投稿日: Feb 15, 2014 5:37:0 AM
今回は、1月の例会から初参加されたMM会員の対局を取り上げます。
MM会員は旧PA会囲碁同好会でも活動されていたとのことでした。棋力は初段までもう少しのように推測できたので、2段程度であるYK会員と5子局で対局してもらいました。
黒2,4(10,12)の打ち方はツケオサエ定石と呼ばれる打ち方。白7,15は頑張った打ち方。普通は3と5(11と13)をつなぐか、1(9)の右にサガるところ。
黒20は相手の石を固めてしまって疑問。左辺の白の17,19,21の石の形は「二立三析」という好形の一つ(19,21と並んだ形が「二立」で、それらの石から17は三間開いているので「三析」)。
白23は工夫の一手。ただ以降の変化図で示すように本来であれば17の右に一間トビして左辺白を守っておくべき。
黒24は隅で活かして中央を大事にする打ち方。23の左にツケて隅を固めるのも有力。
黒28,30は左辺の打ち込み(変化図2〜7参照)を消すのでもったいない気もするが、24から一貫して中央を大事して打つという方針なので良い(碁で重要なことは、前の着手を活かした手を打つこと)。
黒20では1と受けているのが普通。以下白2,4はやむを得ず、黒5のキリに回れば黒十分。
黒28では以下の変化図2〜7に示すように黒1と左辺の白に打ち込む手がありました。
黒1の打ち込みに対して白2と封鎖しようとしても3,5と頭を出すフリをしておいてから7と下がるのが巧い手で、白8と遮っても(ここに黒から打たれると連絡してしまう)黒9以下で白ツブレ。
白12と割り込んきてもやはり白ツブレ。
黒9のツケに白10とノビれば、以下13までで連絡します。白12の石が取られていることをご確認ください。
黒1に対して白2とツケて封鎖しようとしても、単に3と下がってから黒5とツケれば以下11までコウになります。しかし白からこのコウに見合ったコウ立てはありません。
白8とノビれば9,11と1子を取ればAとBが見合いになり、1,3の2子は連絡しています。
白8〜12とフリカワリを目指しても左辺〜左下隅の損がひどい上に左上隅の黒は全く影響を受けません。むしろ19までで白石が攻撃対象になります。
ちなみに先に白23では17の右(下図の白1)に一間トビして守るべきと書きましたが、その変化も紹介します。
変化図2と同じように進んだときに、白1がいいところにいて白5の上に切ることができません。白1が×の2カ所のキズを守っているのです(このような形を「カケツギ」と呼びます)。以下白15までで黒2,4,8,14の4子は取られています。
白31〜37は黒がオサえなかったことを咎めた機敏立ち回り。黒38は好手(ただ私であれば右辺星に打ち込む)。白39は変化図11のように打つ方が良かった。
26,28では上の変化図のように打ち込みたかったが、もし打ち込まなくても黒1とオサえたかった。以下黒3も利いている(白手抜きは4に打たれて憤死)ので黒5に回って上辺が大きくなって優勢。
白39では黙って1とトンで受けておくところ。黒2に白3あたりに打ち込んで細碁を目指すのが相場。
白41は悪手(このような手は「車の後押し」と呼ばれます)。下辺の黒模様を大きくしてしまった。白43は45の一路右に打って隅の荒らしを見ながら下辺で治まっている方が良かった。白49は、周りの黒石が強いのでもう一路左に控えてヒラくところ。黒50,52ではもう少し厳しく下辺の白を攻めたかった。
たとえば黒1と打ち込む手が成立しました。白2とコスんで封鎖しようとしても黒5,7で連絡されてしまいます。黒13とキラれては白収拾がつきません。
黒1に対して白2とツケて封鎖しようとすると3とぶつかります。4とワタリを防げば黒5,7とデギってAと両アタリとBの3子(×2子と4の石)取りが見合いです。
白4と頭を止めれば黒5と連絡します。×に切っても手にならないことをご確認ください。
また◯の黒3子が下辺の白に圧力をかけています。
また黒52では黒1ハネ出しが成立しました。黒5までで白の石はバラバラで収拾がつきません。×の石は◯の黒3子が援軍となっているので取られません。
以上のように、周りの石が強いときにはもっと踏み込んだ手がないか検討してみることが重要です。
黒64では69に打った方が大きかった。白63から67までで効率的に右辺を地にしたのは上手らしい巧い打ち回し。
黒62で1と打ち込む手がありました。以下15まででAとBが見合いで手になります。ただこの変化は難解ですので、理解できなくても「こんな手もあったんだな」という程度で読み流してください。
白79から目一杯の頑張りで地を作るが黒90までで中央に大きな黒地ができた。黒優勢。
総譜。結果は黒の7目勝ち。戦いのない平和な一局という印象。下辺の折衝で黒がポイントを挙げ、そのまま逃げ切りました。具体的には、下辺の白を攻めながら厚みを築き、その厚みを活かして中央に大きな地を作りました。YK会員も戦いを起こさずに、下辺と右辺をまとめてここまで差を詰められるというのは御見事。MM会員の碁は手堅い棋風で、石の形がしっかりしていると思いました。今後は厚みを活かして相手の石を攻めることを覚えるともっと強くなると思いました。