アパラチアの源流で天然ブルックトラウトを釣る
天然ブルックトラウトを釣る
三歳魚と推定されるオス。繁殖期を迎え胸や鰭の紅が映える
[ブルックトラウト]は[ニジマス]や[ブラウントラウト]とは異なり、古くからアパラチア(北アメリカの東海岸に南北に延びる古い山脈)に生息していたトラウトである。産業の発展に伴う山林の伐採や鉱山の開発、外来種の移入などによりその数は激減したが、近年の自然保護活動により、生息地域は拡大している。 ニジマスやブラウントラウトは比較的早く大きくなり、引きも強く楽しいが、美しい天然ブルックトラウトを釣るのも面白い。ブルックトラウトの平均サイズは10インチから26インチほどされており、寿命も7年に及ぶと言われているが、ピッツバーグ近郊のアパラチアの源流域に生息する天然ブルックトラウトは成長が遅く、寿命も短いようである。天然ブルックトラウトのみが繁殖する河川で見られる一般的なサイズは一歳魚で4インチ、二歳魚で5.5インチ、三歳魚で7インチ程度である。三歳魚から成魚になり、繁殖可能となる。ブルックトラウトは産卵が終わると死ぬように遺伝子的にプログラムされているわけではないが、源流域のブルックトラウトで四歳魚の数は少なく、五歳魚(10インチ程度)と考えられる個体を見つけることは珍しい。オスは鼻曲がりになる前に寿命を迎えてしまうことが多いようだが、小さな個体でも繁殖期には深緑色の背と紫のパーマークの魚体に加え鰭や腹が鮮やかな紅に染まりとても美しい。放流が行われている河川のなかには放流魚と天然魚が混在している場合もある。放流されたブルックトラウトは天然ブルックトラウトより明らかに大きく、9インチ程度が一般的で野生化したものでは14インチに及ぶものもいる。オスは鼻が曲がり、体高がせり上がってくる。
PFBCのトラウト繁殖プログラム
Trout water classification ブルックトラウトも他のトラウトと同じく養殖され各地に放流されている。[PFBC]の放流事業はもちろんゲームフィッシングを目的とするものではあるが、トラウトの自然繁殖域の拡大もうひとつの目的である。PFBCはいくつかの[プログラム]を作成し、トラウトの自然繁殖、生態系の回復を目指している。これらのプログラムを有する河川はPASDAのサイト上にあるファイルをダウンロードしGoogle Earthに組むこむことによりGoogle Earth上に表示することができる。
Class A stream
Class A streamの一つCamp Run。小さな河川ながら、夏でも枯れることがない。
PFBCはペンシルバニアの河川をAからEまでランク分けしている。これらのグレードは面積あたりの魚の総重量で決められ、Class A streamは最も魚影が濃く、自然繁殖で魚数を維持している河川である。Class A streamはPFBCサイト上の[マップ]で公表されているが、Class B以下については公表が控えられている。放流事業を通じて十分生態系が回復し、十分な自然繁殖が確認されるとClass A昇格し公表されるようである。Class Aは十分な自然繁殖により漁獲量が維持されているため、放流はされていない。一年中釣りは可能であるが、持ち帰りを含めて魚を殺すことを禁じられている。ブラウントラウトやレインボートラウトの繁殖が確認されている河川もみられるが、多くはブルックトラウトが繁殖している。持ち帰ると程なく枯渇してしまいそうな小さな川が多く、ルールは守りたいものである。
Class A河川は小さな河川にもかかわらず、広い分水界を持ち、夏でも冷たく、枯れることの無い河川である。夏の渇水期には周囲の河川は水温が上がり渇水になり釣りには厳しいが、ここでは年中釣りを楽しむことができる。また山もなだらかな事が多く、トレッキングロードが並走していることもあり、日本ではアクセスしにくい源流釣りを楽しむことができる。
Pittsburghより近い河川は[Capm Run]もしくは[McConnells Mil Run]である。前者はブルックトラウトが、後者はブラウントラウトが繁殖している。
Wilderness trout stream
Wilderness trout streamの一つRoaring Runの朝。人の手を排除した森林は深く、昼でも暗い。
PFBCにはClass A steam以外にWilderness trout streamと呼ばれるプログラムある。分水界内の山林を含め河川に至るまで出来る限り人工物を排し、生態系を回復させるのが目的で、Class A streamよりも挑戦的なブログラムである。PFBCのウエブサイト上にこのプログラムが紹介され、漁獲量の向上を謳っているものの、釣りの可否は記載されていない。またPFBCサイト上のマップには河川が公表されていない。PFBCサイトをくまなく探すことによりようやくQ&AにWilderness trout streamの記載が確認され、レギュレーションはClass A streamと同じであることが判明した。すなわち年間を通しての釣りが可能であるが、持ち帰りは禁じられている。また餌釣りでもフライ、ルアーフィッシングでも構わない。放流は行われておらず、すべて天然トラウトである。ピッツバーグより最も近い河川はRoaring Runである。
