なぜドイツの子供はのびのびしているのか┃高松平藏・在独ジャーナリスト

一般社会との接点が多いか少ないかが重要なポイント

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なぜドイツの子供はのびのびしているのか

日本の学生が子供っぽいわけ

2013年7月12日

執筆者 高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト、当サイト主宰)

日本から見ると、ドイツの子供はのびのびしているように見えるらしい。また日本の大学生と比べると大人っぽい印象もあるようだ。その理由を考えてみた。

■発言の積極性

古い友人や若い頃からお世話になっている人に毎年、子供の近況などを書いた年賀状を送っているが、『(ドイツ居住のため)のびのびと育っていらっしゃいますね』といった類のコメントをいただくことがある。もっとも年賀状にネガティブなことは普通、あまり書かないものだが、それにしても、『ドイツ』というだけで、子供はのびのびしている印象があるようだ。

この印象はわからないでもない。特に学生をみたときに、ドイツの学生のほうが大人っぽく見える部分は確かにある。その理由ひとつは積極的に堂々と発言をするということだろう。話している内容はとにかく、これで印象はかなり違うと思う。

問題はなぜ発言が積極的なのかという点だが、ドイツの様子からいえば、まず学校の評価だ。積極的に自分の意見を発言するところに価値を置く。

■多い、学校外の世界との接触

もうひとつの理由は子供のときから学校外の世界と接触が多いからではないかと思える。

象徴的なのがスポーツクラブ(スポーツNPO)だ。ドイツの学校には日本のような部活がない。だから家に帰ってくる時間も早いく、スポーツ活動は地域のスポーツクラブで行う。

一緒にスポーツをする仲間たちは、学校がちがっていることも多い。それに、競技によっては年齢にばらつきがけっこうあったり、中高生ぐらいになると、大人と一緒にスポーツをしていることもある。

■平等の人間関係をつくるスポーツクラブ

もちろん、日本にも古くは少年野球などの子供を対象にしたスポーツの場はある。

しかしドイツのスポーツクラブの数はかなり多く、歴史も長い。いわば生活の質をささえるインフラになっている。だから『大人』たちも、さまざま職業、年齢の人が日常的にやってくる。つまり子供たちは学校外の一般の人間と接する機会が日本に比べて多いと思える。

しかも、クラブでは『平等な仲間』という基本思想があり、かなりそれが意識されているので、日本の学校のような先輩後輩のような人間関係がない。

■非タコツボ型の社交環境

ひるがって日本の学校では授業も部活も学校内。学校が唯一の世界になりやすく、タコツボ型の人間関係ができやすい。構造的にいえば、陰湿ないじめが生まれる可能性も高いといえるだろう。コミュニケーションも極端な言い方をすれば仲間内だけで成立すればそれでよい。

それに対して、ドイツを見ていると積極的発言を評価される学校システムがあり、そして、一般の社会との接触が構造的に多い。こういった環境で育つために、日本の若者に比べて大人っぽくて、のびのびしているように見えるのだと思う。

もっとも、なんでもかんでも積極的に発言すればよいというものでもないし、冷静に熟考するという態度も時には必要だ。それにしても、様々な人々との社交が日常的にできる構造は、若者のみならず、社会全体にとっても大切なことだと思う。(了)

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※引用される場合、高松平藏が執筆したことを明らかにして下さい。