街の個性は公園を見るとわかる(文・角田百合子)

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街の個性は公園を見るとわかる

ドイツで見つけた街の法則

2016年9月27日

執筆者 角田 百合子 (学生/ドイツ・エアランゲン大学留学中)

【ドイツ・エアランゲン】ヨーロッパの街を歩いていると頻繁に公園を目にする。遊具があるような公園もあるが、人々が寝転がったりピクニックをしたりするような木々と芝生が広がったようなところも多い。エアランゲン市(バイエルン州)も同様で、市街を歩けば様々な公園を目にする。

■エアランゲン市の公園

街の中心にある宮殿庭園はエアランゲンを代表する公園だ。広さがあり、こまめに手入れされた花壇や噴水、周囲の品格ある建物が相まって、街の顔といえるほどの美しさだ。友人の間でもこの場所が一番好きだ、という声をよく聞く。ちなみに宮殿庭園は6時30分から20時まで、と入場時間が制限されている。

また、宮殿庭園以外にも、自転車で行けるほどの間隔で公園が点在している。それらは芝生とベンチだけのシンプルなものから、遊具がそろう公園までいろいろある。

街の中心にあるエアランゲン市の宮殿庭園。

280×550mの広さがあり、いつ訪れても花壇が美しく手入れされている。(写真=角田百合子)

そんな公園は様々な役割を担っている。子供の遊び場や大人のリフレッシュの場、自然と触れ合う場、イベントの場などである。目的のある人も、ない人も公園にやってくる。人々の居場所になっているのだ。そんな「訪問者」の中には自宅の庭に十分な広さがないために公園に来る、という人もいるらしい。見通しが良く、座る場所・遊ぶ場所が十分にあり、清潔な公園は居心地がいい。そして、これらの公園の存在によって街の空気がゆっくり流れているような気がする。

ベンチが多く並んでいる公園(写真=角田百合子)

■日本より自由度が高い

日本の一般的な公園は砂が敷いてあるのに対し、ヨーロッパでは芝生が主流だ。また、日本では様々なルールによって公園の用途を狭めてしまっている、という話をよく聞くが、ヨーロッパの公園で禁止事項が記された看板を目にすることは少ない。日本よりも自由度が高い印象を受ける。

日々の公園を見ると、犬の散歩やジョギングをはじめ、ビールを飲んだり、音楽を流したり、様々な年代の人々が思い思いに楽しんでいる。子供たちも、若者でさえ、ボールを使ったり噴水の水に浴びたり、自由に遊んでいる。

それから街の中をみると、日本に比べてゴミ箱の数は多い。公園内はさらに、その数は増える。このゴミ箱の数が功を奏しているのか、ゴミがほとんど落ちていない状態が保たれている。

■「公園が美しい=街が美しい」という法則

目を転じて、エアランゲン市(人口10万人)のような比較的規模の小さい街だけでなく大都市にも大小さまざまな公園がある。

いくつかの街を回り、観察した範囲で見出したのは、公園が美しいところは街も比較的美しいという法則めいたものだ。逆に公園にゴミなどが多いところでは街中にもゴミが落ちており、落書きも多い。そういった場所は大抵ハトやカラスも集まっており居心地があまり良くない。

この法則(?)にのっとって、さらに踏み込めば、街の個性が現れるのは公園といえるかもしれない。公園が街の雰囲気を作り、時間の流れも作り出す。まちづくりの中心は公園づくりにあるのではないか。ドイツの街を観察していると、そんなふうにすら思えてくるのだ。(了)

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執筆者 角田 百合子(つのだゆりこ)

1995年生まれ。平成28年度3月からドイツのエアランゲン市に約1年間交換留学生として滞在。海外生活を通して街づくりや環境問題、異文化の背景等を学んでいる。

滞在中、「インターローカル ジャーナル」主宰の高松さんのもとで記者の見習いをしながら、自分の疑問をひとつひとつ現地の人々へのインタビューをもとに考えてみようと思う。日本との比較や外からみた日本、日本からみたドイツ等様々な視点から深めることを目指している。留学前に高松さんの著書を読んだことをきっかけに連絡を取り、現在に至る。

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