真壁:街ごとミュージアム

真壁は街ごとミュージアム

伊達美徳(都市計画家)(990510)

●風水に適う街

あれっ、私が住む鎌倉そっくりだ、いや鎌倉が真壁そっくりか、、。歴史民俗資料館で航空写真を眺めていて、気がつきました。

真壁と鎌倉の中心部の地図を、鎌倉の北を右にして見くらべてみて下さい。真壁城=鶴岡八幡宮、上宿・下宿通り=若宮大路、仲町通り=小町通り、山口川=滑川、新宿通り=武蔵大路、桜川=由比が浜、どうです、ぴったりと一致します。

平安京や鎌倉など古代から日本の都づくりは、中国からきた風水思想によっていると言われます。北に山(玄武という神様)、南に池沼(朱夏)、東に川(青竜)、西に大道(白虎)のある町をつくり、北の山を背にして帝王がいて、中央を大路が南北に貫きます。

真壁の都市計画を考えたのが真壁氏か浅野氏か存じませんが、この東西南北の四神相応の考え方をとりいれたのかもしれません。中世のこのあたりは、鎌倉から逃げてきた古河公方の勢力下でしたから、まちづくりにも鎌倉の影響があったろうとも思うのです。

もちろん、これは私のかってな推測で、なんの学術的な根拠もありません。桜川の氾濫地にはりだす微高地形でのまちづくりは、だれが考えてもこうなるとも言えます。でも、どうせなら面白く考えましょう。

●地場産業を街に生かしたい

いずれにしても真壁の街は、昔から都市としての立地に適う地形であるということです。そしてこれからも真壁のような、個性的な街並みと地場産業があり、街を大きく拡散しないでコンパクトに保っている都市が、人口減少して高齢・少子時代の日本では重要な位置を持ってきます。

そのわけを話し出すと長くなるので別の機会にしますが、21世紀に人々が暮らしたくなる頼もしい街としての要素を、多く備えていると感じたのでした。

その要素のひとつである地場産業を、街のなかにもっと生かしてはいかがでしょうか。そういえば思い出しましたが、福井県の越前大野という美しい城下町に、石灯籠通りと名づけた道があります。文字通り石灯籠が立ち並び、つきあたりに城山の天守閣が見える個性的な風景です。

真壁が石の地場産業の街なら、石灯籠ばかりか石垣、石塀、石畳、石段、石彫刻、石塔、石のガードレール、石の案内板など、石づくしの街づくりはどうでしょう。石づくりアクセサリーやインテリア小物、古河の篆刻と連携した石の印章づくりはいかがしょう。

これに加えて味です。この地でとれる食材を、この地で醸造される味噌・醤油で味付け加工した料理を、この地で作られる器(石器?)に盛り、この地のお酒と共にいただくと旨かろうなあ、こんなレストランを昔の古河駅の所にほしいと、これは呑兵衛の願望です。

●新旧伝統の積み重なるまちづくり

中世・近世の伝統のある町でしょうが、大正や昭和初めの店舗・住宅・醸造蔵など、近代にも素晴らしい風景があります。街の風景には、時代の積み重なりがあるのが当然です。

古い建物が建て替えられて新しい建物もできていますが、街並みの中でのその作り方に昔からのお作法があるように見受けました。

その作法を受け継ぎながら、時代に対応する新たな伝統となる作法を、市民が共働して作り上げよう、そんな動きも感じられて、期待が膨らむ真壁です。

真壁の街は、街ごとそっくり美術館で博物館で資料館のミュージアムタウンでした。(完)