ドイツのミュージアム、なぜ家族連れで行くのか
『タイタニック』の展覧会に長蛇の列(シュパイアー市歴史ミュージアム)。
おじいちゃん・おばあちゃんも一緒に家族三世代で並んでいる人も多い。
■三世代でGO!
日本のコンビニほどあるわけではないが、それにしてもドイツにはミュージアムがやたらに多く、統計でいえば6,000以上を数える。運営母体も自治体や財団、非営利組織など様々。ミュージアムとは日本でいうところの博物館と美術館を含めた概念で、種類も郷土、歴史、自然科学、芸術などいくつかの分野がある。
面白いのが休日ともなると家族連れで訪問する人がそれなりにあること。つい最近、我が家もシュパイアーという町の歴史ミュージアムで行われていたタイタニックの展覧会に出かけた。開館前に着いたのですんなり入れたが、帰るころには家族連れの長蛇の列。しかもおじいちゃん・おばあちゃんも一緒という人もけっこういる。(我が家もそうだった)
■時にはジャーナリスティックなセンス
日本の某博物館に勤務していたという人によると『黄金の○○』というタイトルをつけると集客増につながったそうだ。『食いつきがよい』という意味では、タイタニックの展覧会などはこれに近いかもしれないが、ドイツのミュージアムは地味ながらもシャープな面をしばしば見せる。
というのも現代社会の課題や動向を地域のミュージアムがスパっと切り取ったテーマの展覧会を開催することも少なくないからだ。『いじめ』『外国系市民との社会統合』などなど、まるで良質の長めの特集記事か新書のような中身で、時にはジャーナリスティックなセンスさえ感じる。そして実物、模型、映像、テキストなどで3Dマインドマップという感じで展開するわけだ。
さしあたりドイツらしいなあと思うのが、昨年はちょうど第一次世界大戦から100年目の年で、『わが町の第一次世界大戦』という感じの展覧会が各地域で行われたこと。世界的なテーマを地域の視点から展覧会を組み立てるわけだ。しかも町のアーカイブが大活躍。ここから展示物がわんさか出てくる。私が住むエアランゲン市(人口10万人)のミュージアムでも同様の展覧会が行われた。
写真はエアランゲン市のミュージアム。垂れ幕は展覧会、
『ムスリム・イン・ドイツ、ムスリム・イン・エアランゲン』。
■生きた教育機関
現代社会の中で公開される『3Dマインドマップ』はまさに教育目的としてもうってつけ。展示にあわせた子供向けの教育プログラムもよく実施されている。さらに展覧会のテーマによっては、ミュージアムと地元の学校の学生とが一緒になって展示物を作ることもある。
つまり、ミュージアムは辛気臭いどころか、かなり生きた教育機関なのだ!
と言いたいところだが、子供にとっては退屈で、たまに動きのある展示物だけを見たりしている様子を目にする。ま、それにしても家族向けの余暇施設というような意味合いも大きい。
ともあれ、こういうドイツのミュージアムは取材などの仕事でも私は訪ねることもあるのだが、個人的にも実は好きだ。一度展覧会の企画なんぞしてみたいと思っているのだが、そういうオシゴトの依頼こないかなあと密かに願っている。(了)
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現代社会の課題や動向をシャープにとりあげることも少なくない。
※引用される場合、高松平藏が執筆したことを明らかにして下さい。