民主党の都市と住宅政策はどうだったか

ーーーー引用終ーーーー

このような制度の文書は常識的には悪文の見本であり、読み慣れないとなにがなんだかわからない。だから解説の表の様なものも併せてつくって出しているのだが、実はこれを読み解くのもけっこう難しいのである。

とりあえず、新たにできた制度である「高齢者等居住安定化推進事業」について、高齢者世帯等の入居する「生活支援施設サービス付き賃貸住宅」助成制度を拡充する内容について、箇条書きに直してみた。

1.新たに、医療施設等の併設に対して助成

2.賃貸住宅の共同施設に対する直接補助(国から事業者に直接補助するらしい)

3.既存の公的賃貸住宅を改良・増築して行う施設整備に対する支援措置

4.子育て世帯や障害者に配慮した住まい・住環境促進措置

要するに高齢者のための賃貸住宅制度を充実して、生活支援施設をもつ賃貸住宅をつくるようにしることらしい。そこには生活相談や医療や介護等の施設を設けて、それに国から建設費を補助するのである。新設住宅ばかりでなく、特に既存の市営や県営住宅にそのような施設を増築して設けるときには補助をするというのである。

どれくらいの予算で、どれくらいの規模ができるのかよく分からないが、いずれにしてもその方向はよいことである。

問題はその予算をうまく使う自治体や事業者が、たくさん登場するかどうかである。つまり使い勝手がよい制度かどうかであるが、そこまでわたしは制度を見抜く能力は無い。

(20100103)

民主党の都市・住宅政策はどうだったか

2009-2010

伊達 美徳

1.気になる民主党の都市政策2009/09

高速道路をなぜ無料化するのか、都市政策面から民主党の言うことを、WEBサイトを見聞きしてみた。

「例えば地方において、インターチェンジというかパーキングエリアなどは誰でも入れるようになりますんで、例えばそういう土地を使って、工場を誘致するとか産業を誘致する、あるいは遊園地などなど、地域振興の要になる可能性も出てくるし、、、、」

また、こんなことも書いてある。

「Q:東京近郊はわかりますが、地域経済はどうなのでしょうか?

A:地域経済も活性化されます。日本の高速道路は、料金が高い、そして出入り口の数が少なかったため、極めて使い勝手が悪かったと思います。ちなみにアメリカの高速道路の出入り口は、約3kmに一ヶ所ありますが、日本は約15kmに一ヶ所です。そこで、料金を無料にするだけではなく、出入り口の数を増やしたいと考えています。高速道路が利用しやすくなる、つまり生活道路になれば、高速道路の出入り口に街ができることになるでしょう。住宅建設だけではなく、商店も進出することになります」

これらのうちの前者は、「民主党Manifesto(政権政策)Q&A・高速道路の無料化 財源と維持費はどうするのか?」(動画)において、民主党の長妻昭政氏(厚生労働大臣になった)がしゃべっている言葉である。

http://www.dpj.or.jp/special/manifesto2009/manifesto_qa.html

後者は、「民主党参考文書集2003/10/20「高速道路無料化」政策に関するQ&A(未定稿)』の当該項目である。

http://www.eda-jp.com/dpj/2003/highway-qa.html

◆◆◆

この前後には渋滞が減るとか、経済効果があるとか述べてあるのだが、それらは一般メディアにも登場するから、賛成反対論があがっている。

ところが、これをみてわかったのだが、民主党は地方都市の郊外に遊園地やショッピングセンターあるいは工場団地などの開発を誘導をしようとしているのである。これではまるきり自民党型というか、利益誘導型政策である。

郊外開発が今や地方都市の疲弊を招いていることは、周知に事実であるが、民主党はそんなことも知らないのだろうか。

典型的な例をあげると、イオンという流通グループ(経営者は岡田外務大臣の兄)は、各地の地方都市において郊外の田畑をつぶしてインターチェンジ付近に大規模なショッピングセンターをつくり、その結果はその都市の都市中心部の衰退を招いている。

