都市計画入門書「初めて学ぶ都市計画」

まちづくりの入門書『はじめて学ぶ都市計画』(伊達美徳ほか編著 2008年3月 市谷出版社 3000円+税)を編修・執筆して出版しました。

21世紀の日本のまちづくりのために、まず前編の「現況と展望編」で、今の都市の現状とどのような問題があるか、わかりやすく解説しています。ここだけ学んでもますは都市計画のなにかがわかるはずです。

その上で、後編の「制度と技術編」として、専門的な制度や技術も基礎的なことを学ぶことができるようにしています。

都市計画は、机上の論ではなく、現実に市民が生きている街という現場のことですから、大学の教育・研究者とまちづくり現場の都市プランナーとが協働して執筆しました。

ここに伊達が書いたまえがきと、目次、執筆者を紹介しておきます。

次世代に継承する都市をつくるために

社会にたいする

愛情-

これを

都市計画といふ (『私達の都市計画の話』石川栄耀著1948年より)

都市計画を,このように格調高く説いた人がいました。太平洋戦争の大空爆で日本各地の都市が破壊されてまだ3年,戦後日本の復興に向かう時代のことです。説くだけではなく,焼け野原となってしまった東京の街を再建し復興する実際の指揮をした都市計画家です。新生日本を背負う中学生のために,教科書副読本として書いたのでした。

それから60年後の今,日本の都市は理想と現実の狭間でどのようなものとなったでしょうか。私たちの生活している現代の都市は,戦後の人口増加と経済成長を続けてきた,20世紀日本の都市計画の成果であるといえます。

21世紀日本は,経済は安定期へ,人口は減少期へ,地球レベルの環境問題の顕在化など,20世紀とは大きく異なる社会になろうとしています。20世紀の延長上ではなく,違う局面に立つ21世紀型の社会システムとしての都市計画が求められているのです。

次の世代に安心して継承してもらう都市をどうつくるか,私たちは重大な転換点に立っているのです。◆初めて都市計画を学ぶ学生たちのために この本を使っていただきたいのは,大学の建築系あるいは工業高等専門学校の建築系の学生を主な対象としていますが,造園系,住居系,土木系,環境系等の関連分野の学生,そしてまた一般教養としての都市問題に興味のある学生たちにも読んでいただきたいのです。 次世代を支える人たちが,これからどう都市社会をつくっていくのか,都市計画を専門とするのでなくても,都市計画を通じて社会のあり方を学んでいただくことを期待しています。 都市は,市街地あるいは単に街といいかえてもよいのですが,誰もが生まれたときから都市で暮らしているのです。その都市をどのように造りどのように使うか,つまりそれが都市計画なのですから,都市計画は日常生活に密接する身近なことなのです。

その都市計画を体系的かつ入門的に学んでいただくことで,人々の生活空間を豊かにする都市づくり,つまり社会に対する愛情ある都市計画を次世代の人々に期待して,本書をつくりました。

◆まちづくりに関心ある社会人のために

本書は,地域で活動する社会人たちも対象としてつくりました。全国各地で起きている「まちづくり活動」は,大きく変ろうとする時代に対応する地域社会をつくろうとするもので,都市計画の動きといってよいでしょう。自分のまちは自分たちでつくり,直し,守っていこう,それが現代の都市計画です。まちづくりに参加あるいは参加しようと考えている一般市民の人たちにも,「まちづくり基礎知識集」として,ぜひとも読んでいただきたいものです。

21世紀はこれまでよりも違う局面で都市化が進み,新たな都市問題に立ち向かうことになるでしょう。地域社会を支える市民・住民たちが,そして次代を背負う若者たちが,自分たちのための都市計画として自ら何をするべきか,それに本書が役立つことを期待しつつ,都市計画の各分野の第一線にいる専門家たちの衆知を集めて本書を編修・執筆したのです。

