鯉口の修理

稽古で刀を抜き差しするうちに、鯉口が少し緩んできました・・・というか、今の状態は刀を納めると鯉口と鍔の隙間が1mmほどなので一番良い状態なのです。

しかし、このままにしておくと遠からず鍔と鯉口が当たってしまうので(切羽があるので直接当たるわけではありませんが)ゆるみが大きくなって、逆さにすると刀が抜け落ちてきます。

連休を利用して鯉口の修理しその過程を写メっておきましたので、同好会の皆様の中で同じような状態の方が居ましたらこれを参考に、ご自分で修理してみるのも良いでしょう。自分の刀を自分で修理するのも居合道の楽しみのひとつです。

それでは、今の状態の鯉口を見てみましょう。

鯉口に鍔がほぼ当たっています。一番いい状態ですが遠からず緩んできます。

それでは、修理に入りましょう…

道具は左のような感じで、特殊なものはありません。

カッターは大きいサイズのものが良いですね。ヤスリは紙と鋼鉄を使い、接着剤は粘性のある瞬間接着剤です。本当は木工用ボンドを使いたいですが、時間がとても掛かります。

それでは、補修用の木片を割り箸から切り出します。

厚さは0.5mmくらいで、幅と長さは写真のような感じです。

カッターで割り箸から薄くはぎ取った後、周辺を少しハサミで調整します。角があると接着しにくいので、少し丸く処理しましょう。

木片は「厚めの鰹節」のイメージです。

周辺を紙やすりで削ってバリを取り、瞬間接着剤を鞘側に何か所か点付けするようにします。鯉口にそっと差し込んで押さえることで接着剤が広がります。

鞘は水平にして作業します。

立てると木片が外れて鞘の中に落っこちて出てこなくなります。要注意です!

※左の写真は横撮影を回転させ、鯉口が縦向きになっています。

木片を割り箸などを使って鞘の内側に押し付け、接着させます・・・が、瞬間接着剤を使っても「ポロッ」と剥がれたりします。

瞬間接着剤といっても、瞬く間に接着するわけではありませんが、逆にちょっとした間があると即固まってしまうこともあるので気が抜けません。

こんな感じになったら少し時間をおきます。

ここまで来たら、修理は8割くらい終わったと言っていいでしょう。

鯉口修理で難しいのは最初の木片の切り出しです。

厚すぎると刀を納めた時にハバキで引っかかって入らなく、削り取りの時間が長く掛かります。薄すぎると調整厚さが足りず、刀を納めてもスカスカ状態が改善しません。要は経験です。

いよいよ、調整に入ります。

鉄製のヤスリで木片と鞘の境を丁寧に均し、木片の厚さを目検討で調整した後、全体を滑らかにするために紙やすりを細長く丸めて出し入れし削っていきます。

では、第1回目の調整確認です。

・・・6~7mmほど入らない状態です。これでは見た目が少し悪いので、もう少しヤスリで削って調整してみましょう。

削りすぎると何のために木片を接着したのか判らなくなり、初期状態に戻ってしまいますので、微調整は慎重に行わないといけません

第2回目の確認です。今度は3mmほどになりました。このくらいにしておけば、稽古で抜き差しするうちにハバキで徐々に削れ、ちょうどいい納まりになってきます。

短気になって無理矢理押し込むと鯉口が割れてしまうので、落ち着いて調整してくださいね!

このようにして、ご自分で愛刀の修理をすることで、ますます気に入った刀になってきます。今回は撮影しながらの修理だったので案外時間が掛かりましたが、それでも賞味20分くらいだったかな?・・・という感じです。

居合道を学ぶ者として、この程度の手入れはできるようにしておきたいです。

ただ、刀の手入れとして模擬刀の目釘を抜いて柄を外す方がいますが、基本的に模擬刀はそのような手入れを想定して作っていません。素人が柄を外すのは刀のガタを招くので止めた方がいいです!

私も初心者の頃それをしてしまいましたが、結局、ガタツキが治らず、使えない模擬刀になってしましました。興味はあるでしょうが、模擬刀はそうした構造にはなっていませんので注意してください。

逆に、真剣は手入れできますので、経験がある方は目釘の点検で柄を外すことはあるかもしれません。しかし、ガタつかない刀の柄を外すことは無駄な行為と思うので、異常がある時に留めた方がいいでしょう。銘は一度見て撮影しておけば十分です。