このような困った現象に対して、中心市街地活性化法や都市計画法の改正までして、その対策をしつつある時代である。

今、人口が減少する時代に対応して大きく都市政策の方向転換をしようとしているのである。歴史ある市街地を、まとまりが良い暮らしやすい生活圏として再度都市形成をすることが、ようやくにして政策として方向が決まってきたのである。更に都市計画法も、この時代の流れにそって今、抜本的な改正をしようとしているのである。

◆◆◆

この民主党の考えには、現代の都市政策として見逃せない大きな問題を含んでいる。地方において都市の郊外開発を誘導することで地域活性化をしようとしているのであるが、これは明らかに今の都市政策の流れとは異なる。

20世紀の人口増加時代に拡大する都市政策を進めてきて、とうとう生活圏が拡散して都市が疲弊するまでになったのである。地方都市が郊外開発を進めた結果は、歴史のある中心市街での空洞化が進み、生活圏としての魅力が衰え、ますます人口流出が進み、人口減少がそれに追い討ちをかける。その行き着く先は、地方都市の衰退から消滅である。

わたしからみれば単なる大衆迎合人気取り政策である高速道路無料化という政策の陰になっていたが、実は民主党の時代錯誤な都市政策が潜んでいることを発見したのである。

その政策が自民党政権のもとで決まったことだからとして、反対方向を唱えているのだろうか。そうとすれば、これは都市の未来を見ない政党である。

例えば、どこでもよいが歴史ある城下町に行くとしよう。その街の玄関口であるインタチェンジを降りると、そこに待ちかまえるのは緑をつぶした商業開発群であり、けばけばしい広告や醜い看板建築だらけの風景である。このような風景が今よりも増えて、その結果が地方都市の衰退だとしたら、民主党を選んだ選挙民の責任である。

わたしは民主党に期待しているが、この点では民主党政策の変更を強く望むものである。

なんにしても、今のところ政権与党についたばかりの民主党の都市政策が見えてこないのが、いちばん気になる。(090920)

2.民主党の居住・住宅政策は?2009/09

今月から国交省に民主党の大臣が座って、ダムやら道路やらちょっと目先の派手な話題ばかりだが、もっとも基本的な居住政策については、なにか変えてくれるのだろうか。

日本では55年体制の自民党政権下では、基本的人権としての社会政策であるべき居住政策が存在しなくて、住宅政策という経済政策で住むところをつくってきたのである。

居住政策は持ち家建設促進政策という経済政策であって、ちょっと景気が悪くなるとローン優遇なる借金政策を進めるのである。借金で持ち家にしないと、屋根の下に暮らせない政策なのである。

その結果は、日本人の家庭はどこでも大借金返済を数十年もかけて、ほかの生活費を犠牲にして暮らしているのである。

生存権という基本的人権のひとつの居住の場を、借金で買い取らなければならないという奇妙なことが、先進国といわれる日本では起きている。

だから、今の100年に一度のような不況が来ると、目に見えてその矛盾があらわれて、住宅戸数は統計上では十分に足りているのに、借金が返せなくなって住宅が無い人が出てくるのである。

では借家に入ればよいはずだが、日本では借家には全くといってよいほど促進政策がないのである。だから狭くて環境の悪い高家賃の賃貸借住宅しか、一般向けには無いのである。

低家賃の公営賃貸借住宅はもうほとんど建設をしないから、なかなか入れない。公社や都市機構(UR)のような公的賃貸住宅も新規建設をやめて、しかも現在の賃貸住宅の家賃を民間なみに高額にしているのである。

全くこの国は、人間の居住権という基本的なところに政策が欠けていることおびただしい。

◆◆◆

そして今日(2009.9.30)の朝日新聞には、賃貸借住宅の家賃滞納者のブラックリストを作って、その者の入居を排除するシステムを共有する家賃保証会社の団体ができるとある。

ちょっとでも滞納すると業界に知れわたって、家を借りることができなくなるのだそうだ。なんだかサラ金みたいである。

そんなことをすると社会的にまずい、という家賃保証業界の同業者もいるし、弱者救済活動をしている人は反対を表明している。

「連帯保証人を見つけられない低所得者が増えたうえ、滞納を避けたい家主側の需要もあり、(家賃保証)業界は急成長。国土交通省によると全国で約70社。民間賃貸契約の約4割にかかわっているとのデータもある。民間信用調査会社の調べでは把握できる29社の売り上げは08年は約218億円で、2年前の2倍以上に達した」(asahi.com 2009年8月15日)

