3月、春先の田んぼの畦などにツクシ(土筆)が伸び出す。春の暖かい日にツクシを採って、お浸しや卵とじにして味わったことはあるだろうか。ほのかに苦みのある春らしさを感じられる食材でもある。
さて、ツクシとは、シダ植物のトクサ科のスギナが胞子を飛ばすために伸ばした胞子茎(ほうしけい)のことを指す。スギナの胞子茎は緑色の葉緑体(ようりょくたい)をほとんど持たないので光合成はしていない。光合成をするのは、スギナの栄養茎(えいようけい)で、胞子茎と栄養茎、それぞれで働きを分けているのだ。
スギナの葉は、どの部分だろうか?
ツクシの節の部分にある「はかま」が「葉」に相当する部分になる。茎を取り囲む鞘のようになっているので、葉鞘(ようしょう)と言われる。
スギナの栄養茎にも葉鞘がある。この部分が葉に相当する。
ツクシの頭頂部には胞子嚢(ほうしのう)がある。胞子の詰まった袋状の構造で、緑色の胞子が詰まっている。
スギナの胞子には、葉緑体があるそうだ。
1本のツクシで、およそ200万個 もの胞子が作られるらしい(生き残れるのは、ほんの一部)。
ツクシの頭部をスライドグラスに軽く当てて、胞子を落としてやると良い。
100倍までの低倍率なら、カバーグラスは不要だ。
スライドグラスの上方からLEDライトで照らして、40倍で観察。丸い胞子が見える。胞子の緑色がよく分かる。
胞子から4本の糸状の足が伸びているように見える(実際は2本の交差中央部に胞子が付いている)。これは弾糸(だんし)とよばれる付属物で、湿るとらせん状になって胞子に巻き付き、乾燥すると伸びる。
顕微鏡で覗きながら、スライドガラスの胞子にそっと息をふきかけると、弾糸が胞子に巻き付き、息を止めると乾燥して弾糸が伸びる様子が観察できる。
このような弾糸の性質があるので、スギナの胞子は晴れた日に胞子嚢から飛び出して、遠くへ飛んでいくことができる。
100倍にを上げて、スライドグラスの下方から照らす透過照明で観察。弾糸のねじれた様子がより詳しく観察できる。
水を落として、カバーグラスで封入する。水で湿ると、弾糸が胞子の周りに巻き付くようになる。
胞子が飛び出して、条件の良い場所に着地すると、前葉体 (ぜんようたい)という有性世代の体(配偶体ともいう) になる。前葉体上で作られた精子と卵子が受精して、次世代のスギナの姿の胞子体(ほうしたい)が育っていきます。
2025/7/19 御所市森脇の川沿いでイヌドクサがたくさん生えているのを見かけた。
イヌドクサは、スギナと同じトクサ科のシダ植物の1つ。スギナのように胞子茎と栄養茎には分かれず、栄養茎の先端に胞子嚢ができる。見た目は「緑色のひょろ長いツクシ」。夏の時期に観察できる。
<参考サイト>
ツクシって一体何者?<Biome
https://biome.co.jp/biome_blog_162/
飛び出す胞子 ツクシの秘密<NHK for School
https://www2.nhk.or.jp/school/watch/bangumi/?das_id=D0005100166_00000
スギナの研究-つくしの生える条件-<自然科学観察コンクール(第56回入賞作品)
https://www.shizecon.net/award/detail.html?id=390
スギナのサバイバル術
https://fudemaka57.exblog.jp/30832739/
スギナ他(トクサ属)<福岡教育大学 理科教育講座
https://staff.fukuoka-edu.ac.jp/fukuhara/keitai/sugina.html
スギナの前葉体<Omnisサークル第61回