これも都市計画なんですね
―暮らしの場は、どこにも都市計画が―
特定非営利活動法人 日本都市計画家協会
常務理事 事務局長 伊達美徳
●これも都市計画なんですね
『私のやっている事業は、これも都市計画のひとつなんですねえ、そうなんですか、、』
これは2003年度「日本都市計画家協会賞」贈呈式で、四国の観音寺市からやって来られた受賞した女医さんの言葉である。この方は、高齢者は老後も住み慣れたまちで医療・福祉サービスを利用できるべきと考えて実践されている。
人口5万人弱の観音寺市の衰退した中心市街地で、商店街の空き店舗を借りて居宅介護支援相談所を設け、隣接してデイサービスセンター、診療所、ケアハウスを立ち上げ、メディコポリス観音寺グループとして動き出している。
ここの介護老人たちは、商店街に積極的にでていって社会と接して活力をとりもどし、空洞化商店街もまた彼らを迎えて活力を再生するのだ。 その活動を、都市計画と銘打って大賞をもって顕彰したのだから、賞を得た方が驚いたようである。
そうなのである。まちづくり、まちなおし、まちおこし、まちそだて、まちまもり・・・どれも「都市計画」における「都市・地域づくり」のやわらかな言い直しである。毎日の暮らしの場を安全で快適にすること、それが都市計画であり、本来そういうソフトものであり、公共事業だけが都市計画ではないである。
今年の(NPO) 日本都市計画家協会(以下「家協会」という)が主催する賞への応募は、大賞に74件、特別賞に22件であった。大賞は、コミュニティまちづくり、まちづくり計画・手法・制度、まちづくりプロジェクト、まちづくり普及啓発の4部門、特別賞は、若手まちづくりと北海道支部の2部門で、各1件を選定して賞状と賞金を贈呈した。上の観音寺の件は、まちづくりプロジェクト部門大賞であった。
家協会では、都市・地域づくりの広範な分野にわたる取り組みの中から、すぐれた理念を持つ活動、計画、策定プロセス、手法、プロジェクト等に対し、活動とその活動家を顕彰して進展を支援したいとこの顕彰事業を今年から始めたのである。
●都市・地域づくり人材を派遣します
家協会賞も、市民の都市・地域づくりへの支援策のひとつであるが、家協会では多様な方面で支援事業を行っている。
支援先は、市民、専門家、団体、行政など幅広く、支援内容は、都市・地域づくり活動への活動資金や専門的人材あるいは専門的ノウハウの提供である。
家協会は個人の団体である。その会員は、特に都市計画の専門家という枠を設けていないが、なんらかの形で都市・地域づくりに関る人たちであり、中でも職業としての都市計画家が多い。
そこで、この専門人材を世の都市・地域づくり活動に生かす、あるいは世にもっと専門人材を育てる、このような社会貢献活動がわがNPOの大課題である。そこで家協会では、「まちづくり人材派遣助成事業」を始めた。
これは都市・地域づくり活動団体がその活動に専門人材を必要としているならば、家協会がその人材選定とその人材起用の資金(派遣人材の報酬の一部と旅費実費)を助成しましょうと、派遣先を全国公募している。
2002年度人材派遣助成総額予算750万円の内公募枠450万円、応募7件のうち派遣先5団体を選定した。北海道から四国まで各地のNPO法人や任意の民間団体で、活動内容は、特定地区まちづくり活動、合併に伴う地域計画策定、都市開発事業の政策提言など多様である。
東京の例では、NPO法人グリーンネックレスの行う中央線鉄道高架の雨水利用による緑のまちづくり計画に対して、その専門家として建築家黒岩哲彦氏の起用について助成した。
この事業の特徴は、本来は行政や企業が実行あるいは支援すべき活動は対象とせず、NPO法人でなくとも市民団体を支援していること、活動事業の直接的な助成ではなく活動のために必要な専門家を助成するものであり、助成の契約は専門家と行うということである。したがって、原則として家協会が活動内容に容喙することはない。
●都市・地域づくりを出前応援します
今年度前半、北海道のあちこちで同時多発的に都市・地域づくり活動が起きた。家協会北海道支部が仕掛けた「都市計画キャラバン」である。
これは毎年大勢の会員が、都市・地域づくり活動の現地に出かけて、半年にわたって支援するのだが、その名のごとく毎年異なる都市で行う。九州から北海道まで各地延べ13都市で行ってきた。
その年度のキャラバン開催都市が決まると、準備に半年、残りの半年で市民ワークショップを繰り返してからまとめの大会を開く。
年度、都市ごとにテーマはいろいろであるが、第1回は長岡市で「拠点都市のライフデザイン」、最近の第十回2003年は「美しいまちなかの再生と戦略」をテーマに、札幌、旭川、釧路、函館で同時進行的にワークショップを行った。
あくまでその地域の市民・住民が活動の主体であり、家協会が先頭に立って計画づくりを行うのではなく、その地域の行政担当と協同して、専門人材と活動資金で彼らを支えるのである。
原則として家協会はそれで年度事業は一応終えるのだが、実際はそこで播かれた都市・地域づくりの種が次第に芽を出すこともある。浜松では2000年開催したが、それを契機として地域都市・地域づくり活動が活発になり、家協会浜松支部の結成につながった。
●草の根の都市再生から都市政策提言まで
1994年の家協会発足から、都市・地域づくりの市民活動支援を行ってきているが、2001年NPO法人となってからはその社会貢献性を前提として特にその比重を高めている。
特に各地のNPOとの連携を深めたいと、その可能性と方法に関する調査研究をこの2年間行ってきており、近く成果を公表する予定である。
このところ都市再生が謳われて、主要政策に登場してきている。家協会としては「草の根の都市再生事業」をテーマにして、特に地方都市中心街および大都市密集地の再生をとりあげるとともに、「美しいまち・日本」をテーマにして、各地で連続シンポジウム開催等の啓発活動を、地域のNPOや行政と協同して進めている。
また、全国にいる会員たちがなんらかで関る活動が多いので、それら各地でのボランタリーな都市・地域づくり活動に対しても、資金や人材の支援を随時行っている。
一方では、政府や公共団体に対して、都市・地域政策の提言も行っている。たとえば地方都市の都市・地域づくり行政において、専門的人材が不足しているし、市民参加時代に対応しない体制の改善も課題である。家協会の専門家がそれを補完する方策立案や実施について、国交省版の人材派遣事業に協力している。
各地の都市・地域づくりの現場にもっと専門人材を配置して、草の根の都市再生を進めるためには、地域に根付く専門人材を育てる必要がある。厚生労働省の出先機関と協力して、都市・地域づくり人材の育成研修事業を企画中である。
都市計画は、集まって暮らす日常の約束事であり、だれもが関っているはずだから、だれもが都市計画家になってほしいものである。
『だれもが都市計画家に―暮らしの場は、どこにも都市計画が―』(家協会案内より)。(031005)
日本都市計画家協会(略称Jsurpジェイサープ)は、都市・地域づくり活動を実施し支援する全国NPOです。まちづくりに関心ある方ならばどなたでも入会できます。北海道(札幌)と、浜松に支部もありますので、入会、活動、助成など、お気軽にご相談ください。
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注:小論は、NPOひと・まち社の会報「ひと・まち」2003年10月号に掲載した。