2008年3月 編修・執筆代表 伊達美徳

目 次

■現況と展望編

第1講 都市と都市計画

1・1 都市計画について理解する

1・2 都市計画の意義について考える

1・3 都市計画の理論

1・4 これからの都市計画

第2講 都市と市街地

2・1 市街地と密度

2・2 市街地と後背地

2・3 市街地の構造

2・4 市街地の形成

2・5 市街地形成上の新たな課題

第3講 都市の住まいと住環境

3・1 都市に住まう

3・2 都市に建築をつくる

3・3 都市における建築

3・4 快適な住環境を実現するために

第4講 地区の計画とデザイン

4・1 オーダーメイドの計画づくり

4・2 地区レベルのルールづくりのプロセス

4・3 地区ルールの種類とその性質

4・4 さまざまな地区ルールづくり

4・5 地区の計画とデザインを行うために

第5講 都市の再生と交通システム

5・1 街路からの都市づくりと再生

5・2 交通拠点を核とした都市づくりと再生

5・3 持続可能な都市構造と交通システム

第6講 都市と自然

6・1 うるおいのある都市をつくる

6・2 日本の公園緑地政策の展開5

6・3 公園・緑地計画の考え方

第7講都市を再生する

7・1 21世紀の都市再生へ

7・2 住宅・住宅地の再生

7・3 都市中心核の再生

7・4 地方都市の再生

第8講都市と防災

8・1 都市と災害

8・2 阪袖・淡路大震災の被害と復興

8・3 防災計画の視座

8・4 被害抑止を目的とした対策

8・5 被害軽減計画を目的とした対策

8・6 復興計画

8・7 地域の将来計画と防災計画の融合

第9講 都市の景観まちづくり

9・1 景観とは何か

9・2 都市景観の構成要素・種類

9・3 景観と都市計画

9・4 さまざまな景観まちづくり

9・5 景観まちづくりの課題

第10講参加・協働のまちづくり

10・1 参加・協働のまちづくりの現場

10・2 参加・協働のまちづくりの定義

10・3 参加・協働のまちづくりの歴史

10・4 参加・協働のまちづくりの意義

第11講 諸外国の事例から都市計画を学ぶ

事例1 イギリス・レッチワース

事例2 ブラジル・クリティーバ

事例3 スペイン・バルセロナ生

事例4 ドイツ・IBAエムシヤーパーク

事例5 台湾・台中県桃米村

事例6 アメリカ・サンフランシスコ

事例7 アメリカ・シアトル

事例8 中国・上海

第12講 21世紀日本の都市計画の課題

12・1 グローバルとローカル両面からの課題

12・2 成熟都市の都市計画

12・3 人口減少時代の都市計画

12・4 超高齢時代の都市計画

12・5 地球環境時代の都市計画

12・6 自立性のある都市計画

■制度と技術編

第1講 都市計画制度の体系とマスターフラン

1・1 都市計画制度の沿革

1・2 都市計画の位置づけ

1・3 都市計画制度の法体系

1・4 マスタープラン

第2講 土地利用計画

2・1 都市の土地利用計画とは

2・2 区域区分と開発許可

2・3 用途地域に代表される地域地区

第3講 建築のコントロール

3・1 建築基準法と都市計画

3・2 建築行為のコントロール

3・3 市街地環境を誘導する制度

3・4 建築行為の法的手続きと条例

第4講 建築協定・地区計画

4・1 建築協定制度

4・2 地区計画制度

4・3 その他の地区のルール支援策

第5講 都市交通の計画技術と制度

5・1 都市内における交通機関の機能分担

5・2 都市交通システムの需要予測手法

5・3 交通システム整備の影響評価

5・4 日本の交通システムの関連法制度

第6講 都市環境と公園・緑地計画

6・1 都市の中での緑地保全

6・2 緑地の機能・効果

6・3 公園・緑地計画の考え方

6・4 計画実現のための制度

第7講 市街地開発事業

7・1 市街地開発事業の概要

7・2 土地区画整理事業

7・3 市街地再開発事業

7・4 防災街区整備事業

第8講 都市と防災

8・1 都市防災の計画と制度

8・2 火災から都市を守る制度

8・3 地震から都市を守る制度

8・4 水害から都市を守る制度

8・5 土砂災害から都市を守る制度

8・6 火山から都市を守る制度

8・7 犯罪から都市を守る制度

8・8 被災した都市を再建する制度

第9講 景観まちづくりの仕組み

9・1 景観法制定の前史

9・2 景観法と景観条例の仕組み

9・3 地方独自の取り組み

9・4 景観まちづくりに関連する制度

9・5 公共空間の整備と景観

第10講 参加・協働のまちづくりを支える制度と技術

10・1 参加・協働のまちづくりの計画プロセス

10・2 参加・協働のまちづくりの主体と組織

10・3 参加・協働のまちづくりのコミュニケーション

10・4 参加・協働のまちづくりと専門家

第11講 海外の都市計画制度

11・1 都市計画制度の違い

11・2 英国の都市計画制度

11・3 ドイツの都市計画制度

11・4 フランスの都市計画制度

11・5 米国の都市計画制度

11・6 韓国の都市計画制度

第12講 都市計画制度の展望

12・1都市計画制度の2つのカテゴリー

12・2 土地利用制御施策のこれまでの状況

12・3 日本建築学会の提言

12・4 制度改革に向けた自治体の動き

参考文献 索引

【編修委員・執筆】(50音順)

饗庭 伸 首都大学東京都市環境学部准教授,博士(工学)

加藤 仁美 東海大学工学部教授,博士(工学)

鈴木 伸治 横浜市立大学国際総合科学部准教授,博士(工学)

伊達 美徳 地域プランナー,技術士(都市および地方計画)

根上 彰生 日本大学理工学部教授,工学博士

柳沢 厚 C-まち計画室代表,技術士(都市および地方計画)

【執筆](50昔順)

阿部 伸太 東京農業大学地域環境学部准教授,博士(造園学)

清水 哲夫 東京大学大学院工学系研究科准教授,博士(工学)

瀬田 史彦 大阪市立大学大学院創造都市研究科准教授,博士(工学)

牧 紀男 京都大学防災研究所准教授,博士(工学)

【事例執筆】(知音順)

阿部 大輔 政策研究大学院大学政策研究科研究助手,博士(工学)

有田 智一 筑波大学大学院システム情報工学研究科准教授,Pb.D.

市古 太郎 首都大学東京都市システム科学専攻助教,博士(都市科学)

岩田 左紅 株式会社マイスタジオ代表取締役社長

内田奈芳美 日本学術振興会特別研究員,博士(工学)

斎木 崇人 神戸芸術工科大学大学院芸術工学専攻主任教授,工学樽土

南條 洋雄 建築家,南條設計室代表