『インターローカル』の可能性
『動かない人も動く 心・技・体のレディネスデザイン入門』(宮脇靖典、みくに出版)。アマゾンページはこちら
■主体の動機付けではないアプローチ
関西弁でいえば『なんで、でけへんねん』『なんで、動かへんねん』ということが多々ある。
そういうときに体育会系的発想でいえば、『気合が足りへんのや』といってビンタ、という解決法もあろう。しかし『ごめんで済んだら警察いらん』と同様、『ビンタで済んだら、こんな本はいらん』だ。
タイトルにある『レディネスデザイン』とは聞き慣れなないが、レディネスとは英語『ready(準備が整っている)』の名詞形。教育分野で用いられているとか。宮脇さんはこの概念を個人、ビジネス、地域といった多くの分野に応用して事例を分析し、展開している。主体のモチベーションを問うアプローチではなく、課題推進を阻む葛藤や問題を明瞭にし、共有化していくところに『レディネスデザイン』の勘所がある。
いいかえればこうだ。ビンタは身体に刺激を与えることで、気合を入れて個人(主体)のモチベーションを上げる手法だが、そういうアプローチではなく、個人(主体)の『動く準備』を邪魔しているものは何かを探り、そして邪魔をしているものと折り合いをつけたり、排除するということだ。だからこそ、ヒト、組織、プロジェクトと応用範囲が広い。そのように私は読んだ。
■インターローカルとレディネスデザイン
私のウェブサイトは『インターローカルジャーナル』と名づけている。この『インターローカル』という言葉は10数年前に思いついたもので、『近隣地域の関係性』『国境とは関係ない地域間の関係性』と定義づけている。
この概念を宮脇さんは著書で使ってくださった。
これまでの地域政策が<国から都道府県へ、都道府県から市町村へという縦の流れ>だったが、本書では地域同士が連携し、あるいは国境を超えた横連携をしていく例をあげつつ、こうした<『インターローカル』な動きは従来の行政の論理と地域住民の生活者感覚とのギャップを埋めるものとして発生>すると分析。
そして従来の枠組みとは異なる『インターローカルな動き』が増えてくると、地域そのものが『体質の転換』を迫られるだろうとしている。
この分析は私にとって興味深い。グローバリゼーションの時代にあって、国境を超えた地域同士の関係性構築は地域にとって戦略的で、かつ地に足のついたやり方だと思う。
また無数のインターローカルな関係の集合体がグローバリゼーションにおけるある種の健全性を担保してくれるようにも思う。やや大げさだが、宮脇さん風にいえば、『インターローカルな動き』とは『健全なグローバリゼーション』実現のための世界のレディネスデザインということになるか。こう書くと本当に大げさだが・・・。
最後に、宮脇さんに感謝。ありがとうございました・(了)
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※引用される場合、高松平藏が執筆したことを明らかにして下さい。