このように強気の業界状況からわかることは、家賃保証業界が成り立つほどに日本の賃貸借住宅市場において家賃滞納ケースが多くなってきていることと、賃貸借住宅業界はあいかわらず貸す方が借りるほうよりも強い立場を堅持しているということである。

家賃滞納で借家を追い出されて、別の貸家を借りようにもブラックリストに載っているので入居を断られ、行くところがなくて野宿者になる人が、これからどんどんでてくるのだろうか。

悲惨なアジア・太平洋戦争が終わって既に64年、衣食住のうち衣と食は戦後復興したが、住はいまだに戦後復興から置き去りなのである。

居住政策を経済政策担当の国交省ではなく、社会政策担当の厚生労働省の所管にしてはどうか。トンカチ屋ばかりの国交省には社会政策は無理である。

民主党さんよ、社民党と共にご努力いただき、賃貸借住宅促進策を展開していただくことを期待している。(090930)

3.民主党になって住宅政策は変わったか2010

昨年末に政府の2010年度予算が発表された。

その中で鳩山内閣になってからの住宅政策において、賃貸住宅への対応がどのように政策として出てきたかを見た。

まず、「民主党の政権政策マニフェスト Manifesto」には、住宅政策はどう書いてあったかを、引用しておく。

ーーー引用ーーーー

44.環境に優しく、質の高い住宅の普及を促進する

【政策目的】

○住宅政策を転換して、多様化する国民の価値観にあった住宅の普及を促進する。

【具体策】

○リフォームを最重点に位置づけ、バリアフリー改修、耐震補強改修、太陽光パネルや断熱材設置などの省エネルギー改修工事を支援する。

○建築基準法などの関係法令の抜本的見直し、住宅建設に係る資格・許認可の整理・簡素化等、必要な予算を地方自治体に一括交付する。

○正しく鑑定できる人(ホームインスペクター)の育成、施工現場記録の取引時の添付を推進する。

○多様な賃貸住宅を整備するため、家賃補助や所得控除などの支援制度を創設する。

○定期借家制度の普及を推進する。ノンリコース(不遡及)型ローンの普及を促進する。土地の価値のみでなされているリバースモーゲージ(住宅担保貸付)を利用しやすくする。

○木材住宅産業を「地域資源活用型産業」の柱とし、推進する。伝統工法を継承する技術者、健全な地場の建設・建築産業を育成する。

ーーー引用終りーーー

つぎの引用は、国交省住宅局が2009年12月25日に発表した「平成22年度

住宅局関係予算決定概要」の中の、賃貸住宅関連の部分である。

ーーーー引用ーーーー

3.新規制度等

Ⅰ.高齢者等が安心して暮らせる住宅セーフティネットの充実

(1)高齢者等居住安定化推進事業の創設

高齢者世帯等の入居する生活支援施設サービス付き賃貸住宅に対する助成制度を拡充し、新たに、医療施設等の併設に対して助成するとともに、賃貸住宅の共同施設に対する直接補助制度を創設する。

また、既存の公的賃貸住宅を改良・増築して行う施設整備に対する支援措置を設ける。

さらに、子育て世帯や障害者に配慮した住まい・住環境の形成に資する先導的な取組の促進措置を設ける。

(2)地域優良賃貸住宅(高齢者型)の床面積基準の緩和

高齢者向けの優良な賃貸住宅の整備を促進するため、地域優良賃貸住宅(高齢者型)の床面積基準について、地方公共団体が定めた計画に基づき緩和された基準を満たすものを助成対象とする。

(3)公営住宅等ストック総合改善事業の拡充

公営住宅を身体障害者向けのグループホーム・ケアホームとして利用するための改良工事費を、助成対象に追加する。

Ⅳ.住宅・建築物の安全・安心の確保

(1)略

(2)家賃債務保証業の適正化支援等

民間賃貸住宅入居者の居住の安定確保を図るため、賃貸住宅に係る家賃債務保証業等の適正化支援、賃貸住宅関連の紛争処理の円滑化支援及び居住支援協議会の活用の促進を行う。