教育研究所の周りには、田んぼも広がっています。田んぼの周囲には、水を出し入れするための用水路が巡らされています。細い用水路にもいろんな生き物たちが暮らしています。
手長蝦。テナガエビ科。長く発達した鋏脚が特徴。日本の九州以北では通常テナガエビ、ヒラテテナガエビ、ミナミテナガエビの3種しか見られないそうだ。写真の個体はたぶん。テナガエビかな。
鎌柄。コイ科の魚で、河川の中・下流域や湖沼の砂底に生息する。2019年に、カマツカ、スナゴカマツカ、ナガレカマツカの3種に再分類された。写真の個体はカマツカだろう。
鯉。コイ科の魚で、口ひげがある。ユーラシア大陸原産だが、移植によって世界の温帯・亜熱帯域に広く分布している。
密士失比赤耳亀。カメ目ヌマガメ科。研究所の近くの用水路で幼体の死体が転がっていた。この付近で繁殖したらしい。
米国東南部からメキシコが原産地。幼体が「ミドリガメ」の名でペットとして輸・入販売され、野外に放たれ野生化し全国に広がった。奈良盆地でもどこの池や川でも普通に見られる状体になっている。在来の生態系に影響を及ぼしつつある外来種として、特定外来生物に指定されている。
ウマビル
用水路にいた。たぶんウマビル(馬蛭)。吸血性はなく、巻き貝類を捕食するそうだ。
漢字では大カナダ藻。トチカガミ科の水草で南米原産、日本では東北地方以南に野生化している。日本で野生化しているものは雄株のみらしい。長いものは全長1mを超えるくらいに伸びる。幅2~5mmくらいの薄く細長い葉を3~6枚輪生状に付ける。
薄い葉を顕微鏡でみると、細胞が整然と並んで見える。細胞内の葉緑体が流動する様子も見やすく、よい観察材料となる。
逆巻貝。サカマキガイ科の淡水貝で、北米原産。日本でも1930年代後半に持ち込まれたものが野生化し全国に分布する。貝殻の巻き方が左巻きで、タニシやモノアラガイとは逆方向なのが特徴。触角が細長いムチ状なのも特徴である。透明なゼラチン質に覆われた卵嚢を産む。水槽などで大発生することもある。
平巻貝。ヒラマキガイ科の小さな淡水貝で、種類の見分けは難しい。用水路で採ってきたオオカナダモの葉に付いていた。貝殻が平面的に巻くのが特徴。サカマキガイ科と近縁で、貝殻は左巻きで、触角が細長いムチ状なのも特徴らしい。
川蜷。カワニナ科の細長い巻貝で、殻長3cmくらいになる。広く東アジアの亜熱帯~温帯域に分布する。ゲンジボタルの幼虫などの水生昆虫の餌としても知られる。
姫田螺。タニシ科の巻き貝で、北関東以西に分布。タニシ類の中ではもっとも汚染に強く、田などに普通に見られる。
羽二重物洗貝。モノアラガイ科の淡水生の巻貝で長さ1cmくらいになる。北アメリカ原産で、日本での記録は1977年からあるそうだ。モノアラガイに比べると、全体的に細長い。
真蜆。シジミ科の二枚貝で、川の中流から上流の砂礫底に棲む。田んぼ横の用水路でも普通に見つかる。
タイワンシジミなど外来種の二枚貝が日本各地で野生化し大繁殖しているため、種の同定は難しい。在来のマシジミは、環境省レッドリスト2020では、絶滅危惧種に指定されている。
大きな巻き貝で育つと殻高7cmになる。俗にジャンボタニシと呼ばれるが、タニシの仲間ではない。リンゴガイ科で本来は、南アメリカのラプラタ川流域に生息する。鮮やかなピンク色の目立つ卵塊を産む。
奈良県では養殖場から逃げたものが野生化し、昭和60年以降、分布域が拡大している。
亜米利加蜊蛄。アメリカザリガニ科でアメリカ合衆国南部が原産。日本には、1927年にウシガエルの餌用として20匹持ち込まれ、逃げ出したものが野生化し、全国に広がってしまった。西日本で「ザリガニ」といえば本種。ちなみにニホンザリガニは、北海道と北東北に分布するが、絶滅危惧(II類)とされる。脚は5対10本で、特にオスの第1脚は大きなハサミ状になる。
2023年6月より条件付特定外来生物に指定され、野外への放出、販売目的の飼養、輸入等が禁止されている。
参考:条件付特定外来生物
カブトエビ、カイエビ、ホウネンエビの仲間は、鰓脚類(さいきゃくるい)という原始的な甲殻類です。奈良盆地ではアジアカブトエビとアメリカカブトエビが見つかるそうです。
写真のカブトエビは、尾節部分の棘の配列からすると、アメリカカブトエビです。
<参考>
クイズ。「次のうち、メダカにもっとも近縁の魚はどれ?」(1)コイ (2)アユ (3)サンマ 調べてみてね~。
カメムシ目アメンボ科の昆虫。飴棒・飴坊。和名は、飴のようなにおいがして、体型も棒状であることから。水面を滑るように自由に移動できる。英語では「water strider」(水面歩行者)や「pond skater」(池を滑る者)と言われる。中足と後足の先に細かい毛があって、油が出て水をはじく。水面に落ちてきた虫などを食べている。
(参考)水の上をスイスイ歩ける「アメンボ」の不思議<クボタのたんぼ
https://www.kubota.co.jp/kubotatanbo/livingthing/water-strider.html
泥鰌。ドジョウ科の淡水魚で日本、朝鮮半島、中国中南部からベトナム北部、台湾に分布する。主に用水路や田んぼなどに棲む。体長は8~20cmになる。細長い丸棒形の魚で5対の口髭がある。江戸時代には広く食用にされていた。
このほか周辺の水路では、タウナギも見かけている。
水路に生えたアオミドロを顕微鏡で見ると、プランクトンが何種類も見つかる。ピンセットでアオミドロをほんのひとつまみスライドグラスに載せ、カバーグラスをそっと被せ、顕微鏡で見ると、そこには微小な生き物の世界が広がっている。写真は100倍くらいで暗視野照明で見た様子。ツリガネムシの仲間(Opercularia属かな?)が着いていた。
背景が黒くなる暗視野照明は、工夫次第で学校の顕微鏡でも可能です。透過光で見るシルエットとは違って、生き物本来の色が見えて美しく、おすすめの照明方法である。