「村・留学」、都会と異なる価値観が魅力(文・橋本和明、籔内裕也、大基さやか)

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「村・留学」、都会と異なる価値観が魅力

日本の地域で考える持続可能社会

2016年12月20日

執筆者 橋本和明、籔内裕也、大基さやか(「村・留学アンバサダー」)

【京都】 「留学」は「海外」だけじゃない。日本の地域に行けば、都会とは異なる価値観に出会うのだ──。教育事業などのPaKT comany 合同会社(京都市)が行う取り組みに「村・留学」がある。「留学」体験者で、現在「村・留学アンバサダー」として広報などを手伝っている私達3人が、村留学について紹介しよう。

■「留学」は「海外」だけじゃない

「留学」という言葉を聞けば、ほとんどの人が海外留学を思い浮かべるのではないだろうか。しかし、果たして留学は海外だけのものだろうか?

留学に行く目的の一つに異なる価値観に触れることが挙げられるが、暮らしや伝統、文化など都会とは異なる価値観ならば日本の地域にも存在する。村・留学は持続可能社会のためこれからの暮らしや社会を考える人達へ向けた8泊9日の地域で行う留学である。

冬になると積雪2mになる京都市久多。室町時代から続く祭りが今もなお残っている。(写真=山本英里名)

2012年に始まった村・留学にはこれまで全国各地から129人が参加した。その中には村の価値観に触れ、感動し涙する者もいた。海外留学でなくとも感動を生むことはできるのだ。

現在は「ほんまもん」に触れ人口80人の持続可能社会を考える、京都-久多-と観光地と観光地を支える人々、持続可能な観光と暮らしを考える、鹿児島-与論-の2か所で開催している。また、2017年3月から新たにこれからの生き方と仕事の作り方を若者が挑戦し新たな暮らしを実践する、高知-本山-地域も加わり、いま村・留学はさらなる広がりをみせている。

■なぜ村・留学には人が集まるのか

それは私たちが都会の生活の中で抱く違和感を考えることができるからだ。近所に住むのに名前も知らず、話したこともない薄い関係性。誰が作ったかわからない肉や野菜で誰かが作ったコンビニのお弁当。今では当たり前になっていること。でもこれでいいのかと疑問を持つようなこと。その違和感に村・留学は向き合うことができる。だから全国各地から人が集まるのだ。

久多での村・留学最終日に行われた宴会での一コマ。村の人と触れ合い多くのことを学んだ。(写真=村木勇介)

例えば、与論では毎日の朝ヨガなど日常に人々がコミュニケーションを取る場が存在する。顔を見せないお年寄りの人がいれば、すぐに様子を見に行く関係性がある。都会ではお金を払って介護サービスを受けることが当たり前だがここでは地域の関係性が強い役割を担っている。

また、久多では狩猟で鹿や猪などの生き物が食べ物に変わる瞬間に立ち会うことができ、自分や知り合いが作った野菜を食べる暮らしが残っている。都会とは違い、どこで誰が作ったかわかるものを頂くので食べ物に対する感謝を深く感じることができる。特にまきを使った火起こしには無駄がない。木は特長によって使い分けられ、できた灰は肥料などに活用される。持続可能な考えが残っているのだ。

そして同じ日本でも地域によって暮らしや文化、価値観は異なる。

普段都会で生活している私たちとって蛇口をひねれば水が出てくることは当たり前だが、与論には山や川がないため、水はすべて地下からのくみ上げを行っている。そのため水は貴重なものであり、蛇口をいくらでもひねって無駄遣いして良いものではない。

一方、久多は山間地域で川があるため水が豊富にあり、生活には沢水を利用している。沢水は冬場、蛇口を閉めてしまうと流れが止まり凍り付いてしまうため、常に流しっぱなしにしている。このように水一つを例にとっても地域によって暮らしや文化からくる価値観は異なるのだ。しかし、どちらにも自然に寄り添う持続可能な考えに触れることができる。ここに日本の様々な地域で留学を行うおもしろさがある。

■村・留学で変わった価値観

村・留学では留学前に持っていた違和感に対するヒントを得ることができる。留学中に主催者の方と地域のゴミ拾いをしたことで留学後も道端に落ちる小さなゴミにも目が行くようになった。狩猟の見学を通して命の有難さについて学んだので、「いただきます」をきちんと言うようになった。地域で活き活き生きる人を見て自分の進路に地域で生きるということが増えた。

与論島の海岸でごみ拾いを行う村・留学生。ごみ拾いを通して持続可能な観光地を考える。(写真=宮武由佳)

小さなことかもしれないが村・留学は持続可能な社会システムが必要とされている中、そのヒントを日本の地域に見出すプログラムであり、大切なことに気付くきっかけとなる。(了)

村・留学プロジェクト関連ページ

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執筆者 「村・留学アンバサダー」

名前(村・留学参加期、生年月日、参加動機)

橋本和明/はしもと・かずあき

(村・留学-久多-3期生、1994年12月7日生まれ、地域で生きることを体感したくて参加した)

籔内裕也/やぶうち・ゆうや

(村・留学-久多-2期生、村・留学-久多-3期、与論2期コーディネーター、1994年6月25日生まれ、就職活動が始まる前に選択肢から勝手に消されてる地域で働くということを考えてみたかったから)

大基さやか/おおもと・さやか

(村・留学-与論-2期生、1994年10月27日生まれ、自分の考え方や価値観を壊したかった。あと自分の想いを話せる仲間ができると思ったから)

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