投稿日: Jan 10, 2015 12:1:32 PM
次に取り上げるのはTS会員とKAT会員との一局です。
黒8のコスミツケは白7,9,11の理想形(二立三析)を与えて疑問。
黒12の肩ツキは相手を固めるマイナスがあるのと、黒12,14が右辺の白の構えに響かないので疑問。
黒16,18の肩ツキも前譜12と同様の理由で疑問。
黒20の肩ツキも前譜12と同様の理由で疑問(しかし後で見るようにこの手は後で働くことになった)。
黒24,26の二段バネは好調子。中央が盛り上がってきた。しかし28は大悪手。二段バネした以上、24の一子は何があっても抜かせてはならない(変化図1)。
黒28では1とツナぐ一手。白は2とノビるくらいだがそこで3とノビれば中央が盛り上がる。
白33は強い石からカス石を取ろうとする悪手(変化図2)。
黒38も前譜28と同様の理由で悪手。
白41も白33と同様の理由で悪手(変化図3)。
白33〜41の結果として中央に黒の壁が生じ、右辺の白が一気に薄くなった。
これは白が強い石から動き出したことで、相手の弱い石を強くさせてしまったためである。
白33では1と飛びたい。×の石は相手の強い石にへばりついているカス石なので、自ら取りに行こうとせずに大きく飲み込もうとするべき。そのカス石が逃げ出されたときには、そのカス石を攻めながら得を図る(攻めながら自分の地を増やす、または、相手の地を減らす)のが良い。
また黒28で24の一子を抜かせたために×の一子がカス石になっていることにも注意。
白41では1とノビたい。2とコウを取り返されても3と曲っていて良い。×の一子は弱いので動き出しにくい(動き出しても攻められて損をする可能性が高い)。
黒46白47の交換は黒が損をしている。黙って48に飛び下がるべきだった。
一旦黒50,52と頭を出しておいて54と渡ろうとするのは着手が一貫しておらず良くない(変化図4)。
結果として57までで50の一子が切り離された。
中央の壁を生かして黒は60と打ち込んできたのは好判断。一路右だともっと厳しかった。
黒54では1と飛び出したい。以下7までで左辺の黒はつかまらないし、最悪でも黒A,白B,黒Cで連絡している。
しかも5が来たことで下辺の白が薄くなってきた。
白61のサバキは重い(変化図5)。62は厳しいが前譜の60で打ちたかった。
黒68は厳しい。このあたりでは黒の攻めが筋に入った感じ。
黒70では71と打つのもあった(変化図6)。
白71は通常は悪手だが本局では好手。周りの黒が強いので実戦のように多少損でも早く治るべき。
白61では1とツケるところ。黒6には7と切って隅で早く治るところ(周囲の黒が強くなければ7では14と打つのが普通)。
以下15までだと白十分サバいている。
黒70では1とノビて眼を奪いながら全体を攻めるのもあった。周囲の黒は強いので白はサバキに苦労しそう。
白が生きを図っている間に中央に大きな黒模様が出現した。これこそ攻めの効果。
黒98では決め手があった(変化図7〜9)。
黒98では1と打つと良かった。もし白が2と打てば3と打ち込む手が成立する。白4〜8と遮っても3の石が急所に来ているので9,13と切断する手が成立する。
以下23までで右側の白と中央の黒4子の攻め合いは黒の勝ち。結果下辺の白は全滅。
黒3に白4と封鎖しようとすれば5から脱出を図ると良い。以下11までで×の白2子を大きく取り込むことができる。
黒108はうまい。これで隅の白が取られている。
黒26では27と打つべきだった。
中央の巨大黒模様が消えてしまった。
黒52は悪手(変化図10)。57で隅が手になってしまった。
黒52では1とツナいで良かった。白2のキリには黒3のツケがいわゆる「二の二急所」で、これで攻め合いは黒の一手勝ち。
黒64では65の方をツナぎたかった(変化図11)。
白69は見損じ(変化図12)。
黒64では1とツナぐべきだった。白2には黒3と下がれば白7子は生きられない。
白69では1と打てば×の5子は取られていた(AにはB)。
地合いは接近しているがこの時点ではまだ黒が良さそう。
黒18は小さい。17のアタリにツナぐべきだった。
白23,25に手が回り上辺〜中央の大石が危うくなってきた。黒24が敗着。白2子を取るべきだった。これで上辺〜中央の黒の大石が無条件で生きることができなくなった。盤中にこのコウに見合うコウ立ては存在しない。よって32に手抜きして33と解消したのは当然。上辺〜中央の黒の大石が憤死し最後の最後で白が大逆転した。
白29は詰碁でよくでてくる手筋だが、ここで単に1とコウを抜いたら黒は2とツナぐ。そうすると○の一眼と△の一眼をめぐって×のコウになる。
白29(上図の1)の放り込みは手筋。その理由は3とコウを取ったときに1の抜き後が半眼になるから(コウに勝てば目がなくなる)。
最初私は、上辺3の箇所と中央×の箇所の両コウで黒は無条件で死んでいると考えたが、3のコウは黒が勝ってBの抜きに回れば、1と箇所に一眼と3の箇所のもう一眼できるので生きられることに気づいた。つまり問題は上辺のコウのみとなり、この黒はコウになるということ。
最後まで目が離せない面白い一局だった。
黒は石が接近したときの打ち方(手筋)を勉強すると良いでしょう。
白は「生きている石の近くは小さい」(生きている石から動き出さない)ということを常に意識しながら打ちましょう。