植物も「呼吸(こきゅう)」をしていて、空気中から酸素や二酸化炭素や水蒸気を体内に取り込んだり、吐き出したりしています。植物の葉には「気孔(きこう)」と呼ばれる小さな口があって呼吸をしています。
気孔を見るには、葉っぱの表皮を剥がして観察する方法もありますが、表面の凹凸を写し取る「レプリカ法」での観察がお手軽でおすすめです。
樹脂などで表面の凹凸を写し取る方法。顕微鏡で見るための薄い試料を作るのが難しい場合に使われる。
スンプ(SUMP)法が有名だが、簡易版として速乾性の木工用ボンド、マニキュアや液体絆創膏を使う方法もある。
【追記】木工用ボンドに比べて、ネイル用の透明マニキュアの方がより細かい部分の転写ができるので、おすすめだ。
木工用ボンドを使って見る
今回は、入手が容易な速乾性の木工用ボンドを使ってのレプリカ法で葉っぱの気孔を観察した。教育研究所の構内で見つかる植物39種の気孔を観察し、見やすくて良い試料になる種類を探してみた。結果、
単子葉植物では、オオムラサキツユクサ(気孔が大きめで見やすい)、エノコログサ、ユリ、シランなど
双子葉植物では、ウメ、クスノキ、サツマイモ、モチノキ、アオキなどが見やすいことがわかった。
【手順1】葉の裏面に木工用ボンドを塗る
木工用ボンドは、厚く塗ると乾くのが遅くなるため、薄く塗るのがコツ。気孔は普通、葉の裏面に多い(例外もある)。
時間に余裕があるなら、何種類かの葉を取ってきて、ボンドを塗って、しっかり乾くまでしばらく放置しておくと効率よく観察できる。
【手順2】セロハンテープを貼り付ける
ボンドの樹脂がしっかり乾いて透明になったら、セロハンテープを張り付ける。
指紋が付くので、セロハンテープの粘着面にはあまり触れないようにする。この時、テープの端に油性ペンで植物の種名を記入しておくと、あとで間違うことがなくてよい。
【手順3】セロハンテープをはがす
葉っぱが破れないように、ゆっくりとセロハンテープをはがす。テープにボンドの薄い膜がくっついてくる。
※指紋が付くので、セロハンテープの粘着面にはあまり触れないように。
薄い膜が付いたセロハンテープをスライドグラスに貼り付ける。しっかり押さえる必要はない。軽く貼り付ける感じでよい。
カバーグラスは不要であることも、顕微鏡の操作に慣れない児童生徒には、都合が良い点かもしれません。対物レンズを資料に近づけすぎて割ってしまう危険がなくなります(トラウマになって、顕微鏡が嫌いになったら問題だ~)。
また、作業時間が十分取れない場合は、あらかじめ何種かのプレパラートを教員が事前に作っておくことも可能です。
気孔は小さいので、100~400倍で観察したい。
【ヒント】顕微鏡の照明灯をステージの真下でなく、少し斜め下から照らす(偏射照明法)と陰影がついて、立体感がでて見やすい場合がある。照明装置が固定されている場合は、ステージ下の円形絞りの穴を左右にずらしてやると、偏射照明風にできることがある。
100倍では、小さな気孔がたくさんあるのが観察できる。
葉脈の部分の細胞の形が違っているのがよくわかる。
400倍では、個々の気孔の形がはっきりと観察できる。
いろいろな植物で、気孔の並び方や大きさ、形の違いなどを観察してみよう。
直線状に並んでいる
太い毛も生えている
小さい
ブッソウゲ(ハイビスカス)の気孔
気孔の開いた状態を観察するのは、案外難しいらしい。今回試した木工ボンドなどを葉に塗るレプリカ法(一次レプリカ法)では、閉じた状態の気孔を観察しているそうだ。