Reproduction
トラウトの自然繁殖が確認されている河川である。成魚放流が行われている川も含まれている。この中にClass AからEまでの河川も含まれている。Class A以外はどの河川がどのグレードに入っているのかはわからない。
Roaring Run
Roaring Runはトレッキングロードと何度も交差する。交差点には大きなプールが出来ることが多く、人気のない早朝はチャンス。
概要
Indian Creekの支流で、Forbes State Forestの中にあるRoaring Run Natural Areaを水源林に持つ。ピッツバーグより最も近いWilderness trout streamである。
場所
http://www.dcnr.state.pa.us/cs/groups/public/documents/document/dcnr_002564.pdf
Pennsylvania Turnpikeを東に向かいDonegalで降り、711(州道31号)を東に向かいその後南下する、Championで左折しCounty Line Rdを走るとまもなく駐車場が左に見えてくる。川まではトレイルロードを歩くことになる。South Loop Trailをしばらく歩いた後Roaring Run Trailに道を変えるとまもなくRoaring Runに到着する。
特徴
Roaring Runは放流がされておらず、天然ブルックトラウトの生態がよくわかる。時々上記のような四歳魚が釣れる。
周りの森林と同じく1900年代には森林伐採により禿山になった過去があり、主にOakなどの広葉樹による再生林からなるが他の森林と比べて鬱蒼として昼でも暗い。小さい川ながらも水量は安定しており、至るところから湧水が湧き小さな流れを作る。川はトレイルロードが絶えず交差しており、離脱は容易であるが、かなり歩かねばならず体力を要する。トラウトの放流は無く、釣れる魚はすべて自然繁殖したブルックトラウトと考えられる。
ポイント
下流に行くほど水量も増し、渓相も良くなり良い型が釣れるがトレッキングロードが並走していない。あまり下るとプライベートエリアに侵入する。マップ上3つの支流を持つが2つ目の支流との合流点までが良い釣り場になる。それより上流は次第に川幅も小さくなり、型も小さくなる。トレッキングロードは水源まで並走するが釣りにはならないであろう。小さな川なので基本的には3番ロッドの釣りが望ましい。
Camp Run
Camp Runに限らずForbes State Forestの一帯には石楠花が自生する。夏に綺麗な花を咲かすが、低木なうえ丈夫な葉をもち、糸が絡むと良くフライを失う。
概要
Indian Creekの支流でForbes Tate Forestの中にある。ピッツバーグより最も近いClass A streamの一つである。Roaring Runより更に小さな川ではあるが、Roaring Runに匹敵するほど魚影は濃い。
場所
[3] Pennsylvania Turnpikeを東に向かいDonegalで降り、州道31号(711)を東に向かいJones Millをそのまま直進する。500メートルほど走り左折し381号線に乗り込み北上する。1kmほど走ると右手に公園の駐車場が見えてくる。駐車場から一旦381号へ出て北上し1,2分歩くと橋があり、その下を流れる小川がCamp Runである。上流1マイルでトレッキングロードが交差するがそれまで川にアクセスするポイントは無い。
特徴
落葉広葉樹を主体とした再生林からなる。上も横も木々に覆われキャスティングに苦労する。川は平坦で緩やかであるが、時折プールがあり、勝負場所となる。Class Aに指定されてから、釣り客が訪れるようになり、それが原因か、型が小さくなったという。魚影は濃く、小さなブルックトラウトがフライに果敢にアタックしてくる。トラウトの放流はなく釣れる魚は自然繁殖したブルックトラウトである。水温も低く、suckerなどの雑魚はいない。
ポイント
上流のトレッキングロードよりCamp Runを望む。まだまだ川は続くが流れはいよいよ細くなり、魅力的なプールも減り、周囲が茂みに覆われキャストが難しくなる。
下流の381号から入川する。途中から他の人に入られる可能性は少ないが逆に脱出するのに少し手間取る。上流に向かって右手にトレッキングロードが並走し、橋から1マイル上流で合流する。トレッキングロードを超えて遡上も可能ではあるが、0.5マイルもしないうちにプライベートエリアに侵入し、立入禁止の表示が出、直接林道に出ることはできない。上流の林道を歩けば再び州立公園のエリアに入ることはできるが、水量の少ないこの川で更なる上流を目指す価値があるのかはわからない。最上流には池がありそこからCamp Runが始まると考えられるが、再入川から3マイル上流である上に帰路は未舗装の林道となるため釣行は厳しいであろう。
Linn Run
概要
秋のLinn Run
Linn Run State ParkとForbes State Forestの中を流れる小川である。河川自体は特別なレギュレーションもないが、ブルックトラウトは自然繁殖している。河川に沿い車道が伸びておりアクセスは良好で、ピクニックエリアやキャンプエリアがあり家族連れで訪れることも可能である。下流と上流では渓相も魚種も異なり、天候や水量に対して柔軟に対応できる便利な川かもしれない。
場所
http://www.dcnr.state.pa.us/cs/groups/public/documents/document/dcnr_003750.pdf
70号線をDonegalで降り、東に進み、すぐに州道711に乗り込み北上する。北東よりLinn Run State Parkに入る。
特徴
所々にHemlockの林がみられる
Laurel Summitの南東を流れ、公園を縦断する道路は自動車で移動が可能であり、源流地点まで容易にアクセスできる。どこにでも車を置き川に入ることができるため、釣り客が上流に入られることもたびたびであるが、一般的に彼らは釣りあがらず、淵にとどまって釣ることが多いためある程度すみわけは可能かもしれない。ほかの森林の例にもれず一度はげ山となったが、その後再生し、多くは広葉樹が占める。ほかの森と異なりHemlockがよく生えており伐採を逃れたのかもしれない。 Linn Run State Park内に位置する下流域はブルックトラウトとブラウントラウトが放流されている。 Forbes State Forestへ向けて遡ると、川幅が狭く、水量が落ちてくる。放流魚は少なくなりネイティブのブルックトラウトが釣れるようになる。
ポイント
Linn Run State Park内
Linn Run State Park内を流れるLinn Run(水量も多く、型の良いブラウンやブルックが多く潜む)
Linn Run State Park内を流れるLinn Run
PFBCはLinn Run State Park内にのみ放流している。下流から公園内に入るとすぐに左手に駐車場が見える。駐車場の下流は滝やテーブル状の岩場があり夏場は家族連れ客の憩いの場となるため釣りにならないであろう。駐車場の横から釣りを始めることができる。水量も多く高低差もあり大きなプールがところどころにある。各プールに多くのトラウトが潜むが、プレッシャーも大きく、慎重なアプローチを要する。正確なキャストと丁寧な釣りを心がければよい釣果が望める。道路から川へのアクセスが良すぎ、たとえ先行しても途中で釣り客に入られる。トラウトフィッシングシーズンには避けたほうがよいかもしれない。
Grove Run
Linn Run State Park内にはRock RunとGrove Runの二つの支流がLinn Runにそそぐ。Rock Runは文字通り岩の間から水が落ちてきているようなところでアクセスすら難しいが、Grove Runはトレッキングロードに沿い上流を目指すことができる。水道の蛇口をひねったような水量しかないものの、枯れるようではなく、ネイティブのブルックトラウトが繁殖している。型は小さいが、ヒトに対する警戒心が薄く、フライを落とすと果敢に食らいついてくる。基本的にForbes State Forest近辺のネイティブのブルックトラウトの成長速度ではトラウトの持ち帰りサイズに到達することは難しく、全部リリースになる。 Grove RunとLinn Runの合流部付近はピクニックエリアになっているが道路わきには湧水を採取できるようになっている。おいしい水でわざわざポリタンクで取りに来る地元住民もいる。
Forbes State Forestの入り口からQuarry Run合流部まで
Linn Run State Park内に放流されたトラウトが遡上するため、ちょくちょく釣れる。しかしながら河原が乾燥し、植生が悪いせいか釣果が悪い。
Qurry Run合流部からFish Runの合流部まで
Forbes State Forest内を流れるLinn Run(水量は減り放流魚は見られなくなり、天然ブルックがよく釣れるようになる)
水量はRoaring Runと同じぐらいになり、渓相も似てくる。放流されたトラウトは釣れなくなる。二つの合流点の中間に大きめの駐車場がありその上流あたりでは安定した釣果を経験している。Fish Runの合流から少し上ると大きなプールがありそこを超えるとトレッキングロードをまたぐトンネルがあり、そこから先は藪が濃くて釣りにならない。