5月になると、いろいろなイネ科の草の穂が出てくる。そんな中で、道ばたでよく見かける白っぽい穂を出すチガヤと黒っぽい穂を出すシナダレスズメガヤを観察してみた。
初夏に白い毛の穂が目立つチガヤ。万葉集ではツバナ(茅花)という名で出てくるそうだ。穂が出る前の葉鞘に包まれた若い穂を口に入れるとほんのり甘みがあって、昔はおやつ代わりに噛んでいたそうだ。機会があれば、味見してみるのもいいだろう。(注意:チガヤの味見は、一部の人にアレルギーを引き起こす可能性もあるため、心配な場合は避けること)。
白い毛の穂は、火口(ほくち)として火起こしに利用されたり、外傷の止血に用いられ、地下茎や根を干した物は茅根(ぼうこん)と呼ばれ利尿などの薬に使われた。晩秋になると葉が紅葉して美しい「草もみじ」の風景を作る。
一方でチガヤは、とても繁殖力が強い植物でアメリカ大陸では外来種で問題となっている。世界の侵略的外来種ワースト100にも選ばれており「世界最強の雑草」の称号?もある。
花が終わると、白い毛が目立って、チガヤらしい姿になる
イネ科の穂は、たくさんの花(小花)の集まったもの。
赤紫色のめしべの先が、白い毛の間からたくさん出ている。
この時期の穂は、赤っぽく見える。
イネ科の植物では個々の花を小花(しょうか)と呼びます。
花びらは無く、雌しべや雄しべが、頴(えい)と呼ばれる葉に包まれていて、地味に見えるかもしれないが、こういう花もある。
イネ科の花粉は風に飛ばされて雌しべに届くので、雌しべの先は花粉を受け取りやすいようにひげ状やブラシ状になっている。
チガヤは、小花の基部から長い絹糸状の白い毛がたくさん伸びている。
南アフリカ原産のイネ科スズメガヤ属の多年草。英名はウィーピング・ラブグラス。日本には1959年にアメリカから導入され、道路法面の緑化用に使われ、全国に分布が広がった。日本の侵略的外来種ワースト100に選ばれ、外来生物法でも要注意外来生物に指定されている。
シナダレスズメガヤは、エチオピアで食されるイネ科の穀物「テフ」に近い種類だそうで、製粉して発酵させインジェラという料理になるのだそうだ。
小穂(しょうすい)が黒っぽい暗紫色で、遠目にも黒っぽく見える
花粉が見えている
シナダレスズメガヤの穂を見ていると、小さなアブラムシが付いていた。
ムギヒゲナガアブラムシかな?