第20回例会(その2)

投稿日: Apr 12, 2014 6:36:50 AM

今回取り上げる対局は、3月の例会で13路盤デビューしたSN特別会員と私との13路盤3子局です。

SN特別会員は最初に4子で私に勝ち、その後の対局が本局です。

黒2,4は比較的珍しいが中央を意識した気分の出た打ち方。9路盤から13路盤になったことで碁盤を広く活用しようという(無意識かもしれないが)思いが読み取れて好印象。

白5のカカリに対する黒6以降は所謂「ツケノビ定石」という基本形。この後の黒の一手は?

実戦は黒10と押えました。白は11の這い込みを決めて、13とカケツイで立派な根拠を持ちました。

実はこの黒10では以下のように打つべきでした。

定石は黒1押えるのが正解。以下5までが予想される変化。実戦と比較して黒地が大きくて白地が小さくなっているのがわかると思います。

手順中3は変わった手に見えるかもしれませんが、これで白A、黒B、白Cとデギる手を防いでいます(Cの石はDでシチョウで取られることをご確認ください)。ちなみにこのようなつなぎ方をケイマツギと呼びます。

ただ心配なのは、黒1と押えた直後にAからデギる変化でしょう(恐らくSN特別会員もその手を心配したのだと思う)。その変化を次に検討します。

白2から4のデギリには一旦5とアテテから黒7と下がるのが一番わかりやすい受け方。次に×に切られると白3子が取られるので白8とカケツグしかありません。そこで黒9と押えます。

白10のコスミに対して慌ててダメを詰めずに黙って黒11と下がるのが好手。白12と手数を伸ばしても黒13から着実にダメを詰めます(ここでは15を先に打っても結果は同じ)。

ここでこの攻め合いを検討すると、◯で示した黒のダメは3つ。一方の×で示された白のダメは4つ(11の真下の×に一回打たなくてはならないこと、そしてその右に打ったときにアタリとなるので△につなぐことに注意してください)。これでは黒が先に取られてしまいそうですが、ここで黒に巧い手があります。

黒19とわざと取らせるのが手筋(これをホウリコミと呼びます)。白は20と取るよりなく、以下21から順にダメを詰めれば攻め合いは黒の一手勝ち。

ここで黒19を打ったときの最終図と、打たなかったときの最終図を見てください。

この黒25で白9子が先にアタリになっているのがわかります。

一方19のホウリコミを打たずに順にダメを詰めた結果です。黒23とダメを詰めても白9子はアタリになっていません。次は白番なので黒石が先にアタリになって取られてしまいます。

これらの2つの図をよく比較して、黒19のホウリコミの効果で白のダメが詰まっていることをご確認ください。

長くなりました。実戦に戻りましょう。

白19に対して中央を大事にする黒20は正解。ただ黒22,24のハネツギは時期尚早。白25を利かして(相手が必ず応対しなければならない手を打つことを利かすという)白27のハネが盤中最大。

黒22ではまず黒1を利かして、3と押えるべきだった。実戦よりも中央の黒地が大きくなっていることを確認してください。

黒3に対してその左にキル手も気になりますのでその変化も紹介します。

白4のキリには5,7,9とダメを詰めるのは当然としても、その後の白10のキリに対して12とつながずに11とハネる手が巧い手。以下13と打って右下と右辺が連絡し、黒15,17までで白7子は黒だらけの周りでいくらもがいても助かりません。

黒32以下は省略。この時点では非常に細かいですが、棋力の差を考えると黒が勝つのは大変な局面です。

本局は戦いがなく平和に終わった一局でした。黒の疑問手といえば黒10,24くらいでよく打てていましたが、それでも地の囲い合いで甘い手を打つとここまで細かくされてしまうのです。たとえ地を囲うだけのように見える手でも、正しい手を打つためには「ヨミ」が必要だということがわかったかと思います。ヨミを鍛えるには詰め碁を解くのが一番です。

あと置碁の要諦は、白石を攻めながら(白石を楽に活かさない)利益を挙げて行くことです。特に相手の石を攻めずに中央の地を囲おうとしても、中央は隅や辺と比較して効率が悪いため、なかなか巧く地になりません。

「白に楽をさせない」

このことを意識しながら打つようになるともっと強くなると思います。