その気持ちも身にしみて・・・もしかすると、案外楽しんでいたかもしれません(^^;)

 今回、同好会からは、無段5名(全員女性)初段3名(うち1名は女性)二段は男性1名・・・そして三段は決勝進出を狙うSさん親子さんの2名・・・11名が参加しています。これをみても、女子会員が同好会を盛り上げていることが明らかです。頑張りましょう男性陣!

 さて、試合はどうだったでしょう・・・私は審判なのでゆっくりしているわけにはいきません・・・自分の試合会場で会員が出場する際は控えに戻ります。その時だけは会員の勝負をゆっくりと観ることが・・・緊張して観てました。第4試合会場では二段のYさんがリーグ戦を制し、トーナメントに勝ち上がりました!

 昨年は新型コロナの影響で段別選手権大会が中止となり、今回初試合のYさんの演武です。三段は過去に初二段優勝の経験があるSさん、そして3位入賞の実績があるSさんの娘さんKさん・・・今日はトーナメント決勝戦での親子対決・・・果たして実現するでしょうか?

 まず、リーグ戦でKさんは1回戦、2回戦とも完璧な演武で勝ち上がり、お母さんのSさんを2対1で破って1位通過!・・・Sさんも2位でトーナメント出場が決まりました。お二人とも、やはり強いです!

お母さんのSさんの試合を控え席で見つめる娘のKさん

安定した演武で勝ち上がった社会人1年生のKさん

 一方、私が審判をしている隣の第1試合場では無段の部が行われ、同好会の5名の女性達が戦ってる様子が目の端に見えるのです。でも、それを見ていると自分の審判がおろそかになるので観ることはできません・・・気になりながら「旗が揚がればいいかな」という感じで、今は自分の仕事を間違えずに行うだけです。その審判ですが、別府市民体育館剣道場の日曜稽古を6年近く続けると、全剣連居合の着目点が少し判るようになってきました。

 自分自身もそれを正しくできていない(トレースする努力はしていますが、なかなかできません)のですが、観ることだけは少し出来るようになってきた感じです。主審をつとめる際は緊張しますが、全剣連の着目点をどれだけ正確に演武できているかという観点で判定しました。結果として差し違いは無かった(副審2名が同じ旗、主審の私が別の旗ということ)ので、とりあえずホッとした次第です。

 そして決勝戦に臨んだ同好会のYさんの試合・・・主審の八段の先生はYさんの演武に旗を揚げましたが、副審2人は相手の旗でした。その時、背後おられた東範士が「主審は技の正確さ、副審は演武の勢いをとったか・・・」とつぶやかれました。おおっ!、そういう見解なのか!・・・これまで、2対1は甲乙付けがたい判定・・・そう思っていましたが、こういう判断もあるのか・・・審判の判定も奥深いと納得しました。

※この試合、動画で振り返ると先生の仰るとおり、Yさんは日頃の稽古どおり正確に演武できていました。

 対戦相手は片手抜き打ちが「抜け打ち」になる不正確さもありましたが「敵を意識した居合」を感じました。ということで、残念ながらYさんは準優勝となりましたが、八段の先生が旗を揚げてくれたこと、正しく居合が身についていたことは、稽古を正しく行っていたことになり、同好会の稽古の進め方は間違いでは無かったと思います。

 判田中学校武道場の稽古は「日曜稽古ではこういう風に体捌きをする」という感じで、私が習ったことをそのまま伝承する稽古です。それが正しく伝えられたことにも安堵しました。今後は試合に即した「勢いや間合い」も少しずつ教えていきたいと思います。

 さて、時間を巻き戻して・・・無段の勝敗は?・・・リーグ戦が終了した時点で勝敗表をみると、女子小学生のRさんがトーナメントに出場していました。彼女は小学3年生の頃から居合道の稽古を始め、昨年はコロナで長期練習休みもありましたが自宅でも足捌きや体捌き、刀を持たないままでのイメージトレーニングを行ってきた成果が発揮されました。最近、めざましく演武が上手くなっていましたので、トーナメント出場も偶然では無く、実力の成果と言って良いでしょう。トーナメントは1回戦で敗れたものの、見事3位で終了し、初出場入賞の偉業を達成しました!・・・簡単そうに思われる方もいるかもしれませんが、大人に混じって3位に入ることは凄いことなのです。彼女はまだ10歳・・・大人の10年は大して変化しませんが、子供の10年前は立つことも、おしゃべりもできなかったのです。それが大人と同じ会場で勝ち抜く・・・今後の成長が楽しみです。入門してくれてありがとう!

 無段にはこのほか4名の会員が参加しました。半年前に始めた女子小学3年生のMさん、旗は揚がりませんでしたが、気構えは一番だったですよ。普段の稽古での刀捌きもまだまだですが、足捌きや体捌き、切りおろしの姿勢、着座の姿勢・・・勢いがあります。3段優勝したKさんと従姉妹なので、お姉ちゃんから教えてもらって上達することは間違いありません!期待十分です!

 一方、社会人3名の女性は勝ち数と旗の数でトーナメントには出場できませんでした。隣の試合会場なので審判しながら観ることは叶いませんでしたが、控えに戻っている時に少し拝見できました。3名さんとも普段の居合は出来ていたように思います。リーグ戦の勝敗リストを見ると、2対1で敗れているケースもありました。3対0での勝ち負けもあります。同じ技量での試合が出来ていたのでしょう。トーナメントに上がった選手と比較して、それほど違う印象は無く、審判の着目点の違いかもしれません。

 そもそも彼女たちは居合を始めてまだ9ヶ月・・・その短期間で順当に成長しています。時間が少し足りないだけなので、来年は初段で良い勝負をし、入賞するものと確信しています。3人は一生懸命に稽古し、武道スポーツセンターを借りて稽古していたりします。来年はひと味もふた味も代わっているでしょう。そのうち、日曜稽古にも参加して腕を磨くといいですよ。

 では、男性軍はどうだったのでしょうか・・・勝ち負けはあったのですが、トーナメント戦には参加出来ませんでした。原因は男性特有の問題・・・刀を持つと力が入ってしまう、という男性居合人によくある現象です。稽古で指摘して修正は出来ているのですが、試合という緊張下におかれると、どうしても強く振ってしまう・・・実は私も同じです。とにかく斬ろう斬ろう・・・という心が邪魔して正確な動きを壊してしまうのです。本人さんは十分理解できていると思うのですが、試合となると男性は刀を強く振ってしまいますね。そこが審査でも試合でもマイナスに作用してしまうのです。丁寧さが無くなって、刀も身体もブレてしまうのです。

 東範士の言われる「無我夢中、我を忘れて考えずに、刀を振ることだけになっている」・・・これがぴったり当てはまります。僅か1kgしかない刀に、体重60kgの人の身体が振られてしまっている・・・これが負けた要因と思います。それと、古流と全剣連居合をしっかり使い分けなければ全剣連居合は勝てないということです。古流は古流の良さ・・・少し前傾して切りおろす所作は本当に居合を感じます。でも、それでは全剣連の試合では勝てない・・・時に試し切りをした後に全剣連居合をすると、両腕の力具合、足の踏み込みも変わってしまって、上手く演武が出来なかったりします。会員の皆様、また落ち着いて、丁寧に稽古をしていきましょう。