4月、川沿いの土手や空き地などに黄色い菜の花が咲いている。ほとんどはセイヨウカラシナの花であるが、花序の茎や花が異様に肥大して奇形になっているのを見かけた。
植物体の一部が異様に肥大化したりする場合、多くはアブラムシ類やタマバエ類などの寄生による「虫瘤(むしこぶ、虫えいとも言う)」であったりするが、セイヨウカラシナの瘤は、虫が原因ではないらしい。
原因になっているのは、ナタネ白さび病菌(Albugo macrospora:アルブゴ・マクロスポラ)という鞭毛菌類・卵菌目・白さび菌科に属する菌類という。このように菌類の寄生によって植物が肥大化したりするのは「菌えい(きんえい)」と呼ばれる。
奇形の花茎(菌えい)
表面に白い粉が吹いているようなものもあった。
がく片や花弁も葉のようになっていたり、雌しべも異様に大きくなっていたりした。
茎の表皮の下から吹き出物のように白い瘤ができており、内部の白い粉(卵胞子 、らんほうし)を放出するようだ。
白い粉のできた部分を薄く切り出すため、ピスに挟んで、簡易ミクロトームでそぎ切りする。薄く切れた欠片をスライドグラスに載せ、水で封入した。
顕微鏡100倍で観察した断面のようす。葉裏にできた子実層には、たくさんの丸い卵胞子ができていた。また、赤紫色の色素を含む細胞層も観察できた。菌えい部分は、赤っぽい色になっていることが多いが、この色素細胞のためとわかる。
400倍で見た様子。丸い卵胞子(らんほうし)が、棍棒状の柄の先端にできている。記載の大きさよりも小さく、まだ未熟な状態のようだ。
<参考サイト>
▼白さび病<病害データベース<武蔵野種苗園
http://www.musaseed.co.jp/disease/%E7%99%BD%E3%81%95%E3%81%B3%E7%97%85/
▼Albugo macrospora (Togashi) S. Ito<Discomycetes ets.
https://chawantake.sakura.ne.jp/data/Albugo_macrospora.html
▼ナバナ白さび病
https://gaityuu.com/yasai/nabana/sirosabi/page0001.htm
▼セイヨウカラシナの病気(白さび病)<こぎつねさんぽに出かけよう