太陽光で加熱調理
ソーラークッカーを作ってみる
ソーラークッカーを作ってみる
小春日和(こはるびより:晩秋から初冬の暖かな日)の陽気に誘われて、こんな実験をしました。
太陽光を熱源にして食品の加熱調理を行う装置「ソーラークッカー」。製品化された器具が理科実験室にあるのを聞いて、使ってみることにしました。
鏡面の反射板を直接見続けるのは、目に良くないです。できればサングラスをした方が良いとのことです。
ヤカンに入れた500mlの水を何度まで温められるか。予備実験の結果は下記の通り。
2025/11/19の午後、天気は晴れ。気温は17℃くらい。
13:36 16.8℃
13:50 48.3℃
13:58 63.7℃
14:08 72.3℃
14:19 84.0℃
なんと43分間で80℃を超える水温に達しました。ゆで玉子くらいなら十分作れる温度です。
この予備実験の結果に味をしめて、翌日も天気が良さそうなので、いくつか簡易なソーラークッカーも自作して、さらに実験をしてみることにしました。(生玉子は持ち寄りすることに)
100円ショップやホームセンターで使えそうな材料を集めました。
職場にあったコピー用紙の段ボール箱を使って、簡易なソーラークッカーを作りました。制作時間は約5分。
加熱に使う容器は、熱を吸収しやすい黒色で、熱伝導率の高いアルミ製がよいというので、アルミの鍋や飯ごう、メスティンを準備しました。
段ボールの簡易クッカーには、黒色のメスティンに生玉子と水を少し入れ、透明なOPP封筒に入れて、集まった熱が逃げないようにしました。
OPP封筒はポリプロピレン樹脂製で透明度が高く、耐熱温度は120℃以上あります。
あり合わせの材料を組み合わせて作った「なんちゃって集光型」のソーラークッカーです。
アルミ貼りのロールマットをフレームに張り、後方からヒモで引っ張って凹面を作ってみました。カメラ三脚にセットできるようにし、太陽の方向へ向けやすいように工夫しています。飯ごうを載せる台には譜面立ての脚部を流用しています。
9時15分。製品の「かるぴか」、段ボール簡易ソーラークッカー、なんちゃって簡易集光型ソーラークッカーを並べて、太陽の方向を向くように設置しました。
生玉子いっぱいの黒鍋。水温は19℃
段ボールの簡易ソーラークッカーは、OPP封筒の保温効果がうまく働いて、10時57分には64.6℃に、11時21分には95℃くらいまで温度が上がりました。ゆで玉子もバッチリでした。
アルミシートを凹面にした簡易集光型ソーラークッカーは、飯ごうをセットする位置が難しく、OPP封筒などの保温効果もないため、温度は50℃くらいまでしか上がりませんでした。改良の余地ありです・・・。
晩秋の穏やかな日差しでしたが、きちんと集光できるとパワーがありますね。
製品版の「かるぴか」にセットした黒鍋の水温は100℃に達し、沸騰しました。
ゆで玉子も美味しく仕上がり、皆さんの昼食のおかずになりました。
製品版ソーラークッカーの実力を垣間見た実験結果となりましたが、適当につくった段ボール製簡易ソーラークッカーでも十分使える性能だったことも分かりました。
ぜひ皆さんにもソーラークッカーでの調理体験をして欲しいなと思いました。参考になるサイトはとてもたくさんあるので、探して欲しいと思います。太陽の日周運動を体感したり、光線が集まると高い温度になることなど理科の勉強になるだけでなく、ガスも電気も使わないエコな調理器具であり、世界中で利用されていることもあります。また、災害時の備えとしても作り方や使い方を知っておいて損はない道具です。
上の図のように、放物線とは中学校で習う二次関数y=ax^2のグラフの形ですね。オレンジ色の線が太陽からの平行光線ですが、青い線の部分が鏡面なら、ここで反射して光が焦点(しょうてん)に集まるのです。
二次関数 y=0.025x^2
焦点(距離)=1/4a=1/4×0.025=10、x=10→y=2.5、x=20→y=10、x=30→y=22.5
上の図を参考にして、型紙を作って放物面に近い凹面鏡を作ることもできるでしょう。ただし、精度の高い放物面鏡(天体望遠鏡の反射鏡など)では、光がほぼ1点に収束するため、非常に高温になり大変危険ですので、ご注意ください(安全第一です)。ソーラークッカーではそこまでの精度は不要です。
熱水を作るソーラークッカー(2025年11月21日追記)
熱水を作るのに特化したソーラークッカーもあるようです。
太陽ケトル(Sun Kettle)とかソーラーケトルの名称で製品化もされています。以前はよく見かけた屋根の上に載せる太陽熱温水器とよく似たもので、内側に黒い水筒、外側に透明な保温層の2重構造で太陽熱を蓄熱する装置です。太陽ケトルでは、さらに太陽光を集光するための反射板が付加されています。パネル型ソーラークッカーの1種です。構造自体は単純なものなので、あり合わせの材料で作ってみることにしました。
使った材料は、アルミ製の黒い水筒(つや消し黒で塗装した)・水筒がすっぽり入るガラス容器(麦茶用の耐熱ガラスポットがシンデレラフィット!、無ければOPP封筒で覆ってもOK)・土台の合板(36cm四方くらい:家に転がっていた端材)・リメイク用アルミシート(100均)・アルミのキッチンガード(100均)・適当な木片ブロック13個、竹串1本・両面テープ・画鋲数個・30cm定規・油性ペン・針金少々・食品用ラップ少々・デジタル温度計。
GeoGebra 関数グラフを利用して、放物線を描きました。
アルミシートを貼り付けた土台の板に収まる放物線を検討したら、焦点距離が3cmくらいでうまく収まりそうでしたので、y=0.084x^2のグラフを見ながら下書きし、木片ブロックを放物線に沿って両面テープで貼り付けました。
キッチンガードは、シワをできるだけ伸ばし、縁の部分を折り曲げて少し補強します。木片ブロックに沿うように放物線状に曲げて、画鋲で木片ブロックに固定しました。
土台の適当な位置に穴をあけ、竹串を立てて、影で太陽の方向に合わせるようにしました。
あとは焦点位置に水筒の壁面が来るように、耐熱ポット内に水筒を入れてセットすればOKです。
注意したいのは、水蒸気で爆発しないように水筒や耐熱ポットの口は密閉しないこと。今回は食品用ラップで封することにしました。
簡易なソーラークッカーでは、薄いアルミシートや段ボールなど、軽い材料を多用しています。
無風の時はよいのですが、少し風が強くなると、反射板が変形したり、場合によってはクッカーごと飛ばされたりしてしまいます。
重りで押さえたり、ヒモや針金で引っ張ったり、土の上ならペグや杭を打ち込んで固定したり、風への対策は必須です。
あいにくの曇天で気温は17.8℃、たまに陽光がさすくらいの天気でしたが、夕方少し晴れたので、最初18℃だった水温が、60℃くらいまで上がりました。天気さえ良ければ、かなりの温度まで上がるのではと思います。
飲み水などの低温殺菌(パスチャライゼーション)では、65℃で30分の加熱で多くの微生物を死滅させることができるそうですので、このような目的には使えそうな気がします。
コーヒーの空き缶と空き瓶でソーラーケトル
(2025/11/24追記) 自作のソーラーケトルを少し改良しました。風対策のため、竹ひごやアルミ針金などで反射板の固定を強化しました。ケトルには缶コーヒーの黒い空き缶、保温用の容器にはインスタントコーヒーの空き瓶を利用しました。晩秋の天気の良い日でしたが90℃を超える水温まで加熱されました。
12月下旬頃が太陽の南中高度が最も低くなる時期です。冬至の太陽の南中高度は、90度 -(その場所の北緯)-23.4度で計算できます。教育研究所付近は北緯34度32分なので、34.5度として、90-34.5-23.4=32.1度になります。けっこう低い高度なのですね。ちなみに夏至の日なら78.9度なので、46.8度も低いことになります。
ソーラークッカーの設置の仕方は、この太陽高度に応じた工夫が必要になります。
黒アルミ袋で湯沸かし
100円ショップで、窓用のアルミ断熱シート(プチプチの梱包シートにアルミシートを付けたもの)を見つけました。これなら折り込んでテープで留めるだけでソーラークッカーにできそうなので、実験してみることにしました。
さらにケトル部分には、黒いアルミのチャック付き袋が使えるのかもテストしてみました。保温用にはPET樹脂の広口瓶が使えそうなので、これもテストです。
2025/11/27 午前は天気が良くソーラークッカーのテスト日和。アルミ断熱シートをパネル型ソーラークッカーになるように折り込んで、養生テープとビニル紐で形を作りました。風で飛ばされないようにコンクリートブロックで重りをしました。ケトルを置く台にもなりました。
9:20~11:00にかけて、ほぼ晴天・無風の条件でしたが、14℃くらいだった水温が95℃まで温まりました。
その後、11:50まで放置していたら、100℃に達していて、PET樹脂の容器が変形してしまいました・・・(OPP封筒やガラス瓶のほうが良かったかも)。
パネル型ソーラークッカーは、そんなに厳密な形である必要はなさそうです。光を集めるような形を作って、反射用にアルミシートを貼り付ければ、それなりに使える物が作れてしまいます。
防災グッズとして売られているアルミ保温シートも反射材に使えますので、ガムテープとヒモや針金などを非常用持ち出し袋に入れておけば、段ボール箱で形を作ってアルミシートを貼れば、作れますね。飲み物やレトルト食品を温めたりするのに活用できるはずです。