校庭や駐車場などの隅で、緑~黒褐色のワカメみたいな謎の生き物を見かけたことはないだろうか? たぶん、それはイシクラゲ(石水母)。
イシクラゲ(石水母)
ネンジュモ科ネンジュモ属 (Nostoc:ノストック)の藍藻で、世界中に分布しているすごい生き物。藍藻(らんそう。=シアノバクテリア)類なので、細胞には核がなく、原始的な原核生物である。細菌ドメインに属する生物なので、いわゆる植物ではない。光合成を行う生物で、葉緑体の起源になった生物の仲間である。
すごいのは、乾燥すると活動を停止して乾眠(かんみん。=クリプトビオシス)すること。乾燥しても再び水分が供給されると復活して活動を開始する。なんと87年間乾燥状態で保存されていたイシクラゲの標本に水分を与えたら増殖したという報告もあるそうだ。
イシクラゲは本来、石灰岩の多い山に自生していた生き物と考えられている。石灰をよく撒く校庭やコンクリートで固められた駐車場など、人工的に作られたカルシウムが豊富な場所はイシクラゲにとって棲みやすい環境になったようだ。
このイシクラゲ、顕微鏡で観察しても面白い。
寒天質の基質に多数の細胞が連なった細胞糸が絡まり合って、藻塊(群体)を作っている様子を顕微鏡で400倍くらいに拡大してみると観察できる。この細胞が連なった様子を数珠(じゅず)に見立てたのが「ネンジュモ(念珠藻)」の名の由来。
細胞が一列につながった糸状体が見える。
所々に見られる少し大きめの丸い細胞は、窒素固定のために特殊化した細胞(=ヘテロシスト)。