トゲチシャの葉で方角はわかるのか?
~葉茎にトゲのあるレタスの仲間~
~葉茎にトゲのあるレタスの仲間~
キク科アキノノゲシ属の一年草または二年草。原産地は地中海沿岸で、世界中に帰化。道端、空き地、荒地など、人為的に撹乱された場所に生える。花期は7~9月。
日本では北海道で1949年に初めて採集され、現在は日本全域に広がっている。交通量の多い、国道沿いなどの道端に多く、草丈50~200㎝くらいになる。葉の基部が90°くらいねじれ葉身が垂直になって並ぶ姿が特徴的。茎や葉裏の葉脈上に鋭いトゲが並んでいて、これが名の由来になっている。
ある程度大きくなった葉は、基部から約90度ねじれて、葉身の平面が地面に対して垂直方向になる。
アメリカでは、トゲチシャの葉面の向きが南北の指標になるということで 'compass plant'(羅針盤植物、方向指標植物)とも呼ばれている。
コンパス植物とは、自然の光条件下で、葉やつぼみが南北の方向を向く植物のこと。モクレンの蕾の先が北の方に向くことなどもこの例らしい。
さて、教育研究所の周辺で見たトゲチシャの葉の向きから、方角はわかるだろうか?
上の写真は、すべて南側から撮影したトゲチシャの株。赤い文字は葉の上面が南側から見える葉、青い文字は葉の下面が南側から見える葉である。葉の並びも茎から放射状に各方角に出ており、「南北の指標になる」と言われても「葉の向きから方角はよくわからない」という観察結果であった・・・。
葉がねじれて垂直になるのは、何かしら生態的な意味があるはずで、一説では光合成のためにより多くの陽光を受けられるようにしていると言われたりもする。そういう意味もあるのかな?と思うが、上の写真のように葉の裏表が揃って南側を向いたりもしていないようだ。太陽が空高く登る夏の日差しを受けるなら、わざわざ葉がねじれて垂直方向になる必要もないように思う。
トゲチシャは、国道などのアスファルト舗装の道沿いに多いが、そういう環境は夏の暑い日差しや照り返しの光を浴びて、とても高温になり乾燥する場所だ。葉身を垂直にするのは、葉面に当たる強い太陽光を避け、葉の温度が上がりすぎるのを防ぎ、葉からの水分の蒸発を抑えるためじゃないか?と思ったりもする。原産地の地中海沿岸も乾燥して暑そうだし。
食卓でもおなじみの結球レタス(玉ぢしゃ)は、学名を Lactuca sativa var. capitata と言う。
トゲチシャの学名は、Lactuca serriola で、レタスの属名と同じだ。じつは、レタスはトゲチシャから品種改良されて生み出された野菜と言われている。英名もprickly lettuceで「とげらだらけのレタス」「ちくちくしたレタス」の意味だ。
実際、今でもトゲジシャの若い葉は、食用にされているそうだ。
トゲチシャの蕾と果実