新しい模擬刀来る!

投稿日: 2016/06/14 14:55:20

普段の稽古には使い慣れた2尺5寸5分の真剣を持って行くのですが、別府稽古会の稽古後は、そのまま県外の仕事場に向かうので”真剣は持っていきたくない”という意識がありました。

そのため、4月上旬に岐阜の濃州堂さんの五十嵐社長さんに「模擬刀を作って欲しいけど、バランスの良いのは出来ますか?」って相談しました。

この相談の前に、実は3月の北九州大会で濃州堂さんがいつものようにお店を開いていましたので、展示してあった模擬刀を手に取って、バランスや重さをチェックしていたのです。

しかし、どれも長尺になると重ねが厚く、ズドーンと重くなってしまうので期待はできませんでした。ただ、その中に一振り手持ちの良い模擬刀があったので、これを基本に注文できるか確認しました。当然、「できるよ」という社長の言葉で、今になってまた模擬刀を注文することにしました。

濃州堂さんには模擬刀のランクに幾つかの区分があって、私は「五十嵐刀」という標準的なランクで、オプションを変えることで自分好みの模擬刀にしようと目論見ました。ただ、最大の目的は「重さとバランス」が今使っている真剣に近くなるように作刀してもらうことです。

周囲から「模擬刀はどこで作っても長尺ではバランスが悪いよ」という意見もあり、出来上がるまで結構心配になりました。

真剣の8分の1という金額ですが、やはり大金を支払って気に入らないものが仕上がっては何にもならない!というリスクを抱えて2か月を待ちました。

もちろん、そうしたリスクを最小限にするため、五十嵐社長さんには”面倒な客だなぁ”と思われたかもしれませんが、細かく仕様を書いて注文書に添えて手紙を出しました。しばらくしたある日、列車に乗っている時に見覚えのない電話着信がありました。

セールスかな?と思い、列車内であったので電話には出られず、ホームに着いてから気になって掛けなおすと・・・「濃州堂の五十嵐です」という声で、五十嵐社長さんが注文書と手紙での仕様を参考に、「重さはもう少し軽くできますよ」とか「柄の長さはどうしますか?」とか、手紙の1つ1つを順に確認してくれて、最後に「大丈夫ですから待っていてください!気に入るようなものを作ります。重さも860グラムくらいにできるかも」ということで作刀が始まることになりました。

今使っている真剣の重さは980グラム、それ以前に30代後半まで使った2振り目の本拵えは何と1050グラム!

真剣との重さの差は70グラムと卵1個分ですが、模擬刀と真剣ではバランスも違い、模擬刀は今では片手抜き打ちはもう無理です。

今度仕上がる860グラムの模擬刀のバランスがどのくらいか?・・・これが実際に届いて振るまでの心配事になりました。

でも、結論を先に言いましょう。

濃州堂さんの職人さんの腕と、五十嵐社長さんのチェックなどを経て、6月上旬に届いたものは、真剣とほぼ同じ感覚、若干軽めの振りやすい刀になっていました。

五十嵐社長さんに旗が上がった感じでした。「判定!勝負あり!」という雰囲気です。心配は無用でした。

さて、その模擬刀の出来、写真はまだ撮っていませんが、そのうちアップしましょう。

率直に、刀身はどれも同じですが、薄刃仕上げで樋を深めに掘ってもらうセレクト刀身に変更し、その結果、軽くなって音鳴りも良くなっています。

でも、真剣の音とは少し違うのです。音質は真剣がやはり澄んでいますね。

真ん中が真剣、上が今回作刀した模擬刀 模擬刀の波紋も湾れを採用

拵えも真剣と可能な限り同じ仕様にして、使う時の違和感を無くしています。

重さを抑えるため、真剣では金具は全て銀ですが、模擬刀の拵えは全て真鍮です。これだけで50グラム程度軽くなっているようです。

鞘塗も同じ、鍔も同じデザインですが、細かな造りは真剣の方が丁寧な仕事をしているのは仕方ありません。

それで、何となく真剣の影武者のような模擬刀に仕上がりました。

下緒は濃州堂さんに「赤と黒の模様でカタログのコレ」と伝えていたのですが、到着したものは赤が多く、少し派手でデザインも真剣とは違いました。

稽古場に持って行くと、「いいと思いますよ」ということで、”案外これもいいかなぁ~”と模擬刀の別の個性ということで気に入りました。

これで、別府稽古会では模擬刀を使うことになりますが、6段審査までは真剣を使って文字通り真剣に稽古しようと思っています。

もちろん、模擬刀でも真剣に稽古します。そうでないと何のための模擬刀か判らなくなります。

真剣と区別なく使っていきたいと思います。