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ヘンなおっちゃんの神隠し

ダンスアーティスト・藤條虫丸さんの幼稚園での舞台


2013年5月24日


執筆
高松平藏ドイツ在住ジャーナリスト、当サイト主宰)



ダンスアーティスト・藤條虫丸(ふじえだ・むしまる)さんがエアランゲン市(バイエルン州)に。地元の幼稚園でパフォーマンスを行った。その時の様子を書きとどめておきたい。
踊る藤條虫丸さん

■教区ホール
藤條さんがパフォーマンスを行ったのはエアランゲン市内の幼稚園キンダーセンター・トミチールの小さなホール。かつて私の子供たちがお世話になったところだ。幼稚園の家屋は運営母体の教会とつながっていて、普段は教区の人たちも集うときに使われている『教区ホール』だ。

この時期はキリスト教の聖霊降臨祭で、学校は2週間ほど休み。エアランゲンではビール祭りが行われ、長期休暇を取る人も多い。幼稚園で子供は預かっているが、そんな次第で『観客』になる子供が少ないのが残念だったが、舞台の前にカーペットを敷いて、かぶりつきで見てもらった。
教会の情報ボードに掲示されたフライヤー
■神隠し
今回の作品は『静かな庭』。藤條さんが住む屋久島の鳥、風、水といった自然音がベースになった音が約1時間。それにあわせて即興で踊るというものだった。私自身は正直、子供たちにとってちょっとしんどいのではないかと思った。

しかし、それは大変失礼な心配だった。
衣装はオレンジ系のズボンとタンクトップにハンチング。そして裸足だ。舞台右にうずくまるところから始まり、ゆっくり動き始める。子供たちは『ヘンなおっちゃん』に釘付けだ。

それでも子供が飽きそうになってくるのだが、そのタイミングにあわせるかのように、大きな呼吸をしたり、突然、早く動いたり、子供たちをすっと引き寄せてしまう。床や体を何度かトントン手で打つと、子供たちもつられて同じことをしているのが面白い。
藤條さんの動きに同調するかぶりつきの子供

終盤では舞台からおり、ひとり、またひとりと子供の手をつなぎ、輪になって踊る。そのまま子供たちを舞台へ。

舞台という名の『異世界』で遊んでいた『ヘンなおっちゃん』が客席という現実世界に現れ、子供を連れ去る。まるで神隠しかハーメルンの笛吹きだ。だが、連れ去られた子供たちも、舞台の上で楽しそうに『へんなおっちゃん』と踊った。タイトルは『静かな庭』だが一気に賑やかになった。
舞台に『神隠し』にあった子供たち。のりのりだった。

■舞台人の実力
舞台はそもそも観客と演じ手の相乗効果で創られていく刹那の時間だ。刹那的であるがゆえに愛おしくもなる時間であり、同時に永遠の時間でもある。

しかし、演じる側が観客を引き寄せ、気持ちや呼吸と共振していくようにもっていけるかどうか。これは舞台人の実力がものをいう。藤條さんは子供たちをぐいぐち引き寄せていった。舞台終了後、開口一番『さすが芸歴が長いだけありますね』。これが私が藤條さんにかけた言葉だった。

藤條さんは自らを『天然肉体詩人』と称しており、日本の前衛舞踊の『舞踏』に分類されることが多い。5月にエストニア、ドイツ、フランスなどヨーロッパツアーで回っている。その途中でエアランゲンにもやってきた。これまで同幼稚園で子供と保護者を対象にしたワークショップを2度行なっている。(了)


<プロフィール>
藤條 虫丸(ふじえだ・むしまる)さん
ダンサー・振付家・演出家。
 日本を代表するダンサーの一人としてソロ活動の 他、演出・製作・振付・ワークショップ等内外で 活躍。旅と芸をないまぜに、天と地、生と死、 時空間そのものを自らの舞台とするダンススタイ ルは『天然肉体詩』という独自の世界を作 り上げ 老男若女を間わない幅広い層の人々に鮮烈な 印象と根源的な感動を与えている。
 異分野・ 海外アーティストとの交流・共演も数多 く世界中にファンや支援者を持つ。
 『生きとし生けるすべてのものに、慈しみを感じ ながら、全身全霊をかけて謳いあげる生命賛歌』 を永遠のテーマに、ゆるやかに旅する天然肉体詩 人。その旅はいつもあらゆる人・もの・風景を巻 き込みながら一瞬の風のように吹き抜け、あざや かな美しい風紋だけを後に残して消えてゆく。
 2004年より屋久島に移住、半農半芸のライフスタ イルを通して、日々繰り返される天然自然の営為 をみつめつつ心身に心地よい遊び暮らし=アート ライフを模索中。(藤條さんのホームページより)

藤條虫丸さんの公式ホームページはこちら

今回のフライヤー