教育研究所の構内や周辺で見かけたキノコを紹介します(それほど多くはないが)。
瓦茸。タマチョレイタケ科のキノコで、子実体が屋根瓦状に重なり合って生える様子からこの和名があります。世界中に広く分布しており、枯れ木に普通に発生する白色腐朽菌で、広葉樹や針葉樹の木材を白っぽく腐らせます。
カワラタケは、日本産業規格(JIS:Japanese Industrial Standards)でK1571:2010「木材保存剤の性能基準試験」で木材の腐りやすさ(耐朽性)を調べる際に、オオウズラタケ(褐色腐朽菌)と共に標準的な菌株として使われています。
ニセショウロ属の1種の胞子
アルコールで封入し、400倍で観察しました。直径約10μm前後のトゲトゲした針状突起のある胞子が見えた。糸状の組織(弾糸)も見られないのでニセショウロ属でよいでしょう。
<参考>
偽松露の1種。2025年12月5日、教育研究所構内の植え込み地上に発生しました。海岸のクロマツ林などに発生するショウロ(松露)というキノコに似ているが違った仲間という意味の和名です。ショウロ属(Rhizopogon)のショウロは食用になるが、ニセショウロ属(Scleroderma)は有毒種が多く、消化器系の中毒症状を引き起こすそうです。
赤山茸。ヌメリガサ科のキノコ。傘の直径が2~3cmほどの赤いとんがり帽子のようなキノコです。英名もwitch's hat(魔女の帽子)。古くなったり傷ついたら黒く変色するのが特徴的です。広義としたのは、近縁の種類が複数含まれている可能性があるとされるからです。
腐植の多い地上に発生していたハラタケ属(Agaricus )のキノコ。傘と柄のある「きのこ型」をした子実体で、傘下面のヒダを覆う内被膜が見えます(下図も参照)。内被膜は胞子が成熟する頃には柄に垂れ下がるか脱落していることが多いです。胞子は成熟すると暗紫褐色になるが、写真は未熟な状態で、少しピンク色を帯びたくらいの段階。
←ハラタケ属の1種の胞子
菫埃茸。別名ムラサキチドメ、スミレノウタケ。田の畔や畑地、池の土手などイネ科の草の枯れたものが堆積するような場所に多いキノコです。9月のヒガンバナが花茎を伸ばしだす頃によく見かけます。成長途中ではソフトボール大の白っぽい塊状のキノコで、成熟すると紫褐色の胞子を出すようになります。
ホコリタケ類の胞子は、非常に細かくて400倍以上の倍率でないと形はよく分かりません。また水を弾くので、少し洗剤を溶かした水やアルコール等で封入してプレパラートを作るのが見やすいです。表面に針状の突起が生えて、トゲトゲした形の胞子が楽しいです。キノコ一つで大量の胞子を作るし、有色胞子なので、特に染色しなくても観察しやすいもの良い点です。
薄歯茸。シワタケ科のキノコで、広葉樹の枯木に発生します。写真のキノコはカワヅザクラ(河津桜)の枝に発生していました。背着生~半背着生で、傘はあまり発達せず、下面の子実層は薄歯状になります。
粉吹猿腰掛。マンネンタケ科のキノコで、広葉樹の生木、切株、枯木に発生します。褐色~赤褐色の胞子を放出し、それが傘の上や周辺の草木にも堆積して「ココアの粉をまぶしたよう」になっていることがあります。広義としたのは、オオミノコフキタケなど肉眼的には区別しづらい複数種があるとされているからです。
公園の芝生や河川敷の草地などに群生することもあります。傘の直径は普通10cmくらいになるが、大きなものでは20cmを超えることがあります。
大白唐傘茸。ハラタケ科のキノコで、元々は熱帯から亜熱帯に分布する種です。温暖化の影響で分布域を広げています。1990年代に関西でも見つかるようになった(奈良県での最初の記録は1993年8月で、私が大学4回だった当時に滋賀大学におられた横山和正先生に教えてもらいました)。
<参考>
緋色茸。タマチョレイタケ科。南方系のキノコで、広葉樹(まれに針葉樹)の枯れ枝に発生しています。鮮やかな緋色をしたキノコで、傘下面も濃紅色の細かい管孔状になります。
比較的大きな子実体を作るキノコの仲間ですが、日本に何種類あるのか?はっきりしていません。種子植物や哺乳動物など研究が進んだ分類群では、図鑑を調べたら種名が分かる場合が多いのですが、キノコはそう簡単ではありません。ましてやカビの範疇の小さな菌類や地衣類も名前調べは大変です。無理に種名を付けないことも大切です。
近年の出版業界の苦境で、書籍としての図鑑の刊行はなかなか難しいようで、本格的な新しいキノコ図鑑は当分出版されそうにないですし、出ても非常に高価になると思います。
Webでキノコの情報を発信されている研究者の方もおられるので、いくつか紹介しておきましょう。
<キノコ調べの参考になるサイトなど>