市街地歩行者ゾーンで多様性社会のピクニック┃高松平藏/在独ジャーナリスト

■全長180メートル

「ピクニックパーティ」が行われたのは2014年9月のある土曜日の午後。市街中心地の歩行者ゾーンで180メートルにおよぶベンチとテーブルが用意された。そこへ約800人が食べ物を持ち込み、夕方まで行われた。

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市街地歩行者ゾーンで多様性社会のピクニック

拙著の表紙写真のはなし

2016年8月23日

執筆 者 高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト、当サイト主宰)

拙著「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」の表紙写真は、私が住むエアランゲン市街で行われた多様性のためのコミュニケーションプログラム「ピクニックパーティ」の一幕だ。同プログラムのことを書き留めておきたい。

冒頭の写真は拙著「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」の表紙に使用した。

路上でライブやTシャツの販売、ショーなどが行われたほか、難民と一般の人とが1対1で会話をするための特別なプログラムも実施された。

この路上パーティは、「多様性のためのコミュニケーション」という欧州全体のキャンペーンの枠組みのものだった。

■誰も排除されない社会をめざす

参加者の中には外国にルーツを持つ市民が多数おり、他にも市議や行政マンの姿も見られた。コーランの無料配布をする人もいたし、チョークで路上に落書きをする子供たちもいた。そんな様子を収めた一枚が、表紙になったわけだ。

「お前も来てたのかよ」「おうよ」

エアランゲン市には15%程度の外国人市民がいる(私もその1人である)。さらに、いわゆる「ハーフ」の人や、ドイツ国籍でも両親が外国人など、外国になんらかのルーツを持つ人を含めると、その数はもっと増える。

同市の「外国系市民」は大学関係やホワイトカラーが多いせいか、外国人にまつわる問題はあまり表に出てこない。それにしても、積極的に誰も排除されない社会を作っていこうと様々な社会統合の政策を打ち出している。

ホセ・ルイス・オルテガ・ジェラス市議。少年と話がはずみハイタッチ。

同市議はコロンビア出身

■歩行者ゾーンの価値

一方、この路上ピクニックを別の視点から見ると、市街のどまんなかを「歩行者ゾーン」にしていることが、こういう機会が作れる大きな背景でもある。

ここは平日も賑わっているが、土曜日になると、より賑わう。そんな中で行われているプログラムである。知り合いを見つけると、そのままおしゃべりもできる。私も取材中、多くの知人と挨拶を交わし、時には立ち話をした。

路上ライブがピクニックを盛り上げる

そして、ドイツでもこのような場では、別の知り合いを紹介することも出てくる。こういう知り合い方は、よほどのことがない限り、お互い「敵ではない」という基本的な信頼がベースになっている。これらの連鎖は、町のなかで「信頼の網目」のようなものを作っていくことになる。

歩行者ゾーンは決して人のロジスティックス(流通)空間ではない。歩きつつ、滞在するという開放的雰囲気をうまく活用したプログラムといえるだろう。(了)

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