まちづくりに体育の先生を招待しよう

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まちづくりに体育の先生を招待しよう

スポーツと地域創生

2015年10月12日

執筆者 高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト、当サイト主宰)

スポーツ分野の大学教員の方が私を訪ねてくださった。有益な意見交換ができ、その中で『地域創生』分野でのスポーツの議論が日本でどのぐらいあるのだろうかと思った。地域ごとにあるドイツのスポーツクラブは日本からは想像するのが難しいぐらい地域密着型で、健康や余暇のインフラのひとつになっている。

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■生活の質を高めるインフラ

ドイツ各地域にあるスポーツクラブは9万程度ある。今日の日本の感覚でいえばNPOのような経営体で、市民による社会的組織だ。

メンバーは老若男女。競技を楽しむ人から、健康・余暇のために楽しむ人まで幅広く、スポーツクラブは生活の質を高めるインフラのような役割がある。そして地方の経済、政治、行政とも有機的な関係が見出だせるのだ。

■地域資源としてのスポーツを探せ

日本でも生涯スポーツの場を地域にも作るべきとの議論も出てきて久しい。同時にまちづくりや、地域活性化の議論も長期にわたってあるが、スポーツ関係の人も一緒に取り組んでいる例というのはどのぐらいあるのだろうか?

スポーツは工夫次第で誰でも一緒に楽しめる。それゆえ、肩書や年齢性別を越えた人間関係が生まれ、地域の『信頼の網目』のようなものも強くなる。また、スポーツ活動に付随する労働市場の増加も期待できる。健康な人が増えると医療費の削減などにもつながるだろう。日本は『勝ってなんぼのもん』という狭量なスポーツ観がいまだ強いが、スポーツはもっと幅広い社会的価値があるものなのだ。

■地域社会に編みこんでいくべき

そこでだ、各地域にある既存のスポーツ関係の施設や人材、取り組みを『健康・余暇の地域リソース』として位置づけてみてはどうだろうか。まちづくりのワークショップなどにスポーツ施設の運営者、大学などの知的機関、学校のスポーツ分野に明るい教員、町道場の先生などに加わってもらうのだ。

ドイツのスポーツクラブと地域社会の関係には独自の歴史や社会的文脈、思想が当然ある。たぶん日本に制度のコピーしても、うまく機能しないだろう。むしろ思想を参照しつつ、足元にある既存のスポーツ資源を整理し、社会に組みなおす地道な作業が重要だと思う。(了)

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※引用される場合、高松平藏が執筆したことを明らかにして